第54話 練兵場にて(その10) ー息子、父に似るー
(前話からの続き)
僕は、「届いた。。。」とつぶやいた。
そして、ホッとして、しばらく放心していた。
数十秒経っただろうか、僕に向けて「修司殿!」と罵る声が聞こえた。
その声の方向に顔を向けると、ダグ騎兵連隊長が上半身はシャツ、下半身はズボンをはいた姿のまま、僕を厳しい表情で睨みつけていた。
ダグ騎兵連隊長は僕を大声で罵った。
「修司殿!
貴殿にはドーラ分隊に対する指揮権はない!
貴殿は何の権限でドーラ分隊に指示したのか!?」
確かに僕は軍人ではない。
軍人でもない僕が、ドーラ分隊メンバに直接指示したのは間違いだった。
僕は下を向いて謝罪した。
「申し訳ありません。。。
僕には権限はありませんでした。。。」
でも、、、どうしたら良かったのだろう。。。
あのまま、翼竜ソックリの巨大生物が、ルイス少尉に襲い掛かる様子を、ただ黙って見ていればよかったのだろうか?
だが、それを問おうとする前に、ダグ騎兵連隊長は僕を罵った。
「修司殿!
貴殿の行った行為は軍の規律を乱す行為である!
今後は控えていただきたい!」
続いてダグ騎兵連隊長は、視線をドーラ分隊メンバに向け、大声で罵った。
「次に、ドーラ分隊!
貴様らは指揮権のない修司殿の指示を、どうして従ったのか!?」
次にフレッド副長、ケント准尉、ローレンス曹長を睨み、大声で罵った。
「特に、フレッド、ケント、ローレンス!
貴様らは、なぜ修司殿の指示に従い、魔法を放ったのか!?」
最後にダグ騎兵連隊長はドーラを睨み、大声で罵った。
「ドーラ中尉!
分隊の指揮命令系統は、一体どうなっておるのか!?」
ドーラは慌てて、ダグ騎兵連隊長の1m前に駆け寄り、直立し、頭を下げ、大声で返した。
「ダグ・ハミルトン騎兵連隊長閣下!
大変申し訳ありません!
私の指導不足であります!」
ドーラは頭を上げると、フレッド副長、ケント准尉、ローレンス曹長に駆け寄り、3人をグーパンチで殴った。
「私の指示なしで魔法を駆使するとは何事か!」
と叫びながら。。。
最後にドーラは僕に駆け寄り、僕をグーパンチで殴った。
そして、
「修司殿! 私の指揮命令権を侵すな!」
と叫んだ。。。
ま、母・エリーゼから何度もグーパンチで殴られているから(第1話)、慣れっこなんだけどね。。。
あ、、、
母・エリーゼが、父・普一、僕、弟、妹をグーパンチで何度も殴るのは(第1話)、こういうことね。。。
母・エリーゼも30年前は軍隊に所属して、分隊長を担っており、こんな風にグーパンチで部下を殴っていたのだろう。。。
それにしても、、、
ドーラの方が若い分、グーパンチの威力は、、、
母・エリーゼより高かったよ!
つまり、滅茶苦茶痛かった!!
ドーラは僕をグーパンチで殴った後、僕の頭を抑えた。
そして、一緒にダグ騎兵連隊長に頭を下げた。
「ダグ・ハミルトン騎兵連隊長閣下!
大変申し訳ありませんでした!」
ダグ騎兵連隊長は不機嫌そうに返した。
「今日午後、予定していたオフロードバイクの訓練は中止だ!
ドーラ分隊には、夕方まで官舎での謹慎を命ずる!」
ドーラは頭を下げながら、「は!」と返した。
ダグ騎兵連隊長は上空を見上げ、ドーラに語った。
「ルイス少尉はかなり離れた場所に降下しそうだ。
収容しに行け!」
ドーラはなおも頭を下げながら、「は!」と返した。
ダグ騎兵連隊長は、第二騎兵大隊長に顔を向けると、なおも不機嫌そうに指示した。
「第二騎兵大隊長!
練兵場に落下した巨大生物の死骸を解体した上で、
地中に埋めるように!」
第二騎兵大隊長は頭を下げ、「は!」と返した。
第二騎兵大隊長は頭を上げると、その場にいた第二騎兵大隊の100名近い隊員に大声で指示した。
「第二騎兵大隊は巨大生物の死骸の処理を行う!
