公爵令嬢の計略
「あらま、そう。大変ねファンテーヌも。」
帰宅した婚約者から王太子に対する秘書官の計画を聞いてアナスタシアはあっさりと言い、じゃあファイルを見せてと彼の手から受け取る。国内外の妙齢の姫君・令嬢方の事が詳細に書かれている。それも、どの女性を娶っても国内のどの貴族にも多大な影響はない。あるとしても全て王太子に有利に働く、まさに完璧なリストであった。
「うーん、流石は氷の秘書官完璧ね。この方達皆さんもう招待状は出来てたわよ。でも、有能な魔法執務官が何やら企んでるわね?白状しなさいエイナル。」
「氷もいつかは溶けるってことさ。言わせてもらえば私は彼女以上に相応しい相手はいないと思うんだが、君どう思う?確か同い年だろう。」
「それ以上に親しいわよ。彼女、最初はヴィルヘルミナ様の侍女をしていたから。あの頃はよく笑う普通よりちょっとばかし出来のいい友達って感じだったけど、その点で引き抜かれ苦労してるのよね・・・可哀想にってミンナ様と二人でよく話してたわ。」
よく笑う?オブリーには想像がつかない。
「ねぇ、最初の計画じゃ末は男爵家から上は公爵家まで国内の貴族令嬢の身分を問わず殿下が選んだ女性なら陛下も口出ししないって話だったわよね。」
「そうだけど、問題はせっかくお招きする他のリストに名がある女性達の立場がなぁ。」
「あら、それは元々婚礼にお呼びするという名目だから大丈夫よ。ただ後ろ盾が弱いわね。子爵家と言っても資産が今一つなのよ。でも、そこもリストのご令嬢方のお陰で解決できるわ。」
そう、バイラル子爵家は一時傾いていた。本来ならば娘であるファンテーヌを資産のある家に嫁がせるなど案はあったが当時存命であった祖父が許さなかった、そして彼女は王宮に働きに出たのだ。更に第一王女付きの侍女になった彼女は意外な才能を見せ王女及び他の侍女達を虜にする。
「あとは本人同士をいかに結び付けるかよね。」
「そう、そこが一番難しいんだよ。」
そこまで話して二人は溜息をつき、気持ちを切り替え婚礼の席次表などを話し合った。