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Level.1 託された物。

クロスオーバー第二弾。

 十数年前。

 異界から来た誇り高き聖剣士・ゼファー、彼は異界の人々を守る為、同族に剣を向けた。

 次々と迫り来る同族を切り払い、窮地を脱した後は異界の女性に恋をした。

 だが、幸せな時間は長くは続かなかった...

 聖剣士の反乱を知った異界の王は、我々が住む世界へ侵攻した。

 異界の王の強力な魔法に、聖剣士は成す術も無く...

 遂に異界の王に負けた。

『自分の命と引き換えに、この世界だけは見逃して欲しい。』

 誇り高き聖剣士は無様に這い蹲り、異界の王に頼み込んだ。

 その申し出を了承した異界の王は、軍を引き連れて自分達の世界へと帰っていった。




 時は流れて、現代。

 一人の学生は、退屈そうに屋上で空を眺めていた。

「おい英次(えいじ)!いつまで屋上にいるつもりだ!?」

「あぁ~はいはい、分かりましたよ。」

 ゆっくりと体を起こした少年は、教師の指示に従い階段を降り家路へ着こうとしていた。

「ったく、貴様の態度は何だ!?教師を嘗めてるのか!?」

「あぁ~あぁ~すいませんねぇ~」

 嫌味の様な返事を返し校門へ向かう。

「ッチ!」

 派手に舌打ちに、ポケットの中へ手を突っ込む。進む度に周りの生徒が避けていく。彼、水嶋英次は所謂(いわゆる)不良である。父は消息不明、母は時々帰ってくるがほぼ家には居ない状態が続いている。小学生までは親戚の家に預けられていたが、今では誰も居ない実家に住んでいる。それ故、家庭環境も親子仲も最悪。高校入学時には在校不良グループに目を付けられ、それを叩き潰し、教師からは完全に不良のレッテルを貼られ学校で近づく者は居ない。

「お兄ちゃ~ん!!」

 否、一人だけ好んで接する者が居る。親戚の娘である水姫(みずき)は小学生の頃から英次に懐いていた。そんな水姫が手を振っていた。

「ちょ、水姫!」

「あの人って不良でしょ?」

「え、お兄ちゃんは不良じゃないよ?」

 水姫の友人に不審者を見る様な目で睨まれるのを無視し、水姫の目前へ迫る英次。水姫の方へスっと手を伸ばすと、水姫の友人が心配そうに見守る。

「水姫、学校で虐められてないか?」

 優しくソっと頭を撫でる。

「うん、大丈夫!」

「そうか...」

「コッチはね、友達の涼花ちゃんと光ちゃん!!」

「「ど、どうも...」」

 怯えるように挨拶をする2人。

「もぉ~お兄ちゃん、2人が怖がってるよぉ~!」

「あ、あぁ...」

 スっとネクタイを締め直すと、2人の正面へ向く。

「これからも水姫と仲良くしてやってくれ。」

 頭を下げ、頼む。

「「は、はい...」」

 ビクッと身を強ばらせながら返事をすると、後ろから声がする。

「ちょっと水嶋っ!!」

「「生徒会長...」」

「はぁ~...五月蝿いのが来た、俺行くな?」

「うん!」

 追い掛けてくる生徒会長を無視して歩く英次。それを気にせず少し後ろから説教しながら追い掛ける生徒会長。

 歩き始めて数分が経ち、公園で立ち止まる。

「なぁ~真白(ましろ)、毎日俺に説教して楽しいか?」

 生徒会長へ向き直り、ゆっくりと尋ねる。

「俺はさぁ、別にタバコは吸わねぇ~しよぉ?普通に登下校してるだけだぜ?」

「な、何よ?アタシが女だからって脅すつもり?」

「嫌々、ちげぇ~よ。だからさぁ、俺のオヤジが居ねぇ~のは仕方ねぇ~じゃん?」

「ん...」

「母ちゃんも好き勝手にやってるしさぁ、それってお前らからしたら普通じゃねぇ~かも知れねぇ~よ?でもよぉ...なんつ~かさ、仕方ねぇ~んだよ。そう言う環境に生まれちまったんだしさ。」

