鏡の女
訓練がなかなか終わらず、終わらないということは撤収が遅くなる。
どんな訓練でも私の仕事は、他の仕事の人たちより一番遅くに終わる。だから、夜に終わったら「まじかー」という時間帯まで撤収が続く。遅いと思わなかったので、全員がヘッドライトを持ってきておらず、手探り状態での撤収。なおさら遅くなる。
撤収が終わって帰ってきて、お上からの解散よし! との命令が下されるのは夜の12時あたりだった。
もう、最悪。本当はあり得ない。
先輩と言い合いながら、生活する建物に帰る。
玄関に入って、先輩が先に靴箱から靴を取り出して、ガラスドアをくぐり靴を脱ぐために椅子に座る。
玄関扉の向かい側には鏡がある。玄関ドアがガラスで中が見えるため、覗き見防止策なんだろう。
靴箱から靴を取り出した後、なんとなく鏡をみた。
鏡の中では、左側に先輩が椅子に座っている。右側におたふく顔の戦闘服を着て満面の笑みを浮かべている女。
最初は当直かな? って思った。
だが、当直が戦闘帽まで被るだろうか?
私ではない。
私はそのとき、鏡に映らない角度にいた。映ったとしても遠いから小さくいるだろう。
だが、その女は鏡の右側にアップで立っている。先輩を見ながら笑みを浮かべている。
「異常ない?」
当直が当直室から出てきた。
はあ? と、心の中で声を出す。
「先輩、先ほどそこに誰かいませんでした?」
「誰もいなかったけど?」
「先ほど、女が先輩の方を見ていたんですけどね?
鏡の中での様子ですが」
「いなかったよ」
私は頭の中に?を浮かべ、周囲を見渡した。
他部隊の人は全員寝てる時間だ。
では、先ほどの鏡の女はーー