コック ハック
あるところにA、B、Cの3人の男がいました。
彼らは全員同じ女の子が好きでした。
A、B、Cの3人は偶然にも同じ日の同じ時間、同じ場所で同じ女の子に告白する計画を立てていました。
Aは正統派。事前に女の子を近くの公園に呼び出し、噴水の前で告白する予定でした。
Bはロマンティスト。直前でAが告白するという情報を知り、急いで公園に駆けつけます。
Bには秘策がありました。聴いたら誰でも必ず踊り出してしまう音楽を所持しており、女の子と一緒に情熱的なダンスを踊ることで彼女のハートを射止めようと考えていたのです。
Cは強硬派。黒魔術士から仕入れた媚薬を使って女の子を言いなりにしようと考えています。その媚薬は、Cの言うことをなんでも一つだけ聞かせることができるものでした。Cは入念に計画を練り、あらゆるトラブルに対処できるように備えています。
***
女の子と待ち合わせの10分前。すでに噴水前に到着していた正統派のAは落ち着かない様子で腕時計を確認しています。
「ごめんね待った?」
そこに女の子登場。
「ううん!今来たところだよ!」
かれこれ1時間も前から到着していたAはありがちな嘘をつきます。
その時、2人の耳に公園の外からけたたましエンジン音が聞こえます。
それは公園に乗り付けた、情熱的なBの乗る高級車の音でした。
車を降りたBは急いで公園に入ります。
Bの着る白いタキシードは日差しで一層輝いて見えました。
しかしBが颯爽と女の子の前に現れる寸前、なんと彼は面白いリアクションを取りながら落とし穴に落ちていったのです。
その落とし穴は昨晩、狡猾なCが掘ったものでした。
「ククク!邪魔者は排除する」
少し離れた場所からBが落ちたのを確認してCはほくそ笑みます。
そしてCは女の子の隣にいるAに視線を移します。
「お前も邪魔だ!」
Cは持っていた虫かごを開け放ちます。
そこからは無数のカナブンが飛び出てきました。
ブンブンブンブン
「行け!あの男を襲うんだ!」
そう。Cはカナブンたちに、事前に媚薬のスプレーを吹きかけておいたのです。
カナブンたちは一直線にAに向かって行きます。
女の子と話すことに夢中になっていたAはカナブンの大群に気づくのが遅れました。
あっという間にカナブンに囲まれてしまいます。
「君は逃げるんだ!」
男らしく女の子を逃がそうとするA。
しかしカナブンはハナっからAしか狙っていません。
次々に飛び掛かるカナブンたち。
Aは悲鳴を上げて逃げ出しました。
カナブンはピッタリとAに付いてきます。
ブンブンブンブンブンブン
と、ちょうどその時Bが落とし穴から這い上がってきました。
それはセミの幼虫のように健気な姿でした。
それも束の間。
Bは走ってきたAと正面衝突。
ぶつかった衝撃で、えぐるように濃厚なキスをしたAとB。
グロテスク。
拍子にBが手に持っていたミュージックプレイヤーが鳴り出します。
軽快なタンゴのリズム。
その音は聴くものを踊りへと誘います。
ベッタリくっついたまま踊り出すAとB。
「今じゃい!」
邪魔者を全て排除したCは媚薬の入った注射器を携え、女の子の元へ一目散!
の、はずでしたが軽快なタンゴのリズムはゲスなCも踊りに誘います。
Cは情熱的な踊りを強いられ、なかなか女の子の元にたどり着けません。
目の前で踊り出した3人の男たちに怯える女の子。
濃厚なデュエットを踊るAとB。
ソロのC。
「クソ!こんなところで踊ってる場合じゃねえ!」
Cはほとばしる歪んだ欲求を全てパワーに変えて動こうとします。
しかしそれがマズかった。
Cは自らが仕掛けたバナナの皮を踏んづけ豪快に転びます。
因果応報。
同時に手に持っていた媚薬も放り投げてしまいました。
Cは急いで、と言ってもズンドコ踊りながら立ち上がり媚薬を探します。
ふと女の子の方を見ると腕をおさえて痛そうにしています。
Cは確信しました。
自分が放り投げた媚薬が奇跡的に女の子に当たったのだと。
これで女の子は自分の思いのまま!
Cは女の子に下す命令を徹夜で考えて決めていました。
「俺のケツを舐めろ!」
しかし女の子は動きません。
それもそのはず。
彼女はただの痛風だったのです。
では、注射器はどこに?
そのとき、木の茂みから何かが現れました。
それはなんと野生のペンチーニャです。
最近発見されたペンチーニャは草食の大人しい生き物ですが、
とても力が強く
ヌルヌルベチャベチャ、お腹はぽちゃぽちゃしています。
よく見るとペンチーニャの頭に媚薬の入っていた注射器が刺さっています。
ここにあったんだね!
ペンチーニャはヌルヌルベチャベチャCに近づいてきます。
ケツを舐めるためです。
「ヒィ!く、来るな!」
逃げようとするCは何かにぶつかりました。
手を絡ませて踊るAとBです。
「君も一緒に踊ろう」
提案するB。
「やめろ!」
ABCの3人は一つになりました。
軽快なタンゴのリズム。
飛び交うカナブン。
迫るペンチーニャ。
因果応報。
ペンチーニャは触手を伸ばします。
それはCのズボンに触れたかと思うと一瞬でビリビリに破きました。
ケツを舐めるためです。
3人に覆いかぶさるペンチーニャは長い舌を*自主規制*
悲鳴をあげるC。
すると更に信じられないことが起こります。
ペンチーニャの水分を介して、その意思がAとBにも通じたのです。
その意思とはもちろん。
Cのケツを舐めることです。
タンゴのリズムで踊り狂う2人と1匹は一心不乱にCのケツを*自主規制*
なんということでしょう。カナブンもCに張り付き始めます。
Cは黒魔術士から媚薬を買う時、大事なことを聞き忘れていのです。
注意書き この媚薬はなんでも一つ言うことを聞かせることができる。そのあと媚薬をあびた者は、薬が切れるまで術者に欲情し続ける。
ズンドコズンドコ
ブンブンブンブン
ヌルヌルベチャベチャ
そのあまりにも汚い光景に女の子は逃げ出すのでした。
「あああああ!助けてーーー!」
Cの受難はまだ始まったばかりです。
終わり
お読みいただきありがとうございました。
「淡々と狂気を吐く」ことを意識しながら書きました。