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小ちゃいおっちゃん物語 其の五

「薄様〜!」

「雷遁の術!」

「小太郎殿!ならん!静殿も一緒じゃ!」

「くっ…おっちゃん 助けに行くぞ!」

「毛虫殿!御免!」

おっちゃんは毛虫の毛を一本抜いて腰に挿した

「小太郎殿 急ぐのじゃ!」

「おっちゃん しっかり掴まっていろな!」

「早く追うのじゃ!」


「忍法 ムササビ!」

フワ〜フワ〜…


「どうする?燕を追って行ったが…」

「昔はよく蝶を追っていったではないか…そのうち帰って来るさ」

「そうだな 屋敷に帰って待ってるか」


フワ〜フワ〜

「小太郎殿…ふざけておるのか…」

「なんで?」

「こんなんで追い付くわけがないじゃろ!」

「なんだよ…自分のせいでさらわれたくせに…」

「わしのせいじゃと!何故そう言える!」

「気付いてないのか?」

「何がじゃ!」

「おっちゃんの頭が目立つんだぞ!」

「お主は何か!わしの頭が目立って羨ましいのか?」

「そんな頭…羨ましくない…おっちゃんの頭が目立って静殿がさらわれたんだぞ!」

「どういう意味じゃ?」

「おっちゃんの頭が光って燕が餌と間違えたんだ!」

「わしの頭は 灯台か!」

灯台…この時代にあるのか…

「なら何故じゃ!何故わしをさらわなかったんじゃ!」

「不味そうだからだろ…」

「そうか…ってわしは美味じゃ!醜いものほど美味いんじゃ!…って 誰が醜いんじゃ!」

「おっちゃん…落ち着け…」

「おぉ…すまん…取り乱してしもうた」


フワ〜フワ〜…

「おっちゃん 見えて来たぞ!」

「静殿 今行くぞ!」


燕の巣は崖の中腹にあった


「静殿〜!」

ヒョコ!

「薄様〜!」

「おぉ 無事じゃ!」

「声は聞こえたけど…どこ?」

小太郎には見えていない

「おっちゃん 見えんのか?」

「あそこの 1 2 3…15番目の突起物のところに居るじゃろ」

「15番目って…ひと塊りにしか見えない…」

「お主は目が悪いのか?」

「おっちゃんが良過ぎるんだろ」

「わしは視力10.0じゃ!スゴイじゃろ!」


「おっちゃん あんな高い所にどうやって行く?」

「鳥とは外部からの敵に襲われないところに巣を作るのじゃ 小太郎殿では足場が悪過ぎじゃからわし1人で

行ってくる!」

「おっちゃん1人で大丈夫か?」

「静殿はわしが守る!」


ピョ〜ン!ピョ〜ン!

軽やかに崖を飛び進むおっちゃん

「おっちゃんスゲー!」


「待っておれ 静殿!」


キラッ!ピカッ!

「しかし おっちゃんはどこに居るかすぐわかるなぁ!」

バサッ バサッ…

「ん?なんじゃ?もう夜になったのか?」

「おっちゃん!逃げろ!」

「どうしてじゃ?小太郎殿…ぬおぉ!」

おっちゃんを襲うカラス

「おっちゃん!カラスは光り物が好きなんだ!頭を隠せ!」

「もう目が合ってしまった…くそ!これでも喰らえ!」

おっちゃんが 毛虫の毛の剣を抜きカラスに立ち向かう

「おっちゃん それじゃ勝てないぞ!」


「そりゃ!」

グニャ…

「うりゃ!」

グニャ…

カラスは執拗におっちゃんの頭を狙っている


「おっちゃん!俺がカラスをやる!おっちゃんは静殿のところへ急げ!」

「小太郎殿 かたじけない!」


「ちょっと遠いけど…喰らえ!雷遁の術!」

(いかづち)がカラス目掛けて飛んで行く

バリバリバリ…

カラスはおっちゃんの頭に夢中

「小太郎殿〜!」

「おっちゃん!少しでもカラスから離れろ!巻き込まれるぞ!」

「よし!トリャーー!」

おっちゃん最後の力を振り絞りジャンプ!

