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2話 田中イライザの寝取り攻撃は一度たりとも成功例がない

田中。次辺りで転送されます。

【最高に魅力的な体を持つ女性】を思い浮かべるとどんな女性が浮かぶのか。

 勿論好みは人それぞれ、それは理解している。

 しかし大多数が思い描くとなるとある程度決まった物になるだろう。

 触れればしっとりと吸い付く様な、それでいてすべらかな肌。

 柔らかな頬のラインに、色気のある目元、程良く肉感的な唇。女性らしい顔立ちに浮かぶ蠱惑的な微笑。

 何処からともなく漂う甘い香り。

 人一倍実った胸は衣服を押し上げ、溢れださんばかりのむっちりとした豊過ぎる膨らみの間に深い谷間を刻む。

 確りと括れた腰の下から見事に丸い曲線を描く臀部。

 程ほどに肉の付いた脚、締まった足首。


 それがこいつ、田中イライザだ。



「今日は気分が良いから部屋で毒草の手入れをしてくるわ」


 と本日の完璧な美貌的自分基準検査をクリアしたらしいキャスリーンがリビングから退室したのと入れ替わり、

 濡れた髪を片手に持ち上げ首筋をハンカチで拭いながら近付いてくる美少女イライザ。

 毛先に向かって銀から薄紫に変化し色付く髪に付着する虹色の水滴が輝く。


 こいつまた海の中にいたのか……。


 年の頃は16~7歳、と俺と変わらない筈が大人の美女でも敵わないようなとんでもない色気を醸しながら妖艶に微笑、小首を傾げて誘惑する。


「やった。2人っきりじゃん。…じゃあ……、あたしとさ、楽しい事して……遊ばない?」

「なんて、ウソ。狙ってたんだもん。キャスリーンが出てくの。……待ってたんだよ2人になれるの」


「止めろ、イライザ……俺の心は今も妻クリスティーナのもにょだ」


 今この世界の俺には”本当に”クリスティーナへの想いがある。

 本心からそう言えるので結構渋く決まった、噛みはしたが。

 出来れば突っ込んでくれると「何、照れくさくてな……」等と追加で発言出来、よりクールな騎士感が出そうなものなのだが……、


「はぁっ!? ま、またぁ……っ!? いつもいつも…っ、彼女ばっかり!」


 さっきまでの妖艶な小悪魔感はどこに行ったのか、一瞬にして余裕を失ったイライザは悔しさを露骨に表情で示す。

 残念ながら突っ込んでくれる暇はないらしい。

 心底狼狽した様子でなおも続ける。


「面白くない! 奪いたいのに……っ! 私の事も見てくれたっていいじゃん!」


 初見では俺も、イライザをただの男好き(ビッチ)なのかと勘違いしていた。

 だがそうではない。


 こいつ、キャスリーン程ではないが自分自身の女性的魅力を十分に理解した上で、純粋に愛し合う恋人同士の仲を裂きたいのだ。

 

 そして、誘惑に少しでも靡く気配を見せた時点でこいつの興味は削がれる。

 

 固く結ばれた恋人がいる男程イライザは執着をする。

 

 現実から転送されて来た際の某骨の心遣いにより、俺のクリスティーナへの想いは世界一状態になっている為、イライザは初めて本気になっているそうだ。

 


 つまり本人はビッチになりたいのにビッチになれない、超片想い癖妖艶美少女なのである。



 。。。。。。。。。。



 机の中に入っていた手紙の開封作業に入る。


 シールだと思いきや、これは本物だ……。

 初めての封蝋に弛む唇を前歯で嚙み殺す。


「何だよその顔、ウケる」

「詠唱準備? 詠唱準備?」


 残党か……ッ。

 意気消沈している西条(にしじょう)を元気付けようとしているらしいサッカー部部長男が、俺を指さし嘲って来る。

 類は共を呼ぶ、それにしても人を馬鹿にして友を元気付けよう等とは愚かな。


「黙っていろ……死にたくなければな……」


 俺の背後に迫力が具現化(ブラッディオーラ)しているていで両腕を拡げ暗黒微笑で応える。

 しかし手紙を奪われては敵わない、馴染みのファンからの手紙でも封蝋は取っておきたい。

 念の為宿(トイレ)に移動してから読み進める事にしよう。




  不思議な事に手紙は開封した瞬間スクロール型に変化し、くるくると地面に向かって伸びて行く。

 羊皮紙に綴られるインク文字は丁寧な日本語が少しの列の乱れも無く並んでいた。


『ごきげんよう。』


 うむ、ご機嫌よう。


『私は髑髏(ドクロ)です』


 ………。

 やはり何時もと同じ、ファンからの手紙だったようだな……。

 だが万が一の為、そうだ……この(ダークパワー)を必要とする者からの手紙という可能性がゼロでは無いのなら。


『ええ、髑髏です。この白い骨に肉が付いていた頃の記憶はもう遥か…

 今はお城で燭台代わりとして使われております』


 骸骨ではなく髑髏か。……どうやって筆を取った。

 それは兎も角、喋る髑髏設定、成るほど。こいつ、何時ものファン達とは一味違う……ッ!

