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(8)

朝食を食べ終え、そのまま食卓で詳しい話を聞くこととなった。


「えっと、まず美羽のことから紹介すると−−」

「美羽はお兄ちゃんの妹だよ」

「……うん、ごめん。まず俺の事情から話そうか」


俺と柚季は揃って頷いた。


「和樹くんたちも知っての通り、『兄職業法』の影響で教育機関でも『兄』についての教育が加わったよね」

「まぁ一応、俺も柚季の『兄』を体験してますし…」

「うん。それで、俺の通ってる大学でも動きがあってね。…その、実は俺も『兄』を、高校の夏季休暇に合わせて体験することになったんだよ」

「ってことは…」

「そう。美羽はそれで俺の『妹』ってことになったんだ」

「なるほど…」


でもそれって、和麻さんの『妹』だけど柚季の姉妹ではないっていう、本当にそうだったら"複雑な家庭事情"みたいな感じになってるのかな?


「…あれ、そういえば美羽ってどうやって『妹』に選ばれたんですか?」


実際の妹である柚季が俺の『妹』になったせいで選べなかったのは良いとして(いや、申し訳なくは思うけどね?)、家族か親戚から選ばれると聞いたが、"美羽"という従姉妹あるいは再従姉妹(はとこ)がいるなんて聞いたことない。


「その辺も…まぁ色々あったんだけど、美羽は高校の時の後輩なんだよ」

「……え?」


高校の時の後輩? このちっこ−−


「お兄ちゃん?」


美羽…さんが、また殺気混じりの笑顔を向けてきた。


「ってことは、美羽…さんって俺より年上ってことですか?」

「うん。俺が高校3年の時に1年生…つまり今年は2年生だよ」

「お兄ちゃん、安心して! 美羽はお兄ちゃんの『妹』だから!」

「い、いや、年上の人に"お兄ちゃん"とか呼ばれると、薄らさむ−−」

「お・に・い・ちゃん?」

「いえ、なんでもないです」

「え、え〜と…まぁ、特に気にしないで、『妹』と考えれば良いと思うよ」

「ダメー!!」


話が始まってからずっと黙り込んでいた柚季が叫んだ。


「カズにぃの『妹』はユズだけなの! 美羽さんの『兄』は兄さんなんだから、兄さんの『妹』だけやってて!」


……ここで"カズにぃ"って呼ばれると、俺のことなのか和麻さんのことなのか分かりにくいな。

まぁ美羽さんの"カズにぃ"が和麻さんで"お兄ちゃん"が俺、ユズの"カズにぃ"が俺で"兄さん"が和麻さんってことはさすがにわかるけどね。

ただ、"カズにぃ"のカズの部分を漢字にしても区別がつかないのは面ど……俺はいったい何を考えているんだろう?


「ユズちゃん、勝負をしましょう」

「…勝負?」

「そう、どっちがお兄ちゃんの『妹』に相応しいかという勝負よ」

「良いわ、望むところよ!」


勝手に賞品のような扱いをされた俺と話の外にいる和麻さんをおいて、『妹』二人が何やら燃え上がっている。

…だがまぁ、これは言っておくべきかな。


「美羽さんは和麻さんの『妹』であって、俺の『妹』じゃないだろ? そもそも話を聞く限りでは、今日が初対面だし」




美羽さんが錆び付いた機械のような動きで俺の方に驚愕したような表情を向けてきて……膝から崩れ落ちた。

なお、柚季は勝者の笑みを浮かべていた。

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