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八章 眠れぬ夜は、人肌を

 ギルド、『星空の滴』の所有する一軒家に呼ばれていた。

 なんでも、各地域に隠れ家があるらしく、渡り鳥のようなギルドらしい。


「ホトリ……この間はごめんなさいね」

「あ? 何が?」

「ボアを殺させたじゃない?」

「いや、いずれやらなきゃいけないことだからな」

「そう」


 レアーナはそう微笑み、紅茶を俺の前に差し出した。

 カップを受け取り、温かいそれを飲む。


「美味いな。紅茶なんて、ペットボトルのしか飲んでなかったから」

「ぺっと、ぼとる? 何それ」

「透明な……飲み物を入れる時に便利なボトルがあったんだよ。透明で、ガラスとは違う感じの……」

「ふーん。そういえば、アナタの出身は?」

「日本」

「……だから、どこよそこ」

「あー、俺召喚で呼び出されたんだよ」

「異世界から人間を召喚したというの!?」


 驚きと、怒りにみるみるうちに表情が変わるレアーナ。


「な、何で怒ってるんだよ」

「人を召喚するのは禁術中の禁術なの! どこの魔術師よ、風上にも置けないわ」

「まぁいいじゃんか。そのせいで、俺はレアーナに会えたし、こうして暮らせているんだしさ」

「……恨んでないの?」

「イラッとしたけど、したところで帰れないじゃん。どうしようもない」

「なるほどね」


 レアーナは納得したようで、今度はクッキーを差し出してきた。

 さくさくとしていながら、口に入れるとしっとりして、バターが香る。美味いな、このクッキー。


「なるほど、本当に異世界人なのね」

「まぁな。生憎と特別な能力なんて授かっちゃいないけど」

「ねえ、アナタの国はアナタと同じような能力の人間がたくさんいるの?」

「いや、俺は特別なだけ。普通は、学校行って、会社に勤めて……」

「学校? 会社?」

「んじゃ、俺の国の話、するか」


 レアーナは興味津々のようだし。

 俺は、日本という国と、地球という星について語った。






 とっぷりと日が暮れて、俺は帰路を急いだ。

 寝室に戻ると、なぜかルナがそこで寝ていた。何でルナがいるんだろう。

 優しく揺する。


「ルナ、ルナ。起きろよ」

「んん……」


 寝ぼけ眼をこすって、俺の姿を認めると、ルナは飛び込んできた。


「おわっ、どうしたんだよ?」

「……怖い夢を、見まして。全員が消えて、お城を独りぼっちで、歩く夢を……」

「……そっか」


 ぽんぽんと頭を撫でる。

 まだこの子は、子供なんだな。

 やけに大きく見えたり、子供ながら大人っぽく見えたりもするけど。

 夢を怖がってここに来るなんて。結構子供だ。


「ほら、寝ようぜ。自分の部屋に帰りな、付き添ってやるから」

「……ここで寝ては、いけませんかぁ?」


 ……心細そうな彼女を放っておくのも、気が引けるし。

 それに、そんな泣きそうな顔をされては、何も言えない。


「いや……ま、そだな。一緒に寝るか」

「はいぃ、そうしましょう」


 嬉しそうにするルナを可愛らしく思いながら、俺はベッドに寝転がった。

 ルナも潜り込んでくる。小さな体とぬくもりと、良い匂い。

 毛布を掛けると、すぐにルナは眠ってしまった。


「……おやすみ」


 そう声を掛けてから、俺も目をつむった。






 ……な、なんだ?

 うるさいくらいノックの音がして、俺は目覚めた。

 時刻は早いが、朝だろう。

 目をこすりながらドアを開けると、そこには汗だくのアリスの姿が。


「た、大変なのです、ホトリ殿! 大変なんです!」

「んだよ……」

「ひ、姫様が、何者かに誘拐されて……!」


 誘拐!? え、何で!?


「侍女がいつもは起きている時間なのに返事も何もないと思い、入ってみたらだれもいないとのことで、大騒動で……!」

「あー、そのー……」

「……ホトリさぁん?」


 あ、やべ。

 眠そうにしているルナを視界に入れたらしく、


「うおおおおおっ!? あぶねえ!」


 繰り出された剣の一撃を回避して、日本刀を手に取って応戦。


「よ、よよ、嫁入り前の姫様とい、い、い、一夜を共にするなど……! 破廉恥です! 成敗します!」

「待て、落ち着け! そういう意図は一切なく……って聞けよおい!?」


 始まる剣戟を、どこか微笑ましそうにルナが眺める。

 いや、止めてくれよ。

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