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なんで俺なんだ!
昔とあるところに、とてもやる気に満ち溢れた新隊員が入ってきた。
体力もずば抜けてあり、気力に満ち溢れ、みんなの応援もあり昇任試験に向けて頑張っていた。
だが、そこに不幸が襲い掛かる。
交通事故か作業事故かはわからないが、大きな取り返しのつかない重症を負ってしまう。毎日が車いすの日々。当然、これでは自衛官を続けていけそうもない。
落胆し、絶望し、とうとう命を投げうってしまった。
「出るんですよ」
とある陸士がそう言ってきた。
「何が?」
先輩陸曹が怪訝に聞く。
「アイツですよ。アイツ」
毎日部屋で寝ていると、金縛りになるという。
最初は、部屋の回りを
――ずりっ、ずりっ、ずりっ
と、這いずり回るだけだった。
しだいに、彼の足元へやってくる。
だんだん、上へのしかかって
ついに――
「ひっ」
彼の顔を恨めしそうに見て
「なんで、俺なんだ!」
そういって、消えていくのだそうだ。
国防という任務に熱意を抱いていた優秀な若者が、自分の人生に降りかかった不幸に絶望し、この世に留まってしまったのだろう。