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夏の失敗、ふたり分  作者: たい


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10/11

春休みのプール旅

第11話「春休みのプール旅行」を読んでいただきありがとうございます。


今回は、温泉旅行のあとに少し成長した三人を描きたくて書いた回でした。


最初の頃は、


* 「大丈夫かな」

* 「失敗したらどうしよう」

* 「隠さなきゃ」


という“不安”が強かった三人。


でも今では、


「安心して楽しめること」


を自然に優先できるようになっています。


今回のプール旅行では、


* 長時間の外出

* 温水エリア

* ジャグジー

* 帰りの電車


など、“危ない条件”がかなりそろっています。


それでも三人とも、以前みたいに強いパニックにはなっていません。


それは、


* 安心できる準備

* 分かってくれる友達

* 無理をしなくていい空気


があるからです。


特に今回は、悠斗くんがかなり自然に


「今日は安心優先」


と言えるようになっているのが大きな変化でした。


雪の日のファミレスでは、


「今日は大丈夫かな」


と不安そうだった悠斗くん。


でも今では、“安心して楽しむ”という考え方を、自分の中で受け入れ始めています。


また、帰りの電車のシーンでは、


“恥ずかしい”より、


「安心して帰れる」


という空気感を意識して書きました。


春休みの少し暖かい空気の中で、三人の関係がさらに自然になっていく様子を楽しんでもらえたら嬉しいです。

温泉旅行から数週間後。


春休み。


奈々のスマホへ、一件のLINEが届いた。


『夏まで待てなかった』


送り主は悠斗。


そのあと、もう一通。


『室内プール行きたい』


奈々は思わず吹き出した。


「早すぎるでしょ。」


美咲もスマホを覗き込みながら笑う。


「温泉旅行の次がプールって極端だね。」


でも。


数十分後には、三人で予定を合わせ始めていた。



休日。


駅前。


春休みだからか、人がかなり多い。


奈々はリュックを背負いながら大きく伸びをした。


「あったかい。」


「もう春だね。」


美咲も少し薄着になっていた。


その時。


「あっ!」


悠斗が走ってくる。


今日はかなり軽装だった。


パーカーに短パン。


でも、少し大きめのスポーツバッグを持っている。


奈々はそれを見て吹き出す。


「準備いいじゃん。」


悠斗は真顔で頷いた。


「今日は長時間だから。」


温泉旅行以降、悠斗はかなり“安心優先”になっていた。


奈々は笑う。


「完全に学習してる。」


「大事だから。」


その言い方がおかしくて、美咲も笑ってしまう。



電車へ乗る。


今日は室内プール施設へ向かう予定だった。


流れるプールや温水エリアもある、大きなレジャー施設らしい。


悠斗はパンフレットを見ながら目を輝かせる。


「スライダーある!」


「子どもか。」


「楽しみなんだもん。」


奈々は苦笑いしながらスポーツドリンクを飲む。


その瞬間。


美咲がじっと見る。


「……奈々。」


「なに。」


「それ絶対あとで言うやつ。」


奈々は数秒止まったあと、吹き出した。


「もうフラグ扱いじゃん。」


悠斗も笑っていた。



一時間後。


巨大な室内プール施設へ到着する。


ガラス張りの建物。


暖かい空気。


水の音。


子どもたちの楽しそうな声。


悠斗は完全にテンションが上がっていた。


「すごっ!!」


奈々は笑う。


「元気すぎる。」


更衣室で着替えながら、美咲が小さく呟く。


「……でも、プールってちょっと緊張する。」


奈々も頷いた。


「分かる。」


温泉旅行とは違う。


水着になる場所。


長時間水の中にいる場所。


でも今回は、三人ともちゃんと“安心できる準備”を考えて来ていた。


だから前みたいな不安だけではない。


悠斗も少し照れながら笑う。


「今日はちゃんと安心優先。」


奈々は吹き出した。


「もうその台詞定番だね。」



プールエリアへ入る。


暖かい湿った空気が広がっていた。