「あたしは...アタシが言いたいのは!!...そう言う事じゃ無いんだ。」

「はぁ~...面倒だ。とりあえず、ベンチ座ろ?」

 ゆっくりとベンチに腰掛けネクタイを緩める英次。

「真白はさ、俺みたいな半端物(はんぱもん)が嫌いなのかも知れないけどさ、俺に進んで関わらない方が良い。」

「なんで...」

「俺は半端な不良高校生、真白は成績優秀な生徒会長。どう考えても俺達はこんな風に話しちゃいけないんだ。」

「学校で好き勝手やってる奴の言う事なんて聞くつもりはないわ。」

「おいおい、俺の話聞いてたか?」

「アタシには夢があるの。卒業式の日までに、菊姫高校への道を桜並木にしたいの。」

「なぁ、お前実はアホだろ?」

「何よ?」

 ムスっとした顔で怒る真白を見ていると不意に面白くなってきた英次はハハッと笑う。

「いやぁ~菊って花の名前じゃん?なのに学校までの道を桜で一杯にしたいって良いなぁ~最高にブッ飛んでる。」

「ちょ、笑いすぎよ水嶋!!」

「俺も見たいよ桜並木。お前の夢、応援するよ。」

 真顔で、率直に向き合う。

「あ、ありがとう。なんか意外だな水嶋が真剣に応援してくれるって...」

「なんだよ、それ?」

「だって、ずぅ~っとアタシの事無視してたじゃない?」

「あぁ~...面倒だったからな、正直。」

「...サイテー」

「でもさ、案外話してみると良いもんだな。」

「そうね、正直怖かった。でも、案外水嶋が良い奴で良かった。」

「あっそ。んじゃ、俺そろそろ行くわ。」

「何か用事でもあるの?」

「いや、ねぇ~けどさ。あんまり仲良くしてるトコ見られると不審に思われるからよ。」

 立ち上がり歩き始める。


 家に帰り着き、テレビをボォ~っと眺めていると知らない内に眠ってしまった様だ...



『見つけた、彼の力を継ぐ者...』



 目を覚ますと同時にガバァッと身を起こす。

「ん、なんだ起きたか?」

 台所に立つ母・紫姫を睨みつけ舌打ちする。

「なんで帰ってきたんだよ?」

「ココは私の家だったはずだが?いつからお前の城になった?」

「うるせぇ...」

「沙流、コイツ巻け。」

 紫姫がそう言うと、何処からとも無く現れた人影に身を拘束される。

「うわっ、なんだテメェッ!!何してんだ、この縄解けオラッ!?」

「申し訳ありません、主の命なので。紫姫様宜しいのですか、ご子息にこの様な行為?」

「あぁ、気にするな。おい英次、よく聞けよ?」

「あぁっ!?」

 縄を引きちぎろうとするがビクともしない。

「ったく、困ったガキだ。良いか、しばらくの間は家から出るな。」

「はぁ?良いからこの縄解けババァッ!!第一コイツ誰だよ?」

「コイツか?沙流と言ってな、私の部下だ。」

「お初にお目にかかります、英次様。沙流と申します。」

「って、母ちゃん仕事してたのかっ!?」

「たりめぇ~だ馬鹿。」

 タバコをフゥ~っと吐出し、英次に向けて一枚のカードを投げる。

「なんかあったらコイツに連絡してみろ、なんとかしてくれる。」

「はぁっ!?八代紅也って誰だよっ!?」

「なんだ知らんのか?何でも屋やってる奴だよ。」

「英次様と同じ菊姫高校の生徒でございます。」

「んじゃ、私は忙しいんだ。行くぞ沙流。」

「御意。」

 部屋から立ち去る二人を睨みながらゆっくりと身を起こす。それから立ち上がり使えそうな物を探す。

「ったく、複雑な結び方だな...」

 なんとか刃物を見つけ、小器用に縄を切っていく。

「あと...ちょい!」

 なんとか縄を解き、深く息を吐く。外は大荒れの空模様、明日は豪雨だろう...

