第53話 練兵場にて(その9) -初めての巨大生物-
(前話からの続き)
そんなときだった。「巨大生物だ!」との叫び声が響いた。
その叫び声の方向に、僕は顔を向けた。
そこにはヒュー少尉が、ルイス少尉のいる方向とは別の方向の上空を見上げ、指さしていた。
そのヒュー少尉が指さす方向を見ると、大きさが10m以上もある、巨大な生物が空を飛んでいた。
その生物はクリーム色の羽毛で覆われており、胴体に比べ首は長く、頭も大きかった。
しかも、頭はこぶのようなものがあり、大きなくちばしを有していた。
でも、、、あきらかに、、、鳥ではなかった。。。
その巨大生物の姿を見た時、僕は思わず、つぶやいた。
「翼竜? ケ○○ルコ○○ルス?」
そう、僕は幼いころ、恐竜図鑑をよく見ていた。
その恐竜図鑑の姿とほぼ同じものが空を飛んでいた。
ま、翼竜は恐竜とは違うが。。。。
だが、小さいころ図鑑でよく見た、翼竜ソックリの巨大生物が空を飛んでいた。
僕はその巨大生物を眺めながら、さらにつぶやいた。
「もしかして、巨大生物って、、、
そういうこと?」
その翼竜ソックリの巨大生物は、パラシュートを用いて、空中をゆっくりと降下していたルイス少尉に興味を持ったようだ。
翼竜ソックリの巨大生物は、ルイス少尉を旋回しだしたんだ。
ルイス少尉は恐怖のあまり、悲鳴で叫ぶ。
「ぎゃ~~~! こないで~~~!」
その悲鳴は無線通信機のスピーカーを通じ、その場にいた、僕を含めたドーラ分隊メンバと、レオ近衛師団長、クラリス参謀総長、ダグ騎兵連隊長、ウオーレン魔法兵連隊長、ヒラリー後方支援連隊長にも聞こえた。
僕は失礼と思ったが、クラリス参謀総長が握っていた無線通信機を奪い取ると、無線通信機に向かって叫んだ。
「ルイスさん、落ち着いてください!
良いですか!
パラシュートのコントロールラインを操作し、
その巨大生物から離れるんです!」
ルイス少尉は少し落ち着きをとりもどしたようで、「わかった」と無線通信機を通じて返した。
そして、コントロールラインを操作し、すこしでも翼竜ソックリの巨大生物から離れようとした。
だが、後で聞くと、翼竜ソックリの巨大生物は時速50kmの高速で移動可能らしく、パラシュートのコントロールラインによる操作はすぐに追いついた。
そして、ルイス少尉が装備しているパラシュートの一番上のパイロットシュートを、高速で近づき、つついた。
その光景を見た時、僕は焦った。
次は主パラシュートをつつくかもしれないからだ。
もし、主パラシュートが翼竜ソックリの巨大生物につつかれたことで、破られでもしたら、、、
ルイス少尉は地表に叩きつけられるかもしれない。。。
すこし落ち着いたルイス少尉は、パイロットシュートをつつかれたことで、再びパニックになった。
彼女はいきなり後方に移動した。
正面方向に彼女の魔法、ジェットエンジンかロケットエンジンの魔法を駆使したのは明白だった。
パニックのあまり、翼竜ソックリの巨大生物から離れたかったのだろう。
この様子を見て、僕は慌てて、無線通信機に向かって叫んだ。
「ルイスさん!
パラシュートを開いた後では、あなたの魔法を駆使しちゃダメです!
パラシュートが絡まって、地表に叩きつけられる恐れがあります!」
ルイス少尉の泣き叫ぶ声が、無線通信機のスピーカーから聞こえた。
「じゃ、どうしろって言うのよ!」
ルイス少尉の母親のクラリス参謀総長も叫んだ。
「誰か!
何とかしなさい!」
ドーラは自分がもっていた無線通信機で、ルイス少尉に優しく語り掛けた。
「ルイス、大丈夫だ。
こちらでなんとかする。
コントロールラインを操作し、
少しでも翼竜から離れるんだ。」
するとドーラは魔法兵出身のジャクソン少尉とケント准尉に顔を向け、大声で叫んだ。
「ジャクソン! ケント!
あの空飛ぶ巨大生物を迎撃せよ!」
ジャクソン少尉とケント准尉は直立し、「は!」と答えた。
しかし、困った顔でジャクソン少尉はドーラに返した。
「しかしながら、、、
高度が高すぎて、通常の魔法では届きません。」
ルイス少尉の母親である、クラリス参謀総長はジャクソン少尉とケント准尉に叫んだ。
「じゃ、大魔法を撃ちなさい!」
クラリス参謀総長の横に立っていたウオーレン魔法兵連隊長も困った顔で、クラリス参謀総長に語り掛けた。
「参謀総長閣下、、、
大魔法は魔法兵でも数発しか撃てない上に、、、
そもそも高速に移動する物体を撃つには向いていないのです。。。」
クラリス参謀総長はウオーレン魔法兵連隊長に顔を向けて叫んだ。
「いいから撃ちなさい!
