04
お待たせいたしました。
男前な料理長っていいと思いませんか?
ではでは、お楽しみください。
「それで?何がありましたのか説明してください。」
ネルファーティエは調理場で起きた問題を料理長に聞いていた。
料理長は、作業をしながら簡潔に答える。
「お前んとこのメイドが今日のお花見会に出すスイーツのメインを他のやつらを巻き込みながらすっ転んで全部駄目にしちまったんだよ。」
……なかば投げやり状態だったが。
ネルファーティエは頭を抱え、ヒクっと喉をならした。
何故なら料理長の対応からして、今残ってる材料では同じものが作れないことは明白だったからだ。
「ちなみに、今大量に残ってる材料は……」
ネルファーティエはポツリと呟いた。
料理長はその答えを教えてくれる。
「砂糖とかの調味料とお茶を粉末にしたやつ、どっかの誰かが仕入れた変な豆に米粉とか言う白い粉しかねえよ。今日出す他のスイーツや料理で材料全部使い切っちまったし。後は温めるだけの状態でやりくりもできねえ。明日の材料は今日の夕方、どうみても間に合わん。……しかも残ってる材料が俺の知らないもんばっかなんだよ。」
最後は完全に愚痴になってた。
しかし、ネルファーティエにはそれより気になることがあった。
「お茶の粉末に変な豆ですか?」
料理長はああ、と返す。
「俺らが飲んでるお茶ってのは、簡単に言うと完全発酵して乾燥させたやつで作ってんだ。だが、そのお茶は蒸してから乾燥させ粉末化したものだと言っていた。」
ネルファーティエはもしかしたらと思い、料理長にお願いをしてみることにした。
「料理長、そのお茶の粉末と豆を見せてください。」
料理長はいいぜ、と材料を持ってきてくれた。
ネルファーティエは中身を確かめるとそれは抹茶と小豆だった。
「料理長、これならなんとかスイーツのメインを作れますよ。」
ネルファーティエが言うと、料理長は本当か?と訪ねてきた。
「はい。ですが、量が量なので料理人は総出でやってもらうしかありませんよ…「んなもん、構わねぇぜ。」」
相当、まいっていたのか言葉を被せてきた。
ネルファーティエはため息を吐いて、料理長に全員を呼んで貰った。
そして、5分後調理場に全員が集まるのを確認する。
ネルファーティエは一息ついて、話始めた。
「まず始めに私たちが作るものは練りきりの『うぐいす』というお菓子です。豆で餡というものを、そして、お茶の粉末を混ぜた米粉で餡をくるむものを作ります…………」
説明も終わり、きりのいいところまで作りあげる。
ネルファーティエはこの世界に魔法があって本当に良かったと思った。
魔法が存在しなければ時間が無さすぎて餡を作ること事態が出来なかっただろうから。
ネルファーティエは調理場の様子を観察するが特に問題は無さそうだった。
「ひと安心だな。」
すると、料理長が話しかけてきた。
「そうですね。」
ネルファーティエは静かに頷く。
「……なあ、このレシピどうやって知ったんだ?自慢じゃないが俺はいろんな国のレシピに触れてきた。だが、あんなレシピ見たことがない。」
料理長はこのレシピについて知りたいらしい。
しかし、前世の記憶から引っ張り出したとネルファーティエは言えるわけがなかった。
とりあえす、ネルファーティエは誤魔化すしかなかった。
「.....亡くなった祖母に教えてもらったんです。」
さすがに、そういうと料理長は聞いてこなくなったが、嘘八百なのに気をつかわせたという罪悪感からネルファーティエは顔を反らして、
「もう大丈夫そうなので私は自分の仕事に戻りますね。」
と言ってそこから立ち去ったのだった。
それが、逃げだと分かってはいたが。
いかがでしょうか?
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今回も読んでいただきありがとうございますね。