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小ちゃいおっちゃん物語 其の四

「おっちゃん どこに居るんだ?」

「ほら…あそこじゃ…」

「あそこじゃわかんないぞ!どこ?」

「あそこじゃ…湯呑みの影のとこからチラッと御御足(おみあし)が出てるであろう」

小太郎とおっちゃんは 城下町の茶屋にいる

おっちゃんにせがまれて来たのだ

「足?どこだ?」

「ほら!あっ消えてもうた…あっ 出た!」

目を凝らす小太郎

「あっ!あった!」

「な!御御足が見えるであろう」


以前 小太郎とおっちゃんが この茶屋に寄った時

茶屋の妖精に一目惚れしたおっちゃん


「顔が見えないぞ…」

「小太郎殿 湯呑みをどけてはくれないか?」

小太郎がそぉっと湯呑みをどけると

ハッとした顔で小太郎を見上げる


「綺麗じゃろ…」

小太郎の耳元で囁くおっちゃん

が…声が高い為 娘妖精にも聞こえる

「私が見えるの?」

「見えるぞ!」

「何を勝手に喋っておるんじゃ…わしもまだなのに!」

「おまえ…禿げが好きか?」

超高速ストレートを投げる小太郎

「嫌い!」

それをど真ん中ストライクで受ける

「おっちゃん ダメだ…諦めろ!」

「……」

おっちゃん たった一球で空振り三振


おっちゃん…一言も喋らないでフラれる…


「うぉ〜〜い おい おい …」

「おっちゃん…今日で3日目だぞ…」

「うぉ〜い うぉ〜い」

「うるさくて寝られない…」


翌日

「おっちゃん 行くぞ!」

「ヒック…どこ…ヒック…に…」

「茶屋!」

「…行か…ヒック…ない…ヒック…」

「なんでだ?」

「ヒック…禿げ…ヒック…嫌いって…」

「おっちゃんは これから生え揃うんだろ!なら大丈夫だ!」

「そう…ヒック…かも…ヒック…」


「いらっしゃいませ!あっ 殿様」

「殿様って言うなよ…」

忘れてた…小太郎は城主だった…

って事は…かなり自由な殿様だな…


「どこに居るんだ…」

「今日はあそこじゃ…」

「どこ?」

「神棚の榊の影じゃ…」

「さすがおっちゃん…よく見つけられんな…」

「目で探すのではない…心で感じるんじゃ…」


「なぁ こっちに降りて来て ちょっと話さないか?」

「あっ!この前の!」


「おまえ 名前なんて言うんだ?」

「わしゃ〜トメですぅ」

お茶を運んで来たばあちゃんが答える

「ババァ!お主には聞いておらん!お茶を置いてさっさと去ね(いね)!」

「おっちゃん 耳元でうっさいぞ!」

「すまん…取り乱してしもうた」

「私は 静!静御前から取ったと父上に聞きました」

「静御前とな!わしは 義経の幼少期の名から付けてもろうたのじゃ!」


※静御前とは源義経の奥方の名前


「えっ?じゃあ牛若丸?」

「違うぞ!薄若丸だぞ!」「あ〜ぁ〜あ〜!」

「薄若丸?」

「聞こえてしまった…もうダメじゃ…ヒック…」

「いい名前ですね」

「ヒック…ほら…ヒック…いい名前と…ヒック…いい名前と馬鹿に…いい名前!今 いい名前と申したか!」

「はい いい名前と申しました」

「小太郎殿…わしは夢を見ておるのか?ちょっと潰してみてくれ…」

プチ…

ボンッ!

「夢ではないみたいじゃぞ!」

何をもってそう思う…


「おっちゃん 良かったなぁ!」

「しかし…」

「どうしたおっちゃん?」

「禿げは嫌いじゃと…」

「嫌いですよ」


ポロ…ポロ…ボロボロボロ…

止めどなく涙が出るおっちゃん


「おっちゃん…」

「薄若丸様は禿げておりませぬ」

「えっ?」

「頭頂部以外には生えておりまする それを禿げとは言いません」

「いや…言う!」

「言いません」

「い〜んや 言う!」

「言いません!」

……



「小太郎殿!静殿 綺麗じゃったのぉ!」

「おっちゃん…頭 見せて…」

「ほれ!ほれほれ!」

「禿げだよなぁ…」

「ふふ〜ん♪ 何とでも言うがいい」

「禿〜げ!」

「♪春が来た 春が来た どこに来た〜 わしに来た わしに来た 禿げに来た♪」

「ダメだこりゃ…今 秋なのに…」


「小太郎殿!早く準備を致せ!」

「ん〜〜…おっちゃん…まだ暗いぞ…」

「太陽が寝坊しておるだけじゃ!」


「静殿!」

「薄様!」

それからおっちゃんは 日を開けずに毎日通うようになった


そして3月 桜蕾が膨らむ


「おっちゃん まだ咲いてないぞ…」

「そうか?わしの頭には咲いておるぞ!のぉ静殿」

「はい!私には見えますよ 薄様の頭に桜が」

「桜のような形の禿げだろ…」


「殿…誰と話してるか見えるか?」

「いや…見えん…」

今日は小太郎とおっちゃん達 2妖精 と小太郎のお付きの者数名で花見に出掛けて来たのだ

もちろん おっちゃんにせがまれて…


「静殿!もうすっかり春じゃのぉ!見よ 毛虫が春を告げておる!」

「ほんにそうですねぇ」


桜はまだ蕾…


「全く…2人の世界に入ってるし…おっちゃん!遠くに行くなよ!まぁ おっちゃんの頭でどこに居るかわかるからいいけど…ん?」

空から光めがけて一筋の影が

「おっちゃん危ない!」

「ん?どうした小太郎殿?うわ!」

「きゃー!」

「静殿!」

燕が静殿をさらっていった









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