角部屋幽霊事件シリーズ② ぶつぶつ言っている
私が自衛隊生活の大半を過ごした、幽霊が出る角部屋の話より。
後輩の目撃談から、後輩をHとしましょうか。
よりにもよって、職場の理由から時期外れの代休をまとめてとることになった私。実家に帰っていたために、暫く角部屋にはお留守になっていた時期に、奴は現れたらしい。
「先輩、でました!」
私が帰ってきたとき、Hがさっそく報告をした。
それは、消灯時間を過ぎた真夜中に現れたらしい。
Hはふっと目が覚めて、自分が金縛りになっていることに気付いた。
なんだ? なんだ? どうしたんだ? と、軽いパニックになっている中に、部屋のドアが開いたような気がし、誰かが入ってきた気配がした。その誰かが部屋の真ん中に佇み、こうぶつぶつと言った。
「汚い、汚い、汚い、なんなの?ぶつぶつぶつ」
部屋を見て、汚い。
これは自衛官なら誰しもが、何度も注意されること。部屋に必要最低限の物しか置いてはいけず、生活感なんてお前らには関係ない! という、ある意味むちゃくちゃな自衛隊ルール。 駐屯地の中ではいつでも出動出来ていいように、物を必要最低限にしろ。それ以外の物が出ている部屋は“汚い”という区分でみなされる。余談だが、ティッシュ箱が1つ出す出さないで、すべての人がもめたことがある。
Hは当直さんが、抜き打ちチェックに来たのかな? なんて、思ったらしい。
「真夜中に?」
私は首を傾げた。
「だって、厳しいって有名な人だったんですよ」
確かに、その時期はちょうど某部隊のお局様が当直だった。
「でも、真夜中にみんなが寝ている中に来るかな? 睡眠妨害じゃん」
消灯時間は絶対のルール。
氏名階級関係なく、消灯中に寝ている人を邪魔することは許されないのもルール。
「なんだったのでしょうか?」
また、幽霊なのか? と結論に至ったのだが、あまりにもはっきりしていたために不思議である。もしかすると、その当直は夢遊病だったのかもしれない。とか、誰かが寝ぼけてたのかもしれない。という、考え方もあるのだが、真夜中なので怖いを通り越して迷惑な話である。