小太郎 小ちゃな小ちゃな大冒険 4
タタタタ…サラサラサラ…
「ぬおぉぉぉぉ…」
なんとか這い上がろうと小ちゃいおっちゃんが走る
「はぁはぁ…足が…」
「小梅 どうだ?わかるか?」
「くんくん…くんくん…」
地面の匂いを嗅ぐ小梅
「小梅ちゃんお願い!」
「くんくん…」
小梅が何かを感じたようにピン!となる
「オン!」
小次郎を背中に乗せたまま駆け出す小梅
「見つけたか!」
小梅を追って小太郎と晶ちゃんも走る
「も…もう…ダメじゃ…」
サラサラサラ…
「いかん!諦めたらダメじゃ!ぬおぉぉぉ…必ず小太郎殿が来てくれるはずじゃ!」
小ちゃいおっちゃんはかれこれ これを30分くらい繰り返していた
「アリはどうしたのかのぉ…って今はそれどころではなかった…」
「ちゃん…」
小梅に伝わる小次郎の不安な気持ち
「オン!」
心配するな!と言うように小梅が小次郎に優しく吠えた
「小梅!小次郎を落とすなよ!」
小太郎と晶ちゃんがどんどん離される
小次郎は小梅に振り落とされないように 小梅の耳をギュッと掴んでいる
「ちゃ〜ん!」
「はぁ…はぁ…静殿…小丸…もう…わしはダメかも…しれぬ…」
サラサラサラ…
「ワォ〜〜ン!」
「ちゃ〜ん!」
「ん…幻聴か…小次郎殿の声が…聞こえ…」
ズズズズ……
アリ地獄に引きずり込まれる小ちゃいおっちゃん
「オン!オン!」
「おぉ…小梅ど………」
サラサラサラ…
小ちゃいおっちゃんが砂の中に消えた…
「ちゃん!」
小次郎が砂に手を突っ込んだ
「おっちゃん…おっちゃん!」
「ん……小太郎殿……」
「おぉ!良かった…おっちゃん大丈夫か?」
「わしは…生きておるのか?小次郎殿どうしたのじゃ?」
小次郎が珍しく泣いていた
「俺と晶ちゃんが来た時には 小次郎がおっちゃんを持ってたんだぞ」
「…そうじゃ わしはアリ地獄に飲まれたはず」
「アリ地獄?」
小ちゃいおっちゃんは一部始終を小太郎に説明した
「そうか…大変だったな…」
「わしはもうダメじゃと思ったが…そうか…小次郎殿が…小次郎殿 かたじけない」
小ちゃいおっちゃんが小次郎に頭を下げる
「ちゃん!」
笑顔になる小次郎
「うむ 小次郎殿はやはりその笑顔が一番じゃ!」
「おっちゃん 危なかったなぁ…砂に飲まれてたら見つけられなかったぞ…」
「砂に飲まれるより 食われる方が怖かった…」
「何に?」
「何にって…アリ地獄の主じゃろ!」
「何も居ないぞ」
「小太郎殿は何もわかっておらんなぁ!アリ地獄とはな アリが落ちたら下で主が待ち構えておってアリを食ってしまうんだぞ!」
「知ってるぞ!でも おっちゃんが言ってる主は居ないぞ!」
「何故じゃ?」
「成虫になって飛んで行ったから」
「ん?」
「アリ地獄ってのは ウスバカゲロウの幼虫の巣なんだぞ!夏に成虫になって飛んで行くから この巣にはもう何も居ないぞ」
「…そうなのか?」
小ちゃいおっちゃんは見えない…居ない敵から逃げようとしていたのだ
「小次郎殿 やはりお主は賢いのぉ 小太郎殿に伝えてくれると信じておったぞ!」
「最初はなんのことかわからなかったんだけどな…」
「でも 小次郎ちゃん一生懸命伝えようと頑張ってたんだよ」
「そうか そうか 小次郎殿すまぬかったのぉ」
「小梅ちゃんも頑張ったんだよ」
「そうだったのぉ 小梅殿 この通りじゃありがとう」
小ちゃいおっちゃんが薄い頭を下げる
「オン!」
眩しいから頭を上げろと言うように吠える小梅
「あっ おっちゃんこれ返すぞ!」
「これはわしの…これを何に使ったのじゃ?」
「これを小梅に嗅がせておっちゃんを探したんだぞ!」
「それ何?」
「これか?これはな わしのフンドシじゃ!」
赤い生地のなんだかわからなかったもの…
それは 小ちゃいおっちゃんの真っ赤なフンドシだった
「いいじゃろ!ん…晶殿 何をしておるのじゃ?」
晶ちゃんはハンカチで小梅の鼻を拭いていた…
「おっちゃん…また外出るの怖くなったか?」
「大丈夫じゃ 小次郎殿と小梅殿が一緒なら安心じゃよ」
「そうか!良かったぁ」
こうして 小ちゃいおっちゃんの小ちゃな小ちゃな大冒険は終わった
「小太郎殿 動き過ぎて…」
グゥ……
「おっちゃん腹減ったか!帰ってオヤツにするか!」
「今日はなんじゃろうなぁ!」
小梅にまたがる小次郎の肩にちょこんと座る小ちゃいおっちゃん
笑顔で家路についた