劣等感《complex》
久しぶりの更新になります。
最後まで読んで頂ければ幸いです。
それではお楽しみください。
工藤さんを抜いた、俺、俊、霧島、一ノ瀬さんの四人で喫茶カルムへ行った、その翌日。
「昨日は結局工藤さん来なかったなぁ…
どうしたのだろう」
そんなことを思いながら、始業のチャイムを待っていると、
ガララ…
工藤さんが、どこか物憂げな様子で教室に入ってきた。
「工藤さん、おはよう。
昨日は、どうしたんだ?」
「っ、
…木乃君はさ、昨日の結果、どうだったの?」
「丁度今その紙持ってるよ。
確かこの辺に…ほら、これ」
俺は結果の用紙を工藤さんに見せた。
すると、
「やっぱり、皆結果良かったんだ…」
そう言って、工藤さんは目を伏せてしまった。
「やっぱりって、工藤さんはどうだったの?」
「私ね、競音士、向いてないかもって…
適性の値が、低かったんだ。
これからどうすればいいかな…」
なんと声を掛ければ良いのか。
下手に励ましても逆効果だろうか、と俺は言葉に詰まってしまった。
そんな重い空気を察したのかそうでないのか、始業を告げるチャイムが鳴り響いた。
――――――――――――――――――
一限の休み時間、俺は一ノ瀬さんの所にいた。
「一ノ瀬さん、工藤さんの話、聞いた?」
「ううん、昨日はメールの返信、なかったから」
今朝の工藤さんの話を一ノ瀬さんに伝えると、一ノ瀬さんは心得たとばかりに、
「じゃあ、妙希のことは任せて。
多分明日には元に戻ってるから」
…やっぱり、持つべきものは親友かなと、俺はその時思った。
今日の五限には、SMDを使う実習授業が組まれていた。
つまり、やっと自分のSMDを手にできるのだ。
皆の気分が高揚しているのが伝わってきて、自分も落ち着いていられない昼休みを過ごした。
そして、いざ実習の時間。
俺達は、制服のまま、体育館に集合した。
「はい、全員集合しましたかネ?
それではまずは、個人用SMDを配布いたしますかネ」
「せんせー、個人用ってどういうことですかー?」
「まだ説明をされてなかったかネ?
この学園内では基本的に個人用SMDの携帯は禁止されているんだネ、主にトラブルの防止という目的だネ。
個人用SMDというのは、持ち主の力を引き出すために調整されているからネ、学園生活にそこまでの力の強さはいらないからネ?
実習では実習用のSMDがちゃんと用意されているからネ」
口調さえなければ、親しみやすい先生という雰囲気だなぁと思いながら、俺が話を聞き流していると、SMDの配布が始まっていた。
どうやら、ちょっとした面談もあるようだ。説明、だろうか。
「次、木乃君、君だネ」
「はい、先生」
「木乃君ネ、君は特化型だネ。
それにスピード特化だから、早く取り回せるような形状のSMDが向いているネ。
という訳で、君のSMDは2丁拳銃タイプになっているネ」
おお。
格好いい。
俺のそんなキラキラした目を、自分への興味と勘違いしたのか、先生はSMDについて語り始めた。
「SMDにはネ、僕ら音士と同じように二つのタイプがあるんダネ。
一つは、君のSMDのような特化型。
もう一つは、汎用型と呼ばれているんだネ。
要するに音士のタイプ分けと殆ど同じと考えてもらって構わないネ」
「どちらかが優れている、というわけではないんですか?」
「どちらにも優れた点がある、と言った方が正しいネ」
「なるほど、ありがとうございます」
「うん、じゃあこっちが説明書等になるからネ、
次、鈴科君…」
2丁拳銃という男子なら一度は憧れる(かもしれない)デバイスにテンションが上がってしまったのか、俺が2丁拳銃を振り回していると、霧島にイヤな目で見られていることに気がついた。
「…何だよ霧島」
「や、なんか、男の子だなーって。
あ!ちなみにね、あたしのSMD、指輪の形してるんだよ、ほら!」
そう言って俺に見せたのは、細いリングに、薄いピンク色の水晶のついた、なんというか…とてもファンシーなものだった。
「しょうがないだろ、テンションくらい上がるしな。
それより、そのデザイン、お気に入りなのか?」
「え、だって、可愛くない?」
「霧島ってそんな少女趣味だったか…?」
「なっ…
悪いか!」
「ふーん、いや、ま、いいんじゃないか?」
「ぐぬぬ…」
「さ、みんながどんなのもらったか見に行こうぜ」
「あ、待ってよ、ねぇってば!」
お互いのコンプレックスに若干触れつつ、俺と霧島は俊達の所へ寄っていった。
いかがでしたか。
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