小太郎と小ちゃいおっちゃん
「昨日 テレビ観た?」
「観た!」
「本当に居ると思う?」
「あれは絶対居るって!」
「もし居たら怖いね…」
学校では昨夜のテレビ番組
『未確認生物の実態!』の話でもちきりとなっていた
宇宙人や雪男 ツチノコ チュパカブラ…
「先生!今日 太郎ちゃん風邪でお休みです!」
「あら珍しい!」
「小太郎熱計りなさい」
「38.9度か…下がらないわねぇ」
「母ちゃん…俺 死ぬのか…?」
「何馬鹿な事言ってんの!こんな熱で死ぬわけないでしょ」
「母ちゃん ちょっとお出かけして来るからちゃんと寝てるんですよ」
「わかった…」
「お昼は テーブルに用意しておいたから 食べたらちゃんとお薬飲んでね」
「わかったよ」
「暇だなぁ…あぁ!今日の給食カレーだったんだ…食いたかったなぁ…」
給食のカレー美味いもんな小太郎
「母ちゃん 何用意して行ったんだ?」
テーブルに行く小太郎
「……お粥さんか………」
布団に潜り込む
カタ…カタカタ……
「なんだ?」
隣の部屋から物音が…
恐る恐る覗き込む
「あれ?誰も居ない…おかしいなぁ…」
小太郎は不思議に思ったが また布団に入る
カタ…カタカタ…
また音が聞こえてくる…
「なんだ?」
ガタン!
「なんだ!」
飛び起きる小太郎
「誰か居るのか?」
ガラッ!
「なんだよ…誰もいない…よ〜し 突き止めてやる!」
小太郎は物音のする部屋の押入れに隠れる
カタ…カタカタ…
「来たぞ…」
小太郎は襖を少し開けて覗く
「居ないなぁ…」
カタカタはしているが誰の姿もそこにはなかった
「おかしいなぁ…」
しばらくすると
「あぁっちぃ!」
茶の間の方から…確実に人の声が…
小太郎は茶の間に向かう
スゥ…
茶の間を覗く小太郎…
「フゥ〜!フゥ〜!モグモグ…ペチャペチャ…」
「なんだ?」
茶碗のふちにチョコンと座りお粥さんのご飯粒を両手で持って食べてる…頭が薄い?小ちゃいおっちゃん?
小太郎が茶の間に入るが 食事に没頭している小ちゃいおっちゃんは気付かない…
「おまえ誰だ?」
小ちゃいおっちゃんは1度小太郎を見てから 周りをキョロキョロして またご飯粒を食べる
「おい!」
また小太郎を見る
俺?そう言うかのように自分を指差す小ちゃいおっちゃん
「後 誰居んだよ」
「ほぅ〜!こりゃ驚いた!わしが見えるものがまだおったのか!」
「声 高っ!」
小ちゃいおっちゃんの声はかなり高かった…
「おまえ…おっちゃんなのか?」
「ヌォッホホ…わしは妖精じゃ!」
「おっちゃんだろ…」
「…妖精じゃ!」
「おっちゃん…」
「妖精と言っておろうに!」
「ところでおっちゃん…」
「なんじゃ?」
「ほら 認めた!」
「……妖精じゃ!」
「おっちゃんはどこから来たんだ?」
「それはのぉ…教えられん!」
「ケチくせぇなぁ…」
「ケチとはなんじゃ!」
「んじゃ おっちゃんはいつもは何してんだ?」
「おっちゃんか?おっちゃんはな…おっちゃんじゃないと言っておろぅが!」
「いいだろう!もう おっちゃんで!」
「……おっちゃんは いつもいろんな事をしておるぞ!」
「いろんな事って?」
「例えば お主 握り飯は好きか?」
「おぉ!母ちゃんの特製特大おにぎり大好きだぞ!」
「学校に持って行く時は何に包む?」
「ハンカチとか…」
「違う!その中じゃ!」
「銀紙(アルミ箔)!」
「たまに破けてる時があるじゃろ」
「あぁ!ランドセルの中に入れて学校に行くと 弁当の時間に銀紙が破けて おにぎりがちょっと見えてる時ある!」
「あれ わし!」
「おっちゃんの仕業だったのか!」
「そうじゃ!わしが腹減ってご飯粒もらうのに破っておるんじゃ!」
「やめろよな あれ恥ずかしいんだぞ!」
「昔は みんな握り飯だったのじゃが 今は変な箱にご飯を詰めておるから食えないんじゃ!そんな時は 腹いせにその箱をおもいっきり蹴ってやるんじゃ!」
「あ!俺もたまに弁当箱で持って行くけど…開けると片寄ってる時あるぞ!」
「それ わし!」
「おっちゃん イタズラすんなよなぁ!」
「イタズラじゃないぞ!わしは腹が減ってんのに食わせてくれないのが悪いんじゃろ!」
「わがままだなぁ…後は何やってんだ?」
「そうじゃのぉ…後は みんなが寝静まった頃走り周ったり…静かになると寂しいじゃろ?だから 音をたてるんじゃ!」
「たまに夜 変な音する時あるなぁ…」
「それも わし!」
「イタズラばっかりだなぁ!」
「イタズラではないと言っておろぅ!音をたてるとみんな怖がるから面白いんじゃ!」
「それをイタズラって言うんだぞ…」
「……」
「それで見つかったりしないのか?」
「わしは普通の人間には見えないんじゃ!」
「俺 見えてるぞ!」
「お主は 心が澄んでおるんじゃ!昔の子供にはわしが見えておったみたいじゃが…最近はわしの事を見える子供が居なくなってきたようじゃ…」
「そうなのか?」
「昔はよく 握り飯のご飯粒を貰って食ったもんじゃ」
「だから今は盗んで食ってんのか?」
「……盗んでるって…お主本当にわしが見えてるのか?」
「見えてるぞ!河童みたいな頭してるだろ!」
「おぉ!本当に見えておる…って!誰が河童じゃ!言いたい事を言いおって…」
「おっちゃん 家族は居ないのか?」
「わしの仲間はたくさんいるぞ!」
「へぇ〜!そうなのか…」
「日本だけじゃなく世界各国に仲間がおる」
「俺ん家にはおっちゃんだけなのか?」
「この家にはわしだけじゃ!基本一つの家に1人なんじゃ」
「んじゃ おじちゃんや晶ちゃん 先生ん家にも居るのか?」
「居るぞ!」
「そうなんだ…」
「日本は平和だからまだよい…戦争をしてる国や貧困な国では わしの仲間は食う事すら出来ていないんじゃ…」
「日本に来ればいいんじゃ…」
「それが出来んのじゃ…そこに 家がある限りはその家から違う所に移る事は出来んのじゃ…それが わしらの 運命なんじゃよ…」
小太郎は話を聞きながら 寝ていた
「なんだ…寝ておるのか…全く失礼なやつじゃ…しかし 何十年ぶりかのぉ 人間と話したのは…」
「小太郎…小太郎…」
「あっ!母ちゃん…おかえり」
「小太郎 熱は下がった?」
「36.5度…平熱に下がったね」
「あっ!俺 なんで布団で寝てんだ?…おっちゃん!そうだ!おっちゃんはどこだ?」
「夢でも見てたんでしょ!」
「そうなのかなぁ…」
「母ちゃん!いただきます!」
小太郎はご飯粒を一つ テーブルの上に置いた
「かたじけない!後でいただくぞ!小太郎殿よ」