小ちゃいおっちゃん物語 其の十七
「どうですか?」
「ん〜…はっきりはまだかな…でも おっちゃんの位置ならわかるぞ!」
「おぉ!わしの事はわかるか!」
「わかる!光ってるから!」
「……」
「おっちゃん!」
「なんじゃ?」
「俺 目が見えるようになったらいっぱい勉強するんだ!」
「太郎殿は偉いのぉ」
「晶ちゃんも偉いぞ!」
「そうじゃな」
「俺は勉強して立派になって総理大臣になるんだ!」
「ほう それはまたデカイ夢じゃな!」
「そして…戦争のない平和な世の中にするんだ!」
「そうか!太郎殿ならきっとなれるじゃろう!」
「デ〜〜〜ッカイ家建てて おっちゃん達と一緒に暮らすんだ!」
「それは楽しみじゃ!」
小さい太郎の夢
しかし おっちゃんは 太郎ならなれると信じた
「晶ちゃんは何になりたいのかなぁ?」
「静おばさん 私はねぇ お医者さん!」
「あら〜 晶ちゃんはお医者さんかぁ」
「うん お医者さんになって紅お姉ちゃんみたいになるの」
「そうですかぁ 2人共とっても立派ですよ」
妖精達は 太郎と晶ちゃんに一筋の光を見たのだった
「お〜〜い!」
「おぉ〜〜!」
今日も太郎と晶ちゃんが来たのだが…
いつもは晶ちゃんに手を繋がれてくる太郎が 1人で駆けて来たのだ
「どう?スゴイでしょ!」
「太郎殿!スゴイ!スゴイぞ!」
「もう周りの景色はだいたい見えるようになったんだぞ!もうちょっとでおっちゃんの頭以外もみんなの事見えるようになるんだ」
「太郎殿…何故わしの頭以外なんじゃ…」
「晶ちゃんに聞いたぞ!光ってるのはおっちゃんの頭だって!」
「晶殿…」
「ごめんなさ〜い」
「晶ちゃん 謝る事はないですよ!真実なんですから!」
「静殿…」
「ワッハハハハ」
「お主らまで…」
今は戦争の真っ只中
しかし ここにはいつでも笑いが溢れていた
「はい 今日はここまで」
「ありがとう!紅姉ちゃん」
「後 3日もあれば完治すると思いますよ」
「本当か!やったー!」
「良く頑張りましたね 辛くなかったですか?」
「ちっとも!みんなの事を早く見たいなぁ」
昭和20年8月1日
終戦まで後 2週間
「若!」
「おぉ!時来也!お主もか…」
「1週間前の空襲で…」
「そうか…それは大変であったのぉ…」
「後 3週間だったのですが…」
「おぉ お主は 時 が見えるのであったな!って事は後 2週間で この愚かな戦さは終わると申すのか?」
「ハッ!多大な犠牲を出してこの国は負けます」
「なんと…負けてしまうのか…それも多大な犠牲を出すと申すか…」
「…間違いありません」
「おっちゃ〜ん!」
「来おったな!太郎殿〜!晶殿〜!」
「若 この者共は?」
「おぉ 時来也は初めてじゃな!わしらの希望の光じゃよ!」
「そうですか…これは驚いた 我々を見える者がこの時代に居るとは…」
「太郎ちゃん それでは始めますよ」
「紅姉ちゃん よろしく!」
「何をしてるんですか?」
「太郎殿の 目 を治しておるんじゃよ」
「目を…ですか?」
「うむ…太郎殿はこの戦さで光を失ってのぉ こうして毎日 紅が治癒してやってるんじゃよ」
「……そうですか」
「もういいですよ 目を開けて」
「紅姉ちゃんありがとう!あっ 晶ちゃん!あれ」
「そうだった!はい これみんなで食べて!」
「お主ら またそのような事を…」
晶ちゃんがニコニコして出したのは握り飯
「ほら みんな食え!」
「太郎殿…晶殿…かたじけない…」
「遠慮しないで!毎日 太郎ちゃんの目を治してくれてる治療代!」
「美味いか?」
「美味い!美味いぞ!」
「良かった!」
妖精達は明るく振る舞う太郎と晶ちゃんに涙を見せまいと嬉し涙を堪えて食べた
「どうじゃ時来也 いい子達じゃろ」
「そうですね…若…」
「どうした?」
「いえ…」
「守る家を失くしたあの者達の顔を見てみい 太郎殿と晶殿が来ると皆笑顔になるのじゃ」
そして太郎の 目 の治療最終日
「ドキドキするなぁ」
「今日で最後ですよ これが終わって目を開けると私達が見えると思いますよ」
「楽しみだなぁ〜!」
「それでは始めますよ」
ブォ〜〜〜〜…
「皆の者…よいか!太郎殿が目を開ける時整列するのじゃぞ!」
「了解です!」
「シ〜〜!太郎殿に聞こえるじゃろ!」
「おっちゃんが一番前に居るのか?」
「ほら〜 聞こえてしもうた…」
「おっちゃんの声しか聞こえなかったぞ!」
「そ…そうか…」
太郎の治療を頬杖ついてニコニコして見てる晶ちゃんの肩や頭に妖精達が乗っかる
「紅やまだか?」
「お待ちください もう少しです」
みんなが笑顔で太郎の治療が終わるのを待っていた