流れるプール。


ウォータースライダー。


温水ジャグジー。


奈々は周りを見ながら笑う。


「普通に楽しい。」


悠斗はすでに落ち着きがなかった。


「あっち行こう!」


「待って待って!」


三人は流れるプールへ入る。


ゆっくり流れる水。


暖かい室温。


旅行の時とはまた違う、“安心できる楽しさ”があった。



しばらく遊んだあと。


三人は温水ジャグジーへ座って休憩していた。


ぽこぽこと泡が出ている。


奈々は大きく息を吐いた。


「……なんか温泉思い出す。」


美咲は苦笑いする。


「洗い場事件。」


悠斗は顔を赤くした。


「言わないで……。」


奈々は吹き出す。


「でも全員だったの面白すぎた。」


その時。


悠斗が急に少し静かになる。


「……っ。」


奈々が気づく。


「どうしたの?」


悠斗は少し困った顔になる。


「なんか急に近い。」


奈々は数秒止まったあと吹き出す。


「また!?」


美咲も笑ってしまう。


「ジャグジー危険なんだ。」


温かい水。


リラックス。


飲み物。


条件がかなり揃っていた。


悠斗は少し落ち着かない様子で姿勢を変える。


「……ちょっとトイレ行ってくる。」


「いってらっしゃい。」


奈々は軽く手を振った。



でも。


ジャグジーから立ち上がった瞬間だった。


温かいお湯から出たことで、一気に感覚が強くなる。


悠斗の肩がぴくっと震えた。


「……あ。」


そのまま数歩歩く。


でも、身体が思った以上に限界だった。


「あっ……。」


小さな声。


じゅわっ……。


一瞬だけ力が抜ける感覚。


悠斗はその場で固まった。


「……やば。」


顔が一気に赤くなる。


奈々と美咲もすぐ気づいた。


「悠斗くん?」


悠斗は恥ずかしそうにしながら、小さく頷く。


「……間に合わなかった。」


奈々は一瞬心配そうな顔をしたあと、小さく笑った。


「ジャグジー強すぎ。」


悠斗は顔を赤くしたまま苦笑いする。


「温かいと油断する……。」


でも今回は、前みたいなパニックではなかった。


ちゃんと準備してきている。


そして、“分かってくれる二人”もいる。


だから悠斗も、少し恥ずかしそうにしながらも落ち着けていた。


美咲は優しく言う。


「大丈夫?」


悠斗は小さく頷く。


「……うん。ちょっとびっくりしただけ。」


奈々は吹き出した。


「最近ほんと“安心優先”大事だね。」


悠斗も照れながら笑う。


「うん……。」


そのあと三人は顔を見合わせ、小さく笑った。



夕方。


たくさん遊んだ三人は、施設内のフードコートで休憩していた。


奈々はポテトを食べながら呟く。


「めっちゃ疲れた。」


「でも楽しかった。」


悠斗も満足そうだった。


その時。


奈々がふと笑う。


「なんかさ。」


「ん?」


「最近、“不安な場所”が減った気する。」


美咲も小さく頷く。


前だったら、


* 長距離移動

* 温泉

* 外出

* 混雑


そういう場所は、“不安”のほうが大きかった。


でも今は違う。


“安心できる準備”と、“分かってくれる人”がいる。


それだけで、かなり変わった。


悠斗は照れながら笑う。


「安心できる友達、いるし。」


奈々は吹き出した。


「それ気に入ってるでしょ。」


「うん。」


その返事が素直すぎて、三人はまた笑った。



帰りの電車。


プールでたくさん遊んだせいか、三人ともかなり疲れていた。


暖房の効いた車内。


静かな揺れ。


奈々は座席へ深く座りながら、大きく息を吐く。


「……もう眠い。」


「分かる。」


美咲も苦笑いする。


悠斗はスポーツバッグを抱えながら笑った。


「ぼく帰ったらすぐ寝そう。」


今日は、


* 長時間移動

* プール

* 温水エリア

* 飲み物

* 疲れ


全部が重なっていた。


だから帰りは、三人とも最初から“安心優先”。


無理して不安になるより、安心して帰れるほうを選んでいた。



その時。


奈々が小さく姿勢を変える。


「……っ。」


悠斗がすぐ察する。


「やばい?」


奈々は苦笑いした。


「プールあと危険。」