 俺も気を引き締めてかからねば、引き摺られる……ッッ!!!


『ところで私にはご主人様がいるのです』

『このお城の主である女王』

『ご主人様は、……貴方の世界にも様々な形をもって伝わっていると思いますが』

『愛と勇気、夢や希望、正義の前に敗北した者』

『所謂、悪役です』


 手紙を持つ手が震えている事に気が付く。

 目頭が熱くなる。

 何故だ、なぜ世界はいつも暗黒英雄(ダークヒーロー)を認めようとしないのだ…ッ!!彼らを悪役と呼び、愛正義夢希望の前に敗れさせようとする!悪役にもそれらの感情を持ってあfなvだねんbkb

 叫び出しそうな喉を抑え込み上げる感情を堪える。


 この手紙はマズい、相当レベルの高い魔法が掛けられているに違いない。

 俺程の強い精神(アイアンハート)があってもこうも容易く引きずられるとはな……。


『類は共を呼ぶ』


 タイムリーだな。わかるぞ。


『恨み辛み妬みそれらを抱えた敗北者達は城に集い一丸となって復讐の機会を待ち続けたのです』

『何百年も………』


 頬を熱い滴が伝う。


『そして今』

『今こそがこそが其の時だと立ち上がったご主人様達ですが』

『いかんせん待ち続けた時間が長すぎました』

『数人足腰が痛みそもそも立ち上がる事すらできない者がいる程』


 涙が乾き始める。


 これ、もしかして家の隣の伝説騎士宿所(デイサービス)女主人(ヘルパー)さんか?

 忌べき存在である暗黒騎士(ダークナイト)の俺だが、彼女には何か恨まれる事をしただろうか?

 登下校(ゴーリターン)の際も顔を合わせると


「フン、良い陽気(シャイン)だな……眩しさは俺には似合わないが」


 と暗黒騎士にしては感じも良く更に謙虚さも加えたこの挨拶は豪雨の日でも欠かさずしていた筈なのだが。

 


『そこでご主人様達の闇を引き継ぐのは此の数百年間で生れ落ち、そして育っていた彼等の娘達、なのです』


 ん?


『悪役の娘達、悪魔の様な子供達が親の仇討ちとばかりに世界を闇で……』

『との筈だったのですが』

『どうにも彼女達、まだまだどこか悪役として一人前ではなく』

『ああ嘆かわしい』


 どうやら女主人(ペルパー)さんではないようだ。



 俺の膝程まで伸びている手紙は不自然な余白を残し、ここでプツリと文字が消えていた。



 。。。。。。。。。。



 謎を抱えたままの手紙を制服のポケットにしまい込み、教室に戻ろうと宿(トイレ)から出た時だった。


「ちょっと来て」


 西条に顎で付いてくるよう促される。

 態度が気に入らないが、もしかしたら先程のイベントを経て俺に謝罪……または今まで絡んでいたのは実は好きだったから的な告白でもする気か?

 と歩調を合わせる気皆無な西条の背を追い、のこのこ(スプリングダークステップ)付いて行った先は体育館裏。


「平川と二人とかありえないから手短に。さっさと答えてよ」

「さっきの女知り合い?」

「クッソムカつく。私より顔が良いからなんだよ、意味わかんない」


 人はそう簡単には変われない、わかってはいたが。

 暗黒騎士成分抜きにしても心からの溜息を吐いて


「………俺の(クリスティーナ)は1人だけだ。それ以外の女など、知らん」


「だからキモい」

「な。平川と2人きりとかキショ怖いだろうから見守りに来てやった」


 おいおい。騎士(ナイト)かよサッカー男。

 イチャ突き出す颯爽に登場したサッカーと西条。

 俺の呼ばれた意味こそがわかんない。俺だって意味わかんないと言いたい。


「さっき、女は1人だけって言ったの、どっち?」


 本日2回目の棒立ちをキメていた俺と絡む2人の間に、降って落ちて来たまたは突然湧いて出て来た、としか考えられない2人目の謎美少女。



 その後色々あって、前から小耳に挟んではいたが巨乳フェチだったサッカーがとんでもない肢体の美少女に鼻の下を伸ばし、

 西条がブチ切れ、巨乳美少女は鼻の下を伸ばすサッカーにドン引きし

「こっちかぁ」などとその美少女にやたら絡まれるが「えー!タイムリミット?」という言葉を残して消えりした後

 巨乳美少女にも西条にも捨てられ錯乱しているサッカーを慰めたりしたが


 引き続き俺は棒立ち(ハードトール)しかしてなかったので、その時のことは詳細に語れる程憶えていない。





【この世に存在するありとあらゆる純粋な愛の破壊】

 それが魔女である母親から湾曲して引き継いだイライザの使命、だそうだ。

次回、斎藤&都。

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