これは参謀総長としての命令よ!」
ウオーレン魔法兵連隊長は困った顔のまま、ジャクソン少尉とケント准尉に向けて、黙ってうなずいた。
仕方なく、ジャクソン少尉とケント准尉の二人は、大魔法を放った。
ジャクソン少尉は雷雲を呼び、翼竜ソックリの巨大生物に向けて雷を放った。
ケント准尉は右手から大きな火炎を巨大生物に向けてはなった。
しかし、右手を構えてから、実際に魔法が放たれるまでに数秒がかかるため、それまでに翼竜ソックリの巨大生物は大きく移動してしまい、大きく外れてしまった。
その様子を見たレオ近衛師団長は、傍らにいた白い軍服を来た若い将校、たぶん副官に向けて叫んだ。
「この練兵場には第二騎兵大隊が来ているはずだ!
(第45話)
第二騎兵大隊長に事情を話し、対処を命ぜよ!」
その若い将校、つまり副官は「は!」と叫ぶと、慌ててどこかに走って行った。
ダグ騎兵連隊長も娘のエイミー少尉に叫んだ。
「エイミー少尉!
練兵場の倉庫に強弓があるはずだ!
強弓を持ってこい!」
エイミー少尉は「は!」と叫ぶと、倉庫へ走って行った。
僕はジャクソン少尉とケント准尉に近づき、頼んだ。
「ジャクソンさん、ケントさん、、、
あの巨大生物のスピードに対応できる、
魔法を試しに撃ってもらえませんか?」
二人は戸惑った表情で、右手から翼竜ソックリの巨大生物に向けて、雷魔法と火炎魔法を放った。
これは右手をかざして即放つことができるので、翼竜ソックリの巨大生物のスピードに対応できそうだった。
しかし、、、まるで届かなかった。。。
僕は『届かせるためには、、、』と考え、軽トラとワンボックスカーが駐車してある場所まで走って行った。
その間、翼竜ソックリの巨大生物は、地上の人間達は無視して、ルイス少尉の周囲の旋回を止めなかった。
そしてついに、、、高速でルイス少尉のパラシュートに近づき、主パラシュートをつついた。。。
ルイス少尉の泣き叫ぶ声が、無線通信機のスピーカーを通じて聞こえた。
「ぎゃ~~~!
こないで~~~!
誰か!
お願い!
助けて~~~!」
ドーラはそんなルイス少尉を無線通信機を通じて、懸命に励まし続けた。
「ルイス、大丈夫だ。
今、父上が第二騎兵大隊に対処を命じた。
また、騎兵連隊長閣下もルイスを助けようと動いている。
父上、騎兵連隊長閣下だけじゃない。
地上では皆、ルイスのためだけに動いている。
もう少しの辛抱だ。
気をしっかり保つんだ。
いいな?」
しばらくすると、第二騎兵大隊長とその部下100名ほどが弓矢を持って走ってきた。
第二騎兵大隊長はレオ近衛師団長とダグ騎兵連隊長の姿を確認すると、二人の1m手間で止まり、直立して言葉を発した。
「近衛師団・騎兵連隊・第二騎兵大隊、到着いたしました!
事情は分かりました!
とりあえず、弓が得意なものを100名ほど、連れてきました!」
しかし、第二騎兵大隊長も困った顔で、上空のルイス少尉と翼竜ソックリの巨大生物を見上げ、語った。
「しかし、、、
高すぎて、、、
弓矢では届かないと思います。。。」
第二騎兵大隊が到着する間、娘のルイス少尉が翼竜ソックリの巨大生物に襲われている様子をずっと見ていた、クラリス参謀総長はすっかりパニックになっていた。
彼女は涙を流しながら叫んだ。
「いいから! 撃ちなさい!」
レオ近衛師団長はクラリス参謀総長をちらりと横目で見ると、第二騎兵大隊長に向かって、黙ってうなずいた。
第二大隊長は部下約100名に向けて、大声で命じた。
「近衛師団、騎兵連隊、第二騎兵大隊、弓隊!
あの巨大生物に向けて、矢を放て!」
100名近い兵士が一斉に、上空の翼竜ソックリの巨大生物に向けて、矢を放った。
だが、、、全く届かなかった。。。
そこへエイミー少尉が2本の強弓と、2つの矢筒を持って、走って戻ってきた。
エイミー少尉はダグ騎兵連隊長に近づき、こう告げた。
「騎兵連隊長閣下、これを。」
すると、ダグ騎兵連隊長は1本の強弓と1つの矢筒を受け取った。
ダグ騎兵連隊長は1本の強弓と1つの矢筒を受け取ると、軍服の上着を脱ぎ捨て、上半身はシャツ一枚となった。
もちろん、軍服のズボンや靴は脱いでいない。
そして「フン!」と叫ぶと、ダグ騎兵連隊長の体が一回り大きくなった。
後で聞くと、ダグ騎兵連隊長も身体強化の魔法を授かっており、身体強化の魔法を駆使すると、身体が一回り大きくなるそうだ。
エイミー少尉も軍服の上着を脱ぎ捨て、上半身はタンクトップ姿になった。
ダグ騎兵連隊長と同様、「フン!」と叫ぶと、彼女も体が一回り大きくなった。
そう、彼女も身体強化の魔法を駆使したのだ。
二人とも、身体強化によって、通常では操作できない強弓を操作可とし、弓矢の射程を伸ばそうとした。
実際、この強弓は身体強化魔法を有する兵じゃないと操作不可なのだそうだ。
ダグ騎兵連隊長とエイミー少尉は、強弓と身体強化で、射程を伸ばした弓矢を、上空の翼竜ソックリの巨大生物に向けて放った。
射程距離は先ほどの第二大隊の弓矢より倍ほど伸びた。
だが、、、それでも、、、届かなかった。。。
ダグ騎兵連隊長とエイミー少尉はあきらめず、何本も矢を放ったが、翼竜ソックリの巨大生物には届かなかった。。。
僕は一台の軽トラタンクローリーを運転し、現場に戻ってきた。
そのとき、僕は『届かせるためには、、、』としか、考えていなかった。
僕は軽トラから飛び降りると、ジャクソン少尉に叫び、問うた。
「ジャクソンさん、火花でもいい!