まずは練兵場の倉庫に行って、道具を取りに行くぞ!
副長!
この場にいない残りの400名の隊員も動員するから、呼んでくるように!」
第二騎兵大隊の100名は直立し「は!」と叫ぶと、一斉に倉庫に走って行った。
最後に、ダグ騎兵連隊長はレオ近衛師団長に頭を下げ、大声で語った。
「近衛師団長閣下が指示されたとおり、
自分はこれから溜まった書類を処理してまいります!」
(第52話)
ダグ騎兵連隊長は頭を上げると、練兵場の官舎へ歩き出した。
ダグ騎兵連隊長のそばにいた、ウオーレン魔法兵連隊長は、ダグ騎兵連隊長が脱ぎ捨てた軍服の上着を拾い、ダグ騎兵連隊長の後を追った。
そして、ダグ騎兵連隊長の両肩に上着を掛けると、彼の左脇の下に、自分の肩を乗せて、ダグ騎兵連隊長と一緒に歩き出した。
つまり、ウオーレン魔法連隊長は、ダグ騎兵連隊長を左脇を担いで、一緒に歩き出した。
ウオーレン魔法兵連隊長はダグ騎兵連隊長を担ぎながら、ダグ騎兵連隊長に顔を向け、あきれて語り掛けた。
「カッコつけやがって。。。
身体強化魔法(第53話)の反動で、ロクに歩けないくせに。。。」
ダグ騎兵連隊長もウオーレン魔法兵連隊長に顔を向け、苦笑いを浮かべて、答えた。
「そう言うな。。。
娘(=エイミー少尉)の前でみっともない姿は見せられね~。」
レオ近衛師団長もダグ騎兵連隊長の後を追った。
そしてウオーレン魔法兵連隊長とは反対側、つまりダグ騎兵連隊長の右脇の下に、自分の肩を乗せて、ダグ騎兵連隊長と一緒に歩き出した。
そしてレオ近衛師団長もダグ騎兵連隊長を担ぎながら、ダグ騎兵連隊長に顔を向け、あきれて語り掛けた。
「だったら、、、
書類作業をさぼるなよ。。。
君の娘のエイミー少尉は、頭を抱えてあきれていたぞ。。。」
(第51話)
ダグ騎兵連隊長は正面を向き歩きながら、苦笑いを浮かべたまま答えた。
「それとこれとは別だ。」
レオ近衛師団長は正面を向き、歩きながら、苦笑いを浮かべ、ため息をついた。
ウオーレン魔法兵連隊長はダグ騎兵連隊長の左脇を担いだまま、正面を向いて語る。
「でも、ダグ。。。
修司殿の判断は(第53話)、やむを得ないぜ。。。」
ダグ騎兵連隊長は両脇を抱えられながら、正面を向いて歩き、ため息をついて答えた。
「わかっているさ。。。
でも、誰かが、、、
言わなくちゃならね~。」
レオ近衛師団長は、ダグ騎兵連隊長の右わきを担いだまま、ウオーレン魔法兵連隊長に顔を向け、苦笑いを浮かべて語る。
「ダグは、僕とクラリスを慮って、嫌な役を担ってくれたんだ。。。」
そして、レオ近衛師団長は、ダグ騎兵連隊長に顔を向け、申し訳なさそうに語った。
「ダグ、、、すまないな。。。」
ダグ騎兵連隊長は正面を向きながら、鼻先で笑った。
そしてレオ近衛師団長に顔を向けて、苦笑いを浮かべて答えた。
「レオ、、、
やっぱり、あんたが俺の上官でよかったぜ。。。」
ダグ騎兵連隊長は、レオ近衛師団長とウオーレン魔法兵連隊長に両脇を抱えられながら、官舎へ歩いて行った。
そしてその途中、ダグ騎兵連隊長は正面を向き、歩きながら、ウオーレン魔法兵連隊長に語った。
「ウオーレン、、、
修司殿が生み出した、フレッド、ケント、ローレンスの合体魔法だが、、、」
(第53話)
ウオーレン魔法兵連隊長は、ダグ騎兵連隊長の左脇を抱え、正面を向き、歩きながら、苦笑いを浮かべて答えた。
「ああ、、、
とっさに、大魔法を修司殿は生み出した。。。
3人それぞれが放った魔法はそれほどの大魔法じゃない。。。
だから、あれなら、、、
何発も打てる。。。」
