プロローグ
どうも鬼無里と申します。
いやー、なんか思いついたので書きました。
一話一話短めに書いていく予定です。どうぞよろしくお願いします。
地獄を見た。
俺だって人間でまだ十九年しか生きてきてはいないが、それでも自分の人生というものの中では絶望することも後悔することも悲嘆に暮れることもあった。それでも、どうにか自分の力で立ち直り、時には信頼のおける人たちを頼って生きてきた。
自分の人生は不幸では無かった。無意味や無価値なものではない。そう思っていた。
そして、俺はあの日を迎えた。
初めて自分の存在が無意味で無価値で何よりも無力なものだと実感した日だった。
十九歳の誕生日を迎えたその日に、俺は仲間を友人を家族を、すべて失った。
そして、俺だかが生き残った。
のうのうと、生き残ってしまったのだ。
◆
魔装国家オーキッドの王都ハイドラシアの城のその地下には、国民の誰一人にも知られていない牢獄がある。
王族と幾つかの有力貴族と騎士団の団長クラスにのみ知られているその牢獄には、名前を出すことすら恐れられている極悪人たちが収容されている。
例えば、王都にて三年で百人もの一般国民を殺害し、死霊の加護を身に着けた殺人鬼。
例えば、禁術を研究し続け老若男女問わず人体実験をし、災害級の呪いを完成させた魔術師。
例えば、戦場において敵味方を無視して虐殺の限りを尽くし、合計三百人も殺した狂戦士。
などなど。
彼らは様々な理由から処刑をすることができなくなった凶悪な犯罪者たちである。
牢獄内では彼ら囚人たちは鎖で全身を雁字搦めに拘束され、猿轡に目隠しをされている。
日の光を浴びず、食事も最低限の物だけを与えられ、牢獄内でその命を終える。
それが、彼らの運命だった。
そんな牢獄において、一人の青年が拘束されていた。
外見からしてまだ二十三~二十五程の齢なはずだが、そこに若々しさはなく荒んだ廃屋のような雰囲気が染みつていた。
手入れもされずに伸び放題な濃い赤色の髪は、艶もなく酸化して黒ずんだ血のような色をしていた。
この青年が犯した罪はオーキッドの歴史上もっとも最悪で最凶なものだ。
大よそ三年前、オーキッド内の主要な街の一つであるシーダの住人全員が虐殺されるという事件が起きた。
その事件において犠牲になった住民は六千近く。
――たった一人の青年を除いて。
オーキッド国家はこの事件を隠蔽し、生き残った青年を犯人と見做して拘束し、投獄したのだった。
当時十九歳だったこのの青年の名はラーク。
若干十五歳で魔装騎士団団長に選ばれた神童であり、シーダの街で最も優しいと言われていた青年であった。