火花だけでも、あの巨大生物に届かせることはできませんか!?」
ジャクソン少尉は戸惑いながら、首を横に振った。
僕は次にケント准尉に叫んだ。
「ケントさん!
先ほどの巨大生物のスピードに対応できる、
火の魔法を巨大生物めがけて放って!」
ケント准尉は戸惑いながら、上空の翼竜ソックリの巨大生物に向けて放った。
もちろん、まるで届かなかった。
僕はローレンス曹長に叫んだ。
「ローレンスさん!
ケントさんの後ろから、風の魔法をフルパワーで放って!」
ローレンス曹長はケント准尉の背後まで走った。
そして、風の魔法を放った。
すると、火の魔法の射程が伸びた!
だが、それでも、、、翼竜ソックリの巨大生物には届かなかった。
だが、よく見ると、風は届いているようだった。
単に、火が届かないだけの様だった。
それを見て、僕は思わず、うなずき、叫んだ。
「大丈夫! 届く!!」
そして、ケント准尉とローレンス曹長に叫んだ。
「ケントさん、ローレンスさん、
二人の魔法を、巨大生物に向けて放ち続けて!」
ケント准尉とローレンス曹長は戸惑いながら、翼竜ソックリの巨大生物に向けて、二人の合作火炎魔法を放ち続けた。
そして、軽トラタンクローリーから発電機用の燃料のアルコールの缶を取り出し、フレッド副長の傍まで走り、缶を置いた!
次に、ケント准尉とローレンス曹長が生み出した火の魔法の先端を指さし、フレッド副長に叫んだ!
「フレッドさん!
この缶の中身の液体をコップ一杯分、あの火の先端に飛ばして!」
フレッド副長は、ケント准尉とローレンス曹長が生み出した火の魔法の先端に、アルコールの液体を瞬間移動魔法で飛ばした。
すると、瞬間移動で飛ばされたアルコールはローレンス曹長の風の魔法で、翼竜ソックリの巨大生物に向かって勢いよく流れた。
しかも、火の先端に飛ばされたので、そのアルコールはすぐに着火した。
そう、さらに火の射程が延びたのだ!
そして、ついに、その火が、、、翼竜ソックリの巨大生物に届くまで射程が延びた。
だが、この時は、その火は翼竜ソックリの巨大生物を捕らえることはできなかった。
巨大生物の1mほど後方に火炎が流れただけだった。
翼竜ソックリの巨大生物は、火炎が自分のところに届くの後ろで振り返った。
そして、その生物は方向を変えようとした。
僕は再び、フレッド副長に叫んだ。
「フレッドさん!
もう一度、この缶の中身の液体をコップ一杯分、
あの火の先端に飛ばして!」
フレッド副長は再びアルコールを火炎の先端に瞬間移動させた!
そして、火炎が延びた!
翼竜ソックリの巨大生物は方向を変えようとして、少しスピードを落としていた。
そこにアルコールで射程が延びた火炎が捕らえた!
その翼竜ソックリの巨大生物は、一瞬で火に包まれ、「ギャー」という悲鳴を上げた。
そして、その巨大生物の羽毛が燃えた!
魔法の火炎が消えても、数秒間、巨大生物は火に包まれたままとなった!
数秒後、火は消えたが、巨大生物は黒焦げとなった!
ついに巨大生物は、そのまま頭から地上に落下した!
その巨大生物は僕達から数百メートル離れた場所に落下した。
地上に落下した時、「ガッシャ! ドオン!」というものすごい音が鳴り響いた。。。
黒焦げとなった巨大生物は、地上に落下した後、ピクリとも動かなくなった。。。
僕は、「届いた。。。」とつぶやいた。
そして、ホッとして、しばらく放心していた。
数十秒経っただろうか、僕に向けて「修司殿!」と罵る声が聞こえた。
その声の方向に顔を向けると、ダグ騎兵連隊長が上半身はシャツ、下半身はズボンをはいた姿のまま、僕を厳しい表情で睨みつけていた。
(次話に続く)
次話は2026/3/31 0時に更新予定です。




