異世界メイドさんと実家に帰ろうと思います
今日、仕事を辞めた
さすがに自分の体や精神に異常が出始めそうだったからだ
「今まで、本当にありがとうございました!!」
「そんな、こちらこそだよ、お疲れ様!」
「むしろ今までよく・・・、これからが心配だけど・・・ちゃんと休んで!」
そんな感じの良い雰囲気の送別会を終え、俺は帰宅していた
別にブラック企業ではない、給料は良いし働いた分は返ってくる
だが社長がなんでもかんでも仕事を取ってきて、それを同僚や上司となんとか仕事をこなして来た
逆に考えれば、25歳にしていろんな経験を積ませてもらって幸運!そう考えるとしよう
そんなこんなでほろ酔い状態で自宅に帰ってきたわけだが、やはり俺は精神に異常が出ていたのかもしれない
なんかドアを開けたら目の前にメイドさん(?)が倒れている
え?なんで?部屋間違えました?いや、カギ合ったよね??
混乱しながらも部屋を見るとやっぱり俺の部屋だった
俺はなんか知らない間にサービス頼んじゃったのか?ってか頼んだにしても倒れてるのおかしくね??
とか考えてる間にメイドさん(?)が目を覚ました
「う・・・うぅん・・?ここは・・・ここはどこでしょうか・・・?」
「いや、俺の部屋だよ!!」
勢いでノリつっこみみたいな発言をしてしまった
「えっ!どなたですか!?」
「こっちが聞きたいわ!どなたですか!?」
強盗だったらどうしよう、と警戒していたが突拍子もない発言に返事をしてしまった
「・・・あ、えっと・・・、怪しい者ではありません・・・」
「・・・怪しいの自覚してるよね・・・?」
割と話せるタイプの怪しい人かもしれない
えへへ、と困ったように笑う彼女を見るに、危害を加えるためにここに来たようではないようだった
「えーと・・・、ここ俺の部屋だから入るね・・・」
「はい!お帰りなさいませご主人様!」
何故か急に立ち上がった彼女に、滅茶苦茶綺麗なお辞儀をされた
「うむ、ただいま!」
酔っていたせいか、もはや勢いで返事をしていた
「はいっ!おかえりなさい!」
何故か彼女は滅茶苦茶嬉しそうに返事をしていた
え?俺まじでなんかサービス頼んでた??
「えーー・・・っと、ちょっとそこに座ってくれる?」
話はできそうなので、家に唯一あるテーブルの対面に座ってもらう事にした
「はい、ご主人様!」
そう言って素直に座ってくれたのだが、俺はご主人様じゃない
だが、彼女をまともに見てみると好みのどストライクすぎる、正直ひとめぼれだ
金髪碧眼、低身長、胸は大きくないが体付きはしっかりしていて髪も長い・・・
俺は無意識の間に何かしらのサービスと契約していたのでは?と疑ってしまう
ともあれ、さすがに勝手に部屋に入っていた相手だ、慎重にいかねば
「えと、君はどこの会社からきたのかな?」
「会社・・・ですか?」
「会社がわからないなら、今言える身分証明全部教えてもらえる?」
「はい!アザリア王国第一騎士団の給仕部隊メイド見習いのアイテシアです!」
おーけー、わかった、わからない事が
「そういう設定かー・・・」
「設定・・・?わからないですけど、ご主人様、お疲れのようなのでアンチドートをかけますね!」
そう言うと、彼女はブツブツと何かを唱え、その後うっすらと光った
やばい、さっきまで飲酒による頭痛とか眠気とかがあったが全部吹き飛んだが、逆に混乱してしまった
だが自分が知らない間に頼んだとはいえ、サービスの人を困らせるわけにはいかない
「アイテシアさん、ありがとうね。今日はもう満足したから帰っていいよ!」
そう言って財布の中にあった4枚ほどの紙幣を渡した、多分大丈夫だろう・・・だよね?