美咲も小さく笑う。


「分かる。」


電車はすぐには止まらない。


でも、三人ともそこまで焦っていなかった。


ちゃんと“安心できる”と思えているから。


奈々は小さく息を吐く。


「……使う。」


そう呟いて、座席へ少し身体を預ける。


じゅわっ……。


暖かさがゆっくり広がっていく。


奈々はほっとしたように肩の力を抜いた。


「……はぁ。」


その顔は、“恥ずかしい”より“安心した”に近かった。


悠斗は少し照れながら笑う。


「見てたら余計近くなる。」


奈々は吹き出した。


「連鎖するやつじゃん。」


その数秒後。


悠斗も小さく肩を震わせる。


「……あ。」


奈々が笑う。


「ほんとに連鎖してる。」


悠斗は顔を赤くしながら、小さく頷いた。


「ちょっとだけ……。」


じゅわぁ……。


温かさが広がる感覚。


悠斗はそのまま座席へ寄りかかり、小さく息を吐いた。


「……助かった。」


美咲はその様子を見ながら苦笑いする。


「二人とも早い。」


でも、その直後。


ぴくっ。


美咲自身も肩を震わせた。


奈々は吹き出す。


「美咲も?」


美咲は顔を少し赤くしながら笑った。


「……今日はもう無理しない。」


そのまま、そっと力を抜く。


じゅわっ……。


張っていた感覚がゆっくり消えていく。


「……っ。」


数秒後。


三人は顔を見合わせる。


そして同時に笑った。


「結局全員じゃん!」


奈々が笑いながら言う。


悠斗も恥ずかしそうに笑っていた。


「なんか最近ほんと同じタイミング多い。」


美咲は苦笑いする。


「安心すると気が抜けるのかも。」


でも、その空気はとても自然だった。


無理しない。


我慢しすぎない。


“安心して過ごせる”。


それが今の三人には、一番大事なことになっていた。


夕焼けの光が電車の窓へ差し込む。


揺れる車内の中で、三人は小さく笑い合っていた。

第11話「春休みのプール旅行」完全版を最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。


今回はシリーズの中でも、


「安心感が“特別”ではなく、“当たり前”になってきた」


という変化を大切にした回でした。


最初の頃の三人は、


* 不安を隠そうとしていた

* 一人で抱え込んでいた

* “失敗しないこと”を最優先にしていた


そんな空気が強かったと思います。


でも今は違います。


今回のプール旅行では、


* 「今日は長時間だから」

* 「今日は安心優先」

* 「もう無理しない」


という言葉が、とても自然に出てきています。


これは、“弱くなった”のではなく、


「安心して過ごす方法を知った」


という成長として描いています。


特にジャグジーのシーンでは、悠斗くんが間に合わなかったあとも、必要以上にパニックにならず、


* 奈々が笑ってくれたり

* 美咲が落ち着いて声をかけたり


することで、“恥ずかしさ”より“安心感”のほうが大きくなっています。


そして帰りの電車では、三人とも最初から“安心優先”。


無理をせず、


「安心して帰れる」


ことを選んでいます。


そこにはもう、


“隠さなきゃいけないこと”


という空気はほとんどありません。


また今回、


「安心できる友達」


という言葉が、シリーズの中でかなり大きな意味を持つようになってきました。


最初は偶然出会っただけ。


でも今は、


* 一緒に出かけて

* 一緒に笑って

* 一緒に安心できる


そんな存在になっています。


このシリーズでは、“失敗”そのものより、


「安心できる場所や人があること」


をずっとテーマにしています。


だからこそ、第11話は、


“安心できる関係”がかなり自然になった回として描きました。


次はどこへ行くのか。


夏の旅行か。


プールの続きか。


また別の遠出か。


三人の“安心できる思い出”は、これからも少しずつ増えていくのかもしれません。


ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。

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