「夕方は晴天だったんだけど...」

 瞬間、ピカッと稲妻が閃きブレーカーが落ちる。

「ッチ、最悪だ...」

 ブレーカーを押上げ、再度電気を供給し直すとゆっくりとソファーへ寝そべる。それからケータイを開く。

『着信:4件 水姫。未読メッセージ:一件』

「水姫から...?」

 メール受信箱を開く。


『お兄ちゃん、どうして電話に出てくれないの?

 お兄ちゃんにお客さんが来てたよ?

 その人、もう帰っちゃっいましたが不思議な感じの人でした。


 また来るらしいので、明日は家で待ってます。』


「俺に、客?真白...な訳ないか、誰だ?あぁ~もう、考えても仕方ねぇ~...寝るか。」

 電気を消し、目を瞑る。


 不思議な夢を見た。母ちゃんが変な剣士と共闘してる夢を...

 それから...


 ドン、ガラガラガラッ!!!!


 轟く雷鳴に目を覚ました。時刻は8時17分、走ればまだ間に合う時刻。遅刻は日常であるが、真白との話を思い出すと遅刻をするのは裏切り行為の様な気がしてすぐに体が動いた。なんとかギリギリ校門をくぐり朝のSHRへ参加した。

「へぇ~遅刻せずに来たわね、水嶋。」

「えぇっ?なんだ真白か...」

「なんだとは何よ。アタシ以外に声掛けてくれる人居ないでしょ、水嶋には。」

「ほっとけ。」

 相変わらずの暇な授業をやり過ごすと、水姫のメール通り叔父の家へ向かう準備をする。

「ねぇ~水嶋、今日暇?良かったら甘い物食べに行かない?勉強するには脳に糖分が不可欠なのよねぇ~...」

「わりぃ~今日は本物の用事。お前もあんまり寄り道すんなよ?特に今日は雨がすごい。」

「はいはい、分かりましたよ。」

 そこまで話すと、薄っぺらい鞄を引っ掴み教室を飛び出す。

「あぁ~何か嫌な予感がする。」

 叔父の家までの道を走り、玄関の前で立ち止まる。

「要約と来たか、ゼファーの息子。」

「誰だ、お前?」

「何言ってるんだよ、兄さん?」

「俺は一人っ子だ、そのサングラス外して名乗れ。」

「これは失礼。」

 ゆっくりとサングラスを外し、にらみ合う。

「僕の名前はゼフィランサス、ゼファーの息子。兄さんの弟に当たる訳だ。」

「巫山戯てんのか?」

 空は鈍色に染まり、ポツポツと雨が降ってきた。

「どうしてそう言う事言うかなぁ~?これ、感動の再会って奴らしいんですよ?」

「なら、分かった。お前が俺の弟だとして、何故俺に会いに来た?」

「別に兄さんに会いに来た訳じゃない。ただ、面倒な事になってこっちに来たんだ。」

「面倒な事?」

「父さんの秘宝を盗んだ奴が、こっちの世界へ逃げたんだよ。」

「はぁ?父さんの秘宝だぁ~?」

「そう、聖剣士ゼファーが使っていた二つしか無い意志を持った魔導具。」

「お前はそれを取り戻しに来た、と?」

「そんなとこ。そのついでに兄さんも一緒に父さんの故郷へ帰らないかなぁ~って。」

「昼間っから中二患者か?」

「チュウニ...?なにそれ?」

「こっちじゃお前みたいな奴の事を指すんだが、知らなかったか?」

「あぁ~いや...何となく分かるよ。交渉決裂って事で良いんだよね?」

「一昨日来やがれクソヤロー。」

「本当ならココで兄さんを殺すのも悪くはないんだけど、今日は残念。非武装なんだ...」

 手をブランと開いて見せ、ゆっくりと敷居を越え、英次の隣を過ぎようとする。

「それと、その家の敷居を次に跨ぐと九分殺しだ!」

「安心してよ兄さん、親戚は殺さないから。僕たちはゼファーとは違う、同族は殺さない。」

 ゆっくりと空へ浮き上がっていく...