滅茶苦茶不安だったので彼女を見ると、なぜか彼女のほうが泣きそうな顔をしていて
「・・・はい!ありがとうございました!」
そう言って部屋を出て行った
なぜ彼女が泣きそうな顔だったのかをぼーっと考えていた
その後、ふと部屋を見ると見慣れないバッグがあった、多分彼女が持ってきたものだ
私物を置いて行かれると困る・・・と思い、まだ彼女が近くにいるのでは?と思い探すことにした
・・・思いのほか近くにいた、それもそうか・・・見た目からして目立つもんな・・・
金髪碧眼で低身長ながら大人のご奉仕できそうなメイドさんだもんな・・・
「君、いまから仕事?めっちゃいいね!俺もお願い、連絡どこ!?」
「あー、デュフ、イイ・・・今度・・・ね・・・?」
ナンパではないが、俺が金を握らせたせいでその道のお仕事だと完全に勘違いされている
「待て待て!この子は俺のだ!お前らが先に触るんじゃねえ!!」
なぜか俺もそんなノリで飛び出していた
「・・・あ~、なんだ飼い主さまか、ちぇっ、次はお願いしますよ~」
「デュ、ふ、ざんねん・・・」
割とあっさり引いてくれた、なんなんだ・・・
「あー・・・、えっと追い出しておいてなんだけど・・・大丈夫・・・?」
とりあえず俺はそう聞いたが、彼女はしばらく黙っていて・・・、
「・・・大丈夫じゃないです・・・。私、もうどうしていいのか・・・」
そう言いながらガチめに泣き始めてしまった・・・。俺もどうしていいかわかんねえよ・・・。
さすがに道端でガチ泣きしてるメイドを抱き寄せているわけにもいかず、部屋に連れ帰った
「落ち着いたか・・・?」
「・・・はい、先ほどはすみませんでした」
「この荷物、そんなに大事だったのか?」
俺は部屋にあったバッグの事で途方に暮れていたのだと思い聞いてみた。
「いえ、無くなったら困りますけどそこまででは・・・」
なんとも返事に困る・・・、じゃあなんなんだよ
「・・・もう泣くなとは言わないけど俺も勝手に連れ込んだ身だ、話なら聞くよ」
「いいのですか・・・?」
「もしかしたら助けられるかもしれないし、君、俺の滅茶苦茶好みどストライクだから」
そう言うと、彼女は少し照れながらも口を開いてくれた
「・・・まず初めに、ここってアザリア王国じゃないですよね・・・?」
俺は設定だと思っていたが、あまりに真剣な表情なのできちんと話す事にした
「違う、ここは日本という国だ。外国には疎いがアザリアという国は聞いた事がない」
「やっぱり・・・そうなんですね、ありがとうございます」
「やっぱりって?どういう事だ?」
そこから彼女の話が始まった。要約すると、異世界らしく王国と帝国と魔界と争っていた事。
魔界が強力で王国と帝国で同盟を組んでなんとか均衡を保っていた事。
それが崩れそうになり強力な人員(勇者)が必要となり、王国で勇者召喚なるものが行われた事。
だが勇者召喚の代償として、代償召喚が必要となり勇者と交代に別世界に異動させる人員が必要だった事。
「という事は、君は勇者と代わる形でここに来たわけだ?サービスではなく」
「はい、違います。サービス?ではなくここに来てしまったのです」
結構壮絶な体験をしてる気がするが、はにかむように笑う彼女を見て少し胸が痛む
「そっか、じゃあ君は言っちゃなんだが、無職だ!」
「む!間違いじゃないですけど、精神的にはメイド一筋です!」
「良いなそれ!実は俺も今日から無職なんだよ!でも精神的には自由業です!」
「一緒にしないでください!」
そんなこんなで一悶着あったけど、何故か異世界メイドさんと仲良くなってしまった
「それで、これからなんだけど・・・、行く当て・・・ある?」
「あると思ってないですよね・・・?」
「俺さ・・・仕事辞めたばっかりなんだよね・・・」
「それって遠まわしに出ていけって言ってます?」
「いや違くて、近いうちに実家に帰ろうと思ってて!」
「じゃあ、この家も無くなっちゃうから私の居場所も無くなるわけですね・・・」
我ながら遠まわしな言い方だなと思い、直球な言い方に直す
「・・・えっと・・・」
「歯切れが悪いですね、この先は自分でなんとかしろと言いたいんですよね?」
「・・・」
「ここまで良くしてくれたんです、恨みはしませんよ、あとはあなたの、」
「違う!結婚してくれ!」
「好きなよう・・・え?
「結婚してくれ!」
「kk急に何を!?」
「結婚してくれ」
「それは聞きましたけど!?」
「俺は君が好きだ、まだ出会って数日だけどまず見た目が好きだ、なんだその綺麗な金髪と眼、
全部ほしくなる誰にも渡したくない。それに性格も好きだ、自分も辛いはずなのに周りに配慮しちゃって、誰かが傍にいないと心配になる、誰が傍にいる?俺しかない!!結婚してくれ!!」
もはや見た目一筋だったが、この子が好みすぎて暴走した
「えっ・・・、でも・・・」
「一緒にいよう、俺の事が好きじゃないなら利用してくれて構わない、生きるためにこいつと一緒にいるだけだって」
「でも実家に帰るって・・・」
「この子は俺の嫁か婚約者です、って紹介します!」
「逃げ道塞がれてる!?」
「いや、半分冗談だけど、このまま放置はできない・・・。せめて考える時間を作る間でも実家にきてくれないか?」
「・・・わかりました・・・まだ、その、嫁は早いので・・・、婚約者でお願いします・・・」
そして俺は大事な事に気が付いた
「あの、婚約者でもいいの?」
「はい、うれs、不本意ですけど結婚してもいいですよ」
「はは、そっかー俺うれしいよ、こんなかわいい子連れて帰れて」
雑談を挟むものの、気になって仕方がない話題がある
「あーの・・・、ところでアイテシアって何歳なの・・・?」
「・・・?24歳ですよ?」
「ヴぇっ!?ほぼ同い年!?」
「・・・あー・・・。私若く見えますよね・・・」
そこから語られたのは異世界の話だった
曰く、曾祖母がエルフだった事、エルフの血がだいぶ薄まってるが人間的にはかなり若く見える事
「ごめん、実は初見で未成年だと思ってた」
「そうですね、こっちだと女子高生に混ざれそう・・・、えっご主人って変態?」
「違うから!そういう趣味ないから!」
これ、連れて帰って大丈夫かな・・・逮捕されない?