雷が当たる

バリバリバリ!

「アホ〜〜アホ〜〜」

カラスが飛んで行く…


一方おっちゃんは…

「な…何故じゃ…」

「おっちゃん…」


小太郎が放った 雷遁の術 はカラスを目掛けて行ったはずなのだが…

おっちゃんがジャンプをした瞬間 太陽に照らされたおっちゃんの頭に方向を変えたのだった

金属のように光るおっちゃんの頭…


「薄様…」

「静殿…今…行くぞ…」


「おっちゃん!もう少しだぞ!」


おっちゃん 静殿まで数センチ…

「薄様〜!」

「静殿〜!」



「静殿 大丈夫か!」

「薄様 必ず来てくれると信じておりました」


「おっちゃん!危ない!」


燕が巣に戻ってきた


「静殿はわしが守る!」


燕のくちばしがおっちゃん達に容赦なく襲いかかる

「静殿!逃げるのじゃ!」

「薄様は?」

「わしは静殿が逃げ切るまでこやつを引きつけておく」


「どうなってんだ…ここからだと見えないぞ…」


「小太郎殿〜!」

「おっちゃ〜ん!」

「静殿を受け取るのじゃ〜!」

「え?ちょ…見えないぞ!」


おっちゃんは静殿を巣の外に放り投げ小太郎に託した


「あ〜〜れ〜〜!」

「どこだ?」

右往左往する小太郎

「あぁぁぁ〜……」

「どこだ〜〜〜〜〜〜!」

ストンッ!

「あぁ 怖かった」

静殿 無事生還…


「おっちゃ〜ん!静殿は無事だぞ〜!おっちゃんも早く逃げろ〜!」

「良かった…お主 よくも静殿を…許さん!」

毛虫の毛の剣を構えるおっちゃん

「カラスには効かなかったが…ふん!」

おっちゃんが気を毛に送り込むと

ピキン!

毛虫の毛が鋼の硬さに

「来い!トリャー!」

キンッ!

くちばしで応戦する燕

「これならどうじゃ!」

ズシャッ!

燕の鳩胸に剣を突き刺す

「?」

「お主にも効かぬのか?」

たかだか毛虫の毛の長さ…


「小太郎殿〜!わしが合図をしたら 雷遁の術じゃ!」

「ん?なんだかわかんないけど…わかった!おっちゃんいつでもいいぞ!」


おっちゃんは燕の背中にしがみつく

「小太郎殿!今じゃ!」

「おっちゃん!見えないぞ!」

「大丈夫じゃ!わしの頭が 雷 を導くじゃろう!」

「わかった! 雷遁の術!」

バリバリバリ!

雷が燕の巣を目掛けて飛んで行く

「ギャーーー!」


「薄様〜!」

巣から落ちて来るおっちゃんと燕


「ど…どうじゃ…参ったか…」

「おっちゃん…燕ならもう居ないぞ」

おっちゃんは気を失っていた

燕は大した傷を負わず 落ちてすぐ飛び立って行った


「薄様!」

「静殿…無事じゃったか…良かった」

「おっちゃんカッコイイぞ!」

「小太郎殿 わし…やったぞ!」


後日…

「おぉ!見事な桜じゃのぉ!」

「ほんに 見事ですねぇ」

蕾だった桜が咲き乱れていた


「静殿…」

「はい 薄様…」

「わ…わしと…そ そ そ そ…ふぅ〜…」

「おっちゃん…この件り もう15回目だぞ…」

「わかっておる…静殿…」

「はい 薄様…」

「わしと…添い遂げてはくれぬか?」

「はい 喜んで…」

「おっちゃん!やったな!ん?どうしたおっちゃん?」

おっちゃんは極度の緊張のあまり気を失っていた…








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