ダグ騎兵連隊長はなおも歩きながら、正面を向き、右わきを抱えていたレオ近衛師団長に語り掛けた。
「なあ、レオ、、、
血は争えねーなー。。。
修司殿は普一殿にソックリだ。。。」
レオ近衛師団長は、正面を向き、歩きながら、苦笑いを浮かべて答えた。
「ああ、、、
どうやら、異世界から来る人は、、、
我々が思いもつかないことを思いつくらしい。。。」
そうして3人は官舎の中に入っていった。
ダグ騎兵連隊長が立ち去ると、エイミー少尉がタンクトップ姿のまま、力なく座り込んだ。
ドーラはエイミー少尉に近づき、優しく話しかけた。
「エイミー、、、身体強化魔法(第53話)の反動で、、、
力が入らないのか?」
エイミー少尉は力なくうなずいた。
後で聞いたんだけど、身体強化魔法にはリスクがあり、身体強化魔法が切れると体に力が入らなくなるんだって。。。
ダグ騎兵連隊長は、娘のエイミー少尉の前ではカッコつけたけど、本当は体に力が入らず、まともに歩ける状態ではなかったんだって。。。
ドーラはエイミー少尉の軍服を拾うと、タンクトップ姿のエイミー少尉の両肩に掛けた。
エイミー少尉は座り込みながら、軍服を着た。
ドーラはケイシー上等兵に顔を向けると、優しく話しかけた。
「ケイシー、、、エイミーにヒールとポーションを。。。」
ケイシー上等兵は「は!」と言うと、エイミー少尉に駆け寄り、ヒール魔法をかけ、エイミー少尉にポーションを飲ませた。
でも、、、しばらくはエイミー少尉は動けなかった。
ケイシー上等兵がエイミー少尉の治療を行っている間、ドーラはずっと上空を見て、ルイス少尉の様子を見ていた。
ルイス少尉の着地を確認すると、騎乗し、着地地点にむけて馬を走らせた。
そう、、、ルイス少尉を収容するために。。。
ドーラはルイス少尉を乗せて、帰ってきた。
ルイス少尉は下馬すると、、、
と言っても、、、
ルイス少尉はショックでまともに動ける状態ではなく、、、
身体強化魔法で動けなくなっているエイミー少尉以外の分隊メンバに、下馬を手伝ってもらい、、、
その場に座り込んだ。。。
ルイス少尉は座り込むと、、、
下を向き、、、
涙を流しながら、、、
両腕を固く結び、、、
ガタガタと震えていた。。。
口からはガチガチと歯をかむ音がした。。。
ルイス少尉が使っていたパラシュートは巨大生物に何度もつつかれたせいで、ボロボロだった。
よく持ちこたえたと思うくらい。。。
30年前の父・普一からの土産であった、パラシュートは大幅に修復するか、ゼロから新たに作り直さない限り、使い物にならないだろう。。。
否!
パラシュートのことなんか、どうでもよい!!
ルイス少尉はどんな恐怖を味わったのだろう?!
空中では逃げ場や隠れる場所はない!
そんな場所で巨大生物に襲われた恐怖は、どれだけだっただろう?!
しかも、、、
いつパラシュートが破れて、地表に叩きつけられるかもしれない、、、
そんな恐怖も味わったのだ!
そう、ルイス少尉は、その2つの恐怖の中にいたのだ!
ルイス少尉がガタガタ震えている様子は、その恐怖を物語っていた。。。
ルイス少尉の母親であるクラリス参謀総長は、ルイス少尉に近寄った。
そのルイス少尉がガタガタと震え、座り込んでいる様子を、心配そうに覗き込んだ。
そして、クラリス参謀長は、突然、僕に振り向くと、僕に駆け寄った!
彼女は大粒の涙を流し、僕に頭を下げ、叫んだ!
「修司殿!
娘(=ルイス少尉)を救ってくれてありがとう!!
あなたの判断は間違っていないの!!!」
僕は戸惑い、「え?」とつぶやいた。
(次話に続く)
次話は2026/4/1 0時に更新予定です。




