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「環境と心の問題」河野哲也 まとめ

作者:

段落1:環境問題の現状と国際協調の必要性

環境問題は次のような具体的事象として現れている。


・汚染による生態系の劣悪化

・生物種の減少

・資源の枯渇

・廃棄物の累積


これらは、自然の回復力と維持力を超えた人間の自然資源搾取が原因である。

環境問題の改善には、国家間のイデオロギー対立や国益の衝突を超えて、国際的な政治合意を形成して対処していく必要がある。


段落2:自然観・世界観の再検討の必要性

環境問題の解決は、単なる政策調整だけでなく、より深いレベルでの価値観や思想の見直しを迫る。搾取的な態度の背後には近代科学の自然観があると考えられるからだ。ただし、自然の搾取は近代科学だけのせいではなく、人間社会のトータルな活動の結果でもある。


段落3:近代科学がもたらした自然利用の推進力の二重性

近代科学は

技術テクノロジーを発展させ、人間の欲求を追求するための効率的な手段と道具を提供した

②近代科学の自然観そのものの中に、生態系の維持と保護に相反する発想を内包していた

この二重の推進力が、自然を利用し続ける土壌を作り上げてきた。


段落4:近代科学の起源とその基盤

ガリレオ・デカルトからニュートンへと至る17世紀の近代科学は、現代科学の土台である。

これにより、中世までとは違う、新たな自然観が確立された。


段落5:①機械論的自然観

中世までの「目的や意志を持つ自然」という精神性を剥奪し、

自然は、定められた法則どおりに動くだけの死せる機械とみなす機械論的な自然観が登場した。


段落6:②原子論的還元主義

自然を構成するものは

微小な粒子(原子)と外から課される(影響を与える)自然法則からできており、原子と法則だけが自然の真の姿と考えられるようになった。


「原子論」

物質は分割不可能な原子によって成り立っており、物質の性質や現象などはその原子の活動によって説明されるとする説。

「還元主義」

多様で複雑な事象や概念を、分割不可能な単一の基本的要素によって説明しようとする立場。


段落7:③物心二元論の成立

身体器官によって捉えられる知覚世界(色・味・匂いなど)は主観の産物であり、自然に実在するのは感覚を超えた原子以下の微粒子だけだとする説。自然の感性的な性格は、主体(人間)の心や脳が生み出した性質に過ぎないとする。


「物心二元論」

デカルトが提唱。物体と精神はそれぞれ異質な実体として存在するという説。心身二元論。


段落8:物理学的世界と知覚世界

真に実在するのは物理学的世界であり、人間的な意味に欠けた無情の世界。

知覚世界は心や脳の中に生じたイメージや表象に過ぎない。


段落9:客観世界と主観表象の断絶

物理学が記述する自然の客観的な真の姿と、人間の主観的表象とは、異質のもの。


段落10:二元論的認識論(物心二元論)の浸透と弊害

感性によって捉えられる自然の意味・価値は主体(人間)が付与するという考えは、次のような対を生む。

物理 vs 心理  自然 vs 人間  野生 vs 文化  事実 vs 規範


「認識論」

真理に到達する人間の様子を考察する哲学。


段落11:自然の個性喪失と分析的利用

二元論的な自然観では、何の個性もない粒子が反復的に法則に従うだけの存在となり、場所と歴史の個性・特殊性は失われる。


段落12:無制限の利用への心理的ハードルの消失が生んだ環境問題

自然の意味や価値は人間が与えたものにすぎないならば、徹底的な利用を躊躇しないという態度が積み重なり、現在の環境問題を生み出した。


段落13:人間観への波及…原子論的人間観

近代科学的な自然観は、人間観にも反映された。伝統的共同体から解放された個人は、原子のように孤立し、規則に従う存在として捉えられる。これが個人の自由や人権概念を支えた。


段落14:均質化された個人のアイデンティティ喪失

自由な個人は同時にアイデンティティを失った根無し草となりやすい。区別できない均質な個人(「負荷なき個人」)を前提とする政治理論は、具体的な歴史性や文化的アイデンティティを排除する。


段落15:マイノリティ排除の構造

標準的な「誰でもない個人」を想定することで、

女性、少数民族、同性愛者、障害者、少数派宗教信者

などのニーズやアイデンティティは周辺化され、制度的に排除される危険がある。


「マイノリティ」…少数派。

「周辺化」…中心から離れた存在として扱われ、わきに追いやられること。


段落16:自然観と人間観の同型性

環境問題を引き起こす近代科学の自然観と、社会的排除をもたらす原子論的個人観は同じ構造を持ち並行している(並行して進んでいる)。


段落17:生態系の無視と破壊

分解的自然観によって見えなくなるのは、生物の共存を前提とした生態系そのものだ。自然を単なるエネルギー源としか見なさない論理は、自然破壊を招く。


段落18:分解的自然観の実際の自然の無視

分解的自然観は生態系の無視につながる。


段落19:生態系の全体論的意義と二元論の悲劇

生態系は無機・有機が循環的に相互作用し、長い時間をかけて個性を育む全体論的存在である。二元論的自然観はこの個性や歴史性、場所性を見逃し、人間も動物も住めない場所を生むという悲劇的帰結をもたらした。


「全体論」

全体は、単なる部分の集合ではなく独自のものを持ち、全体を部分や要素に還元できないとする考え方。

これに対し近代科学は、自然現象をできるだけ分割・分析することを方法としてきた。

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