(6.5−2)
たぶん(○.5)の方
そういえば長年(というほど長くもないが)疑問だったことを聞いておこうと、ふと思った。
「ねぇ、ユズ」
「ん、どうしたのカズにぃ?」
一度俺の膝の上に座って、俺の腕を腰に回してみたり俺の顔をじっと見てから、何か思ったのと違ったのか、結局膝枕を所望して俺の膝に頭を乗せて漫画を読むユズに話しかけた。
ユズは漫画から目を離し、俺の方を向いた。
…別に大した用事でないので漫画読みながらでも、むしろその方が聞きやすかったんだが、まぁいい。
「ユズは俺のことを"カズにぃ"って呼ぶけど、和麻さんのことは何て呼んでいるんだい?」
和麻さんとはユズの実の兄である。
5年前くらいまでは、夏休みの間うちで過ごすのは和麻さんだったのだが、翌年から入れ替わるようにして柚季が遊びに来るようになった。
そのため和麻さんと柚季が一緒にいるところを見たことがないので、柚季と和麻さんが普段どんな感じなのか知らない。
…まぁ俺が『兄』として接している姿を和麻さんとそのまま置き換えただけなんだろうけどさ。
「兄さんのこと? 普通に兄さんって呼んでるよ〜」
「え、"カズにぃ"じゃないの?」
「何言ってんのカズにぃ、カズにぃはカズにぃでしょ? 兄さんは兄さんだよ」
何言ってんのはこっちのセリフだ!
カズにぃはカズにぃで兄さんは兄さんってわかりにくいわ。
つまり、カズにぃって呼ぶのは俺だけで、和麻さんのことは兄さんって呼ぶに決まっているだろうということか。
「『兄』の俺を"カズにぃ"って呼ぶみたいに、和麻さんのことも"カズにぃ"って呼んでるのかなって思ったんだけどな…。ほら、なんか呼びなれた感じだっただろう?」
「それじゃあどっちもカズにぃになっちゃって、どっちを呼んでるのかわかんなくなっちゃうじゃん。まったくもう、そんなこともわからないなんて、カズにぃったら可愛いんだからぁ〜」
「は、ははははは」
その俺の頬をつついてる指を逆に曲がるようにしてやろうか?
「万が一にも兄さんのことを"カズにぃ"って呼ぶとしたら、カズにぃは"カズくん"呼ぶことになるのかな……なんか新婚さんみたいでいいかも!」
「そ、そうだね」
「でも…」
「うん?」
「ユズの中で"カズにぃ"って言ったら、やっぱりカズにぃなんだよなぁ〜…」
「…そうなんだ。なんか嬉しいな」
「うん。カズにぃはカズにぃだけなんだよ」
俺は笑顔でそう言ってくるユズの頭を優しく撫でた。
あ、あくまでも『兄』としての行動だと理解してほしい。勘違いしないでよね!
でも、まぁなんだ。
……途中から微妙に話を聞いてなかったのは言わないほうがいいんだろうな。




