エントランス・セレモニー《入学式》
ついに色々なキャラが登場です。
最後まで読んで頂ければ幸いです。
それではお楽しみ下さい。
午前六時に起き、水を飲み、顔を洗い、朝食を食べ、歯を磨く。
俺が毎朝している動作。
その端々に若干のテンションの高さが見え隠れするのも仕方が無い…ということにして欲しい。
というのも、今日は入学式なのだ。
勉強して勉強して…一生のうちでもここまで自分のために力を尽くす事はないんじゃないかというほど頑張って、そして合格したのだ。
その入学式。楽しみじゃない訳がない。
いや、もちろん入学式という式典に楽しむ要素など中々ないのだが…
―――――――――――――
少し長く感じられた入学式も終わり、クラス発表の紙が掲示されていた。
「えっと…?木乃、き、…あった、E組か、どんな人がいるかな…」
E組の前に着く。既に中には他の生徒がいるようで、入学式直後にしては割と賑やかな声が少なからず聞こえている。
「…よし。」
そして、俺はその扉を開けた。
―――――――――――――
「それで、君の名前は?」
「俺は木乃。木乃 駆だよ。そっちは?」
「私は工藤 妙希。妙希でいいよ。
木乃君か、これからよろしくね!」
彼女は俺の隣の席で、俺が席について早々に話し掛けてきた人だ。
「木乃君は競音士志望?それとも調音士志望?」
「競音士だよ。工藤さんは?」
「妙希でいいのに…
私ね、競音士になって、
…お父さんを見返してやるんだ。」
瞬間、一瞬だが彼女の目の色が変わったのを俺は気付いた。
彼女もまた、並々ならぬ努力を積み重ねて来たのであろう事を感じて、俺は気づかぬ内に彼女に共感を抱いていた。
「俺も、夢があってね。
俺には兄がいるんだけど、兄は調音士として第一線で活躍しているんだ。
木乃 拓人って聞いたことない?」
「あ!もちろんよ、木乃拓人って去年の競技会で最優秀新人賞をとった人でしょ!?
まさか木乃君がその弟だとは…
でもあんまり、似てない…?」
「うん、良く言われる。
でね、俺はその兄とコンビを組んで、SMSに出て優勝するってのが夢なんだ。」
「SMSで優勝…」
「そう。確かに現実的な夢じゃないかも知れない。でも兄さんの調音士としての腕と、俺の力が兄さんの腕に見合うようになって、それで力を合わせれば、優勝も夢物語じゃないと、俺は信じてるんだ」
気が付けば、熱弁してしまっていた。
「あ…その、要するに、今はもっともっと自分を高めて行きたいって、思ってる。」
俺が若干必死に取り繕っていると、
「妙希。久しぶり」
俺の後ろから抑揚の少ない声がした。
「あ、遥!」
遥、と呼ばれた女子は、そのまま俺の方を向き、
「一ノ瀬 遥、よろしくね」
「あ、あぁ、俺は木乃。よろしく。」
「それで、遥も東学、受けてたんだ!」
「うん。お母さんから、妙希が東学受けるって聞いたから。」
「工藤さんと一ノ瀬さんは、知り合いなのか?」
「さんなんて、くすぐったいからつけなくていいよ?
遥と私は幼馴染でね、でも中学の時に遥が引っ越しちゃって…
会うのは1年ぶりくらい?」
「そう。妙希、大人っぽくなった。」
「そ、そうかな。」
…いつの間にか俺はいないことになっているらしい。
まぁ久しぶりだと言っていたし、積もる話もあるだろうから、俺は他のクラスメイトに意識を傾けていた。
すると、
「やぁ。」
「ん…?あ、俺か?」
「あぁ。初めまして。僕は葵 俊。」
「俺は木乃駆。よろしく。」
「よろしくね、駆君。」
葵 俊。好青年とは彼のような人をいうのだろう。
まず見た目。身長は高く、爽やかな顔立ち。俺が羨ましいと思ったのは言うまでもない。
そして、この人当たりの良さそうな口調。
モテるであろうことは、容易に想像がついた。
――――――――――――――――――――
《新入生の皆様、ご入学おめでとうございます。
これより「検査」の説明会をいたしますので、至急体育館に集合してください。
繰り返します、これより…》
検査。
ついに自分のSMSについての検査を、正確には自分の音に対しての素質の検査を受けることができる。
俺は新しい友人達と共に、体育館へ向かった。
入学式と銘打っているのにたった数行で片付けられてしまった入学式さんマジ可哀想。
どうでしたか、やはりこういう小説のキャラは名前を考えるのに一苦労です。
次回は検査ですか、やはり設定作るのが楽しいですね、前にもいいましたが。
それではご感想お待ちしております。