「お前、本当に何もんだよ...」

 目を見開き、ゼフィランサスを見つめる事しか出来なかった。

それからガラガラと家の扉が開かれ水姫が顔を出す。

「あ、お兄ちゃん。...どうしたの?」

「いや...わりぃ、帰る。」

「えぇ~雨降ってるよ?ゆっくりしていけば?」

「あぁ、ありがとう。でも良いよ、俺は。お前こそ、風邪惹くなよ?」

ソっと頭を撫でる。

「うん、ありがと。じゃぁ~ね。」

「あぁ、叔父さんと叔母さんよろしく。」

そう言うと水姫に背を向けてもう一度家路につく。ゆっくり頭の中でゼフィランサスの事を整理する。俺のオヤジは何者なんだ?

公園前までたどり着くと何かが倒れてる。

「野良か?」

よく凝視してみる。違う、動物じゃない。もっと大きな...

近づいた瞬間、背筋が寒気に襲われた。次に、何かの間違いであって欲しいと願った。

「真白っ!」

気が付くと倒れている真白の元まで駆け寄っていた。

地面に広がる血。冷たい雨に打たれ体は冷え切っている。辛うじて息はあるが、虫の息だった。

「真白、真白、おいっ!!」

ヒューヒューっと言いながら英次の胸元を握り締める真白。優しく抱き起こし声に集中する。

「...アタシの...夢...」

泣きながら、必死に英次へ何かを伝えようとする。

「...アタシじゃ...ダメ...みたい、だから...」

「おい真白、なに言ってんだよ!何死にそうな声出してんだよ...」

ホロホロと英次の目頭から熱い零れ出す。

「...ホントは...病気で死んだ...妹の願い...だったの」

「何言ってんだ、そんな大事な夢を諦めるのかよ!?」

「アタシの、夢...妹の夢...全部、全部...水嶋に...」

そのまま力を失った真白の最後の一言を、重く受け止めたままその場に固まる。

「なんでだよ、何なんだよ...真白、巫山戯んな!なんで俺なんかに託すんだよっ!!」

その叫びを雨音が掻き消す。


思考回路が回復し始めた頃、不意に声をかけられる。

「要約会えた、ゼファーの息子...」

「今度は何なんだよ、ドイツもコイツもゼファーゼファーって!!」

「私の名はミーシャ、君達で言う異世界から来た。」

「俺に何の様だ!?俺は今、かなり機嫌が悪いぜ?」

「君の力を貸して欲しい。私は今追われている。」

「誰に...?ゼフィランサスか?」

「何?」

「俺の弟って奴に追われてんのか!?真白はゼフィランサスに殺されたのか!?」

そう叫んだあと、低い男の声がした。 

「違うな、殺したのは我ぞ。」

「チィ、もう追っ手が!君は逃げろ、ココは私が!」

「ゴチャゴチャうるせぇハエどもが...」

ゆっくりと真白を降ろし、地面へ寝かせると着ていたコートを上へ掛ける。

「真白、ごめん。ちょっと待っててくれ...」

ゆっくりと男を見据える。二m前後の巨漢を目の前に構える。

「ほぉ...主、素手で我と戦う気か?我も非武装だ、手加減はせぬぞ?」

「止めたまえ君!例えゼファーの息子でもケガじゃ済まないぞ?」

「ゴチャゴチャ言ってるとテメェ~から片付けるぞ?お前にも言いたい事はある。」

「仲間割れか、愚かなり。」

「うるせぇ~よ、コイツは仲間でもなんでもねぇ。良くも真白を殺してくれたな。」

「将は無関係な者は殺すなと言った。だが我はそうは思わん。そして我は正しかった。」

それを聞き終えた瞬間、巨漢へと突貫する。素早く駆け、懐へ飛び込み連打を叩き込む。

「フハハ、効かん。」

丸太のような腕をひ一振りし、英次を跳ね飛ばす。

「あぁ~もう見ちゃ居られん。」

《Standend by,ready?》

「変...身っ!!」

《Complete!!》

「ほう、それが意志を持った魔導具か?」

「行くよ、ステイメンッ!!」

《Ok,boss.》

「アクセルッ!!」

巨漢との間合いを瞬時に詰め勢いで飛び蹴りを放つと、蹴った反動で後方宙返りを決めて着地する。

