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宇宙人と僕  作者: 遍駆羽御
第一部 蒼空編
9/15

第二章 分かち合いたい、分かち合えない……。どうして、人は闘うの? <Ⅴ>

           <Ⅴ>


 人には等しく静寂なる死が待っている。では、今の私は人と言えるのでしょうか? と巨大なポットに入った少女は自問自答する。その裸体には幾つもの、チューブが装着されている。装着? それは可笑しいなと少女、アカエルは嘲笑った。直接、アカエルにそれらは繋がっていて、強制的にアカエルを生きながらえさせている。

 逆らえば、苦痛が与えられる。

 逆らえば、萌え星人最後の希望である蒼空がアカエルと同じ道を歩むことになる。

「アカエル。蒼空と心君はちゃんと捕捉できているんでしょうね、お母さん的には凄く心配」

 脳から直接、声が聞こえてきた。それは今、アカエルの瞳が捉えているのとは全く、異なる映像だ。その声の主、宮御紲に言われるまでもなく、ブレインチャンネルを切り換えて、小型偵察子猫 にゃん(名前はなかったが、みみると婿さんのやり取りから命名)の脳とリンクしている。

 その結果がこの映像。

 蒼空と陽乃心は仲良く、一つの望遠鏡でサクラ市の喧騒具合を眺めていた。心は遠慮しがちで、蒼空を抱っこするのに専念している。微妙に心と蒼空に望遠鏡のサイズが合わないのだ。心が一人で眺める時は背伸びしていた。但し、上手くいかない、蒼空がよじ登ってくる。心と蒼空の様子を呆れつつ、読書(数学の参考書)に勤しむ扇。

 その繰り返しを眺めながら、アカエルは別の場所へとため息を吐く。

「はぁ、すっかり、婿さんのお母様気取りですね」

「あらら、愛があれば、なんのそのよ。で?」

「はいはい、大丈夫ですよ。わたくしの可愛い娘 陽乃蒼空ちゃんは婿さんと展望室にいます。みみる様専属ボディガードの諸刃の刃が居ますから平気ですから、わたくしが出る幕はないでしょう」

 にゃんの円らな瞳から本のページを捲る扇――有機物質感情士(ゆうきぶっしつかんじょうし) 第一位 諸刃の(もろはのやいば)を確認する。頼りになりそうだ。眼鏡をちゃんと掛けている。

「ましてや、空に待機してある第四世代のエモーショナルブレイカー フランジュベルグ、試作機 白妖精剣の出る幕はないです。大袈裟です」

 そういうアカエルだったが、蒼空に危険が及んだら、いつでもアースガーディアン小型惑星調査船 エデンが対応できるように待機させていた。無論、フランジュベルグも、白妖精剣も、唯一の王族機 エクスカリバーもその船内だ。人間の視界には脳を誤魔化す電波――ブレインウェーブを周囲十キロに仕掛けてある。ホテル アリエスを通過する一般人がふと、空を見上げてもそこには昼寝には最適と思わせる青空が広がっているだけだ。

 なんて、母の愛は偉大! と悦に入っていたアカエルに鋭いツッコミが加わる。

「白妖精剣なんて誰もまだ、起動に成功していないでしょ。対象者または対象物との心的相性百パーセントの人間か、親族遺伝を両方とも必要とする機体――」

「母の愛は無限なんです。通信終わり」

 うるさい、紲の罵声を脳内から放り出した。実際は彼女が喋り続けていればの話しだが、脳にはそれが認識として伝わっている。だが、それを聞くという選択を意図的に却下したのだ。

 にゃんの脳に語りかけ、蒼空が見える位置まで歩いてもらう。にゃんは望遠鏡の背後の手摺りに飛び乗った。

「蒼空。髪の毛の色つやはわたくしと似てますね。背の低い・・・・・・ところはあっ、クロエルお姉様に似たんですね。えへん、わたくしは背が百六十センチだぞ、蒼空ちゃん」

 と、ピースサインをしてみせる。だが、そこにあるのは自分を包む檻にも似た巨大な試験管の障壁。

 生命を維持する保温水の中を平泳ぎした。

「わたくしはこんな化け物になっても遠くから貴女を見守っています。頑張りなさい、蒼空。滅びた萌え星人の女王……」

 ゆっくりと目を瞑る。脳内の設定は情報解析モードにセットしておく。しばし、眠ろう。

「わたくしの蒼空」

 それがアカエルの子守歌だった・・・・・・。




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