小ちゃいおっちゃん物語 其の九
「小太郎殿 大丈夫か?」
「大丈夫だ!小次郎は静殿に頼んで来た!」
「いや…そうではなく…」
「俺の事なら心配ないぞ!」
「なら良いのじゃが…小太郎殿 頼むから無理はせんでくれ…」
小太郎は江戸城下に急いだ
「小太郎殿 飛ばすでない!」
「早く行かないと 邪精が暴れ放題だろ!」
「しかし…」
「俺なら大丈夫だ!」
小太郎は江戸城下までの距離20里を2時間で駆け抜けた
「おぉ!さすが江戸!賑やかだなぁ!」
「小太郎殿…体は大丈夫か?」
「これくらいどうって事ないぞ!」
「なら良いが…」
「さてどうする?おっちゃん」
「わしが仲間に聞き込みをして来る…小太郎殿は 最初に旅籠屋で疲れを癒しておれ」
「おっちゃん1人で大丈夫か?」
「キェーーーーーー!」
「うっさいぞ!」
「わしには この声がある!どこに居てもわかるじゃろ!」
「そうだけど…」
「ん!この声は 薄若丸様の 奇声!」
「薄若丸様が来てくれた!」
おっちゃんは 何を隠そう 妖精界の若君なのだった
「皆の者!よう集まってくれた!」
「薄若丸様〜〜!」
ワァーーーーーー!
「静まれ!急を要するのじゃ!」
「ほぅ…ならば 5代将軍 綱吉公が操られておるということか?」
「はっ!間違いございません」
「それは難儀じゃのぉ…わしらは 気づかれずに近寄れるが…小太郎殿は無理じゃな…」
「若!あっしにお任せあれ!」
「お主は サスケ!何か考えがあるのか?」
「あっしと才蔵が邪精 オロチ を屋敷の外に出して進ぜよう!」
「なんと!邪精とはオロチなのか!」
「はっ!」
「オロチとは…あの噂は本当じゃったか……」
「おっ!おっちゃんどうだった?」
「小太郎殿…明日から江戸観光じゃ!」
「ん?邪精を退治するんだろ?」
「あ…あれはガセのようじゃ!」
「嘘って事か?」
「そのようじゃ!いや〜…わしもおかしいと思うたのじゃ ワッハッハ!」
おっちゃんは嘘を言った
「……」
「小太郎殿 そろそろ寝んと明日 ゆっくり江戸観光が出来ぬぞ」
「そうだな…んじゃ おっちゃんおやすみ!」
「小太郎殿…」
「どうしたおっちゃん?」
「…明日 楽しみじゃのぉ!」
「おぅ!おっちゃん!」
「おじさん どうしてひぃじっちゃんに言わなかったの?」
「言わなかったのではなく 言えんかったのじゃ…言えば小太郎殿まで亡くしてしまう…」
「オロチってそんなにスゴイやつなの?」
「オロチを退治するのには 誰かの命と引き換えなんじゃ…」
「どうして?」
「オロチを倒すには 50年分の 生 の力が必要じゃ…小太郎殿は90間近…そんな余力があるはずがない…わしら妖精の50年は人間の半年ほどじゃから…わしは妖精仲間で倒そうと考えたんじゃよ」
「若様!」
「遅くなってすまん!サスケと才蔵は?」
「既に屋敷に潜入してこちらの合図を待っております!ところで小太郎殿は?」
「小太郎殿は来ぬ!わしらだけでオロチを退治致すぞ!」
「えっ!我々だけでは無理です!小太郎殿の力がなければ…」
「ならぬ!小太郎殿を危険な目に合わせる事など出来ぬ!」
「しかし!相手は あのオロチ…」
「じゃからじゃ!他の邪精ならまだしも 相手がオロチとなれば話は別じゃ!すまぬ…わしのわがままじゃ…命が惜しい者は去ってよい…責めはせぬ…」
「若…」
「えっ?おじさん達妖精は寿命が長いんじゃないの?」
「それは人間に比べた場合なんじゃよ 邪精の一撃を喰ろうたら 妖精年齢1年 人間年齢で100年が減るのじゃよ」
「なんか難しい…」
「それだけオロチはやばい邪精なんじゃよ」
「若!我々でやりましょう!」
「よいのか?」
「私の家主の子供は 私に良くしてくれます!その子の為にもオロチは退治せねばなりません」
「自分が世話になっているとこの子達もよくしてくれます」
「そうか!皆良き所にあるのじゃな!その子らの為にも あやつを退治せんとな!」
「はい!」
「では皆の者!合図を出すぞ!」
「おぉ!」
スゥ〜〜〜〜〜〜!
おっちゃんは思いきり息を吸い込み
「キェーーーーーーーーーーーー!」
「才蔵!合図だ!」
「おぅ!サスケ!参るぞ!」
「オロチ覚悟!」
「フフフフ わしが気付いておらんと思ったか!」
「気付かれてる事は百も承知よ!我々の力をみくびるな!」
「お主らだけで わしを倒せると思うておるのか!」
「よし!出て来おったぞ!皆の者 かかれ!」
「おぉ!」
「それでどうなったの?」
「オロチはやはり強かった…わしら妖精が束になってかかってもビクともせんかったのじゃ」
「でも おじちゃんが今ここに居るって事はやっつけたんだよね?」
「わしらも必死じゃった…わしらはのぉ 小次郎殿 1人1人 特殊な能力を持っておるのじゃよ」
「特殊な能力?」
「そうじゃ 治癒に長けておる者もいれば 小太郎殿のように忍術が出来る者」
「おじちゃんは?」
「わしは 声じゃ!」
「声?……」
「スゴイじゃろ!」
「そ…そうだね…」
「こやつ…強過ぎる…」
妖精軍団は 手も足も出なかった
「お主ら すまん…わしが甘かった…ここはわしが食い止める 皆の者退くのじゃ!」
「若!なりませぬ!ここは あっしらが引き受ける故!若!お逃げくだされ!」
「今更 逃げる相談か!わしが逃すとでも思っておるのか?貴様が 大将だな…先ずは貴様から食らってやる!シャーーーーー!」
おっちゃんに襲い掛かるオロチ
「若〜〜!」
「雷遁の術!」