「何ボォ~っとつっ立ってんの!?早く逃げなさ...」

「我を前に余所見か?」

「えっ!?」

巨漢の重い一撃がミーシャを襲い、キャッと言う声と共に吹き飛ばされる。

「その魔導具我が貰うぞ。」

ゆっくりとミーシャへ伸ばされた腕。

「ダメだ、やめろ!」

叫ぶミーシャ。だが無情にも魔導具・ステイメンは巨漢に奪われてしまった。

「これが意志を持つ魔導具か、力が満ち満ちるのを感じるぞ!」

巨漢の体へと光が集まり、足元へ魔法陣が展開される。

「ステイメン...そんな...」

「まずはゼファーの息子、貴様だ。その娘の隣で眠らせてやろう。我の慈悲に感謝せい。」

「なんかよぉ...」

「ん?」

「ミーシャっつったか?お前、何しに来たんだよ。自分の道具は敵に奪われるしよぉ~」

フラフラと男へ前進する。

「自分の身一つ守れねぇ~で、俺を逃がそうとするし...」

「フッ、乱心したか小僧。」

「お前は真白を意味もなく殺すしよぉ...」

ゆっくり無機質に言葉を紡ぎ出す。

「でもよぉ、最後に真白が言った事を聞いて確信が持てたよ。」

巨漢が英次の眼前まで迫る。

「真白、お前は俺のダチに為りたかったんだろぅ?」

男へ腕を伸ばす。

「俺には託された(もん)があるんだ、ここじゃ死ねねぇ~...来い。」

巨漢の纏っていた光は一瞬で消え去り、英次の手元にはブレスレットが収まっていた。

「コイツがゼファーの秘宝?」

《アナタは何者ですか?》

「ゼファーの息子らしいぜ。」

一瞬にして世界が変わる。さっきまで居たはずの公園が、見渡す限り純白の世界。降っていた雨は光の粒へ変わっていた...

「ココは...」

《ゼファーの息子、何の為に力を使う?》

何もない場所から声が木霊する。

「友との約束を守るため...目の前に居たはずのクソ野郎を殴るため。」

《不合格、力は貸そう。だが、今のままでは全開には程遠いだろう。》

現実へと引き戻されると、巨漢が拳を振り上げていた。

「小僧がっ!!」

拳を受け止め、押し返す。

「フンッ、ハァっ!!」

左手の一閃、右手の一発に怯んだ巨漢。

「今だ決めろっ!!」

ミーシャの声を聞き終えるよりも早く、体は浮かび上がり巨漢へ蹴りを放っていた...

「グゥ...未装備とは言え、攻撃を受けすぎたか...」

飛び上がり逃げようとする巨漢。

「待てっ!!」

「待つのは君だ!!」

「何っ!?」

ミーシャへ振り返り、再度現実へ向き合う。

「...真白、ごめん。」

「この子、友達だったの?」

「...うるせぇ、失せろ。」

ゆっくりと真白元へ戻り、血溜りへ写った自分を見つめる。

「ゼフィランサス...?」

「君の今の姿は、多分魔力に当たった事で変化してるんだと思う。白い防護服に灰色の髪、似合ってるよ。」

「アンタ、もう帰ってくれ。俺は、こんな厄災を持ってきたアンタも殺したいくらい憎い。」

「でも、君の手にそれが渡った事で彼らから容易には手出し出来なくなった。嬉しい誤算だ。」

「コレ、渡すとアイツ等は去ってくれるんじゃないのか?こんな(もん)無い方が良い...」

そこまで言うと英次の胸ぐらは強い力で引っ張られる。

「こんの...っ!!」

英次の頬へ痺れる痛みが走る。

「俺さぁ...守れなかったんだよ。」

目が再び滲み、涙が零れ出す。

「もっと早くから真白の説教に付き合ってればさぁ、もっと仲良くなれたかも知れねぇ~のに...」

ミーシャへ寄りかかる。

「ホントはこれからバカやって、いっぱい笑って、桜並木を一緒に歩いて卒業出来たかも知れないのに...」

「託された物が、あるんだろう?」

「ふっ、ぐぅ...うぁああああああああっ!!!」

悲痛な叫びは雨音にかき消されて...

だけど、心には確かに消えない誓いがあって、

これから少年は大いなる力を、その身に宿していく。

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