検査《その力の適正は》
さぁまたまた設定の説明ですね。
最後まで読んで頂ければ幸いです。
それではお楽しみ下さい。
体育館に集まった新一年生達。
彼らを迎えたのはこの学園の最高責任者。
つまりは校長だ。
校長に就任して今年で8年目になるらしい。
中々珍しい事ではないのだろうか。
「諸君。入学おめでとう。
今から君達には《適正検査》を受けてもらう。
これはあくまでも通称なのだがな、要するに君達の能力について調べるのだ。
勿論、強制ではない。
しかし、検査を受けていない者にSMDは与えることは出来ない。
それでも、拒否する者はいるかな?」
それでは東学に入学した意味が無いというものであろう。拒否する人間がいなかったのは、ある意味当然のことだった。
「ふむ、よろしい。
それでは諸君がどんな結果を出すのか、楽しみにしている。」
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「駆君、君の番だよ。」
「あぁ。」
俺は検査員の前へ行き、
「一年E組、木乃駆です。」
「はい。それではそこのSMDに両手を着け、イヤホンをして下さい。」
適正検査は、検査専用のコンソール型のSMDに両手を着け、被検者にイヤホンから音を流し、音が流れている最中の被検者の脳の演算領域の活動を見たりするのだが…
正直、退屈である。
検査中はSMDに触れているだけなので、手持ち無沙汰(正確には両手は空いていないが)になってしまうのだ。
それでも一応検査なので、目を瞑って集中していた。
だがそれも数分のこと、
《これで検査は終了です。イヤホンを外してください。》
そう音声が流れてきたので、目を開け、イヤホンを外すと、
「木乃君、でしたね?」
「はい、検査は終わりですか?」
「そうですよ。にしても、貴方凄い演算速度ね。ここまでの速度はあまりいないわよ?それに演算領域の大きさも中々の物だし…
訓練すれば、優秀な競音士になれるわよ。」
「は、はぁ…ありがとうございます、それで、結果の方は…」
「あぁ、後日全員に同時に発表されるわ。」
「わかりました。ありがとうございました。」
…後半、顔の緩みを抑えるのに必死だったのだが、取り繕えただろうか。
検査員が俺を褒めてくれた文章の最後の一言。
「訓練すれば、優秀な競音士になれる」
この言葉は、俺にこれからの学園生活でのやる気を持たせるのに十分過ぎるほどであった。
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「なぁ俊、検査の後検査員に何か言われたか?」
「検査の後…あぁ、言われたよ。」
「なんて言われたんだ?」
「確か、音域がとても広いのね、だったかな」
音域。
この場合の音域は歌を歌う時の声のでる高さの幅、
という意味ではない。
音を扱える領域が広い、
つまり、それだけ多くの能力を扱える、ということ。
「万能型って事か…」
「ま、その分特化型の人には負けるだろうけどね」
俊は自信無さげに笑ってみせたが、何も能力者の優劣を決めるのは能力の強さだけではない。
万能型の強みはその柔軟性にこそある。
確かに特化型にはその種類の能力では劣るだろうが、それを補うように他の種類の能力を扱う事が出来る。
要するに一概には優劣を決めることは出来ないのだ。
「で、駆君は何か言われたのかい?」
「俺は、演算速度の高さと演算領域の広さに注目されたんだ。」
そう、俊が万能型なのに対して、俺は典型的な特化型。
ちなみに、音域と演算領域は違う物。
音域については先刻説明したが、演算領域はつまりデータを処理するスペースの事だ。
それが広いという事は、処理に使える容量が大きいという事なので、より強力な能力を扱う事が出来るのだ。
「スピード特化型といったところだな。」
「こりゃ、早撃ちで駆君に勝つのはみんな難しいんじゃないかな?」
「いや、早く撃ててもそれを防がれてしまっては話にならないからな。その点万能型は色々な戦術を取れるだろう」
「いや、でも…」
「しかし…」
それから数分間、俺と俊は能力について語り合っていた。
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今日は検査に一日を費やしてしまったので、俺達はそのまま帰宅することになった。
なので俺がさっさと帰りの支度を整えていると、
「木乃君!」
「工藤さんか、どうしたんだ?」
「今から遥と喫茶店に行こうって話をしててね。
良かったら木乃君もどうかなって。」
「あぁ、そういう事ならお言葉に甘えて。
そうだ、もう一人呼んでもいいか?」
「良いよ!E組の人?」
「うん、葵だよ、葵 俊」
「あのさわかやな人か、わかった、遥呼んでくるから、昇降口で集合ね!」
「了解」
という訳で、俺達は四人で喫茶店へ向かうことになった。
次回は会話が多くなりそうな予感。
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