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第50話 練兵場にて(その6) -ルイス少尉の執念(前半)-

(前話からの続き)

 

僕は微笑み、ルイス少尉に語り掛けた。

 

「いえ、空に飛び立つことが可能なら、方法はいくつかありますよ?」

 

 

 

ルイス少尉は戸惑い「え?」とつぶやいた。

 

 

 

 

 

僕はルイス少尉を連れて、父・晋一の土産が保管されている練兵場の倉庫(第45話)に行った。

 

あ、ドーラをはじめ、他の分隊のメンバもついてきた。

 

 

 

僕は練兵場の倉庫に入り、一つのバックパックのようなものを取り出し、ルイス少尉に微笑み手渡した。

 

「これを使うんです。」

 

 

 

ルイス少尉は戸惑いながら、そのバックパックのようなものを受け取った。

 

 

 

ルイス少尉と一緒に練兵場の倉庫に入ったドーラは戸惑いながら、僕に問うた。

 

「修司殿、なんだ、その、バックパックのようなものは?」

 

 

 

僕は微笑み、答えた。

 

「これはパラシュートと言います。」

 

 

 

ルイス少尉はなおも戸惑いながら、僕に問うた。

 

「修司殿、パラシュートって?」

 

 

 

僕は苦笑いを浮かべ、答えた。

 

「ああ、パラシュートって、

 空をゆっくりと降りることができる道具です。」

 

 

 

ルイス少尉はハッとした表情で僕に問うた。

 

「つまり、空に飛び立ったら、このパラシュートで降りればよいってこと?」

 

 

 

僕はうなずきながら答えた。

 

「ええ、授かった魔法の制御が難しく、空をゆっくりと降りられないのなら、

 道具を使って、空をゆっくりと降りればよいんです。」

 

 

 

 

 

ルイス少尉はつぶやいた。

 

「そっか。それなら授かった魔法が使える。」

 

 

 

ルイス少尉が何度も大けがを負いながらも、飛行魔法を練習し続けたのは(第49話)、彼女は授かった飛行魔法を使いこなしたかったからなのだろう。。。

 

そして、たぶん、『ドローンが軍の偵察に使える』とルイス少尉が言ったのは(第48話)、加えてルイス少尉が飛行魔法による偵察任務に詳しいのは(第48話)、彼女自身が飛行魔法を操り、偵察任務を行う自分を夢見ていたのだろう。。。

 

 

 

 

 

だが、ドーラが首をかしげて、懸念を述べた。

 

「修司殿、そのパラシュートとやらは、

 訓練無しで使いこなせるものなのか?」

 

 

 

僕は思わず、「あ!」と言って、頭を抱えた。

 

そりゃ、訓練無しで使いこなせるものではないだろう。。。

 

しかも、、、オウゴウヌ王国では当然のことながら、、、教官はいない。。。

 

そもそも、、、オウゴウヌ王国にパラシュート降下の訓練施設は、、、あるはずがない。。。

 

僕もスカイダイビングの経験はないから、、、教えることはできない。。。

 

 

 

 

 

仕方なく、、、

 

分隊メンバで話し合って、、、

 

手探りで安全を確保しつつ、、、

 

ルイス少尉にパラシュート降下訓練を行うこととなった。。。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食事が終わり、ロードバイクの運転教習を受けている(第46話)、エイミー少尉、ローレンス曹長、ベリンダ上等兵はどこかに行った。

 

あ、太陽のスペクトル解析を行っているクラレンス君も、計測機器が設置している場所へ戻っていった。

 

 

 

 

 

後方支援兵科出身のフレッド副長が救助用のマットを借り出してくれた。

 

このマットは後方支援兵科の訓練用に練兵場の別の倉庫に常に保管されていることを、フレッド副長は知っていた。

 

フレッド副長曰く、

 

「高度20mまでなら、この救助用のマットに飛び降りても安全です。」

 

 

とのことだ。

 

 

 

だが、父・晋一の土産のパラシュートの仕様書を読むと、少なくとも高度100m以上、通常は高度300m以上じゃないと効果はないとのことだった。

 

なぜなら、パラシュート自体が開く時間が必要だからだ。

 

そして、パラシュートが開いても、その効果が現れるにも時間が掛かるからだ。

 

 

 

高度20mだと、パラシュートが開ききる前に、マットに到達してしまう。

 

空気抵抗がなければ、約2秒で20m降下してしまうからだ。

 

よって、このマットを使った訓練は『極めて限定的な訓練』しかできない。

 

 

 

 

 

それでも、ルイス少尉を強い意志で訓練を行うこととなった。

 

最初にルイス少尉自身の魔法で20mの高さまで達すると、単純にマットに降下する訓練を行った。

 

高度20mからマットまで約2秒の短い間だが、その間に下向きになって両手両足を延ばす、降下中の姿勢訓練を行った。

 

まあ、要するに、高度20mからマットにダイブするのだ。

 

 

 

でもね。。。

 

ルイス少尉は魔法で20mの高さに飛んだ後、マットに降りる約2秒間、「ギャ~~~!!!」と言う大きな悲鳴を叫びながらダイブしていた。

 

 

 

マットの脇で騎乗していたドーラは苦笑いを浮かべ、マットにダイブしたばかりのルイス少尉に語り掛けた。

 

「ルイス、その悲鳴は何とかならんのか?」

 

 

 

ルイス少尉はマットの上で起き上がると、涙ながらにドーラに言った。

 

「分隊長(=ドーラ)!

 

 そんなこと仰いますけどね!

 

 たとえ、マットがあるとは言っても、

 20mの高さからダイブするのって滅茶苦茶怖いんですから!」

 

 

 

ははは。。。それもそうね。。。

 

 

 

 

 

この訓練で大変だったのはルイス少尉はもちろんだったんだけど、実はフレッド副長も大変だった。

 

この訓練は最初にルイス少尉が自分の魔法を使って、20mの高さまで飛び立つんだけどね。。。

 

ときどき、力加減や方向を間違って、マットの上空から外れたことがあったんだ。。。

 

 

 

当然、ルイス少尉の「ギャ~~~!!!」という悲鳴はとてつもなく大きかった。

 

そして、フレッド副長が慌てて自身の魔法を使て、ルイス少尉をマットの上に瞬間移動させ、安全にルイス少尉をマットの上に降ろした。

 

そう、『この訓練はフレッド副長がいたからこそできた訓練』だったんだ。

 

 

 

さっき言ったように、高度20mと言っても、降下に要する時間は約2秒しかない。

 

その2秒間で、ルイス少尉の降下地点がマットから外れていると判断し、ルイス少尉をマットの上に瞬間移動させなきゃいけない。

 

瞬時の判断が求められたフレッド副長は緊張の面持ちで、ルイス少尉の訓練に付き合っていたよ。

 

 

 

当然、魔法の力加減や方向を間違って、危うくマットから離れて落ちるところだったルイス少尉は、そんなときはマットの上でうずくまり、涙ながらに「助かった~!」とつぶやいたよ。

 

そして、フレッド副長に頭を下げ、こう言って感謝していたよ。

 

「副長(=フレッド副長)、ありがとうございました。。。」

 

 

 

フレッド副長は苦笑いを浮かべ、黙ってうなずいた。

 

 

 

フレッド副長だけでなく、ケイシー上等兵はポーションの瓶を持ってマットの脇で控えていたし、ドーラもマットの脇で騎乗していた。

 

ルイス少尉が誤って大怪我を負ったとき、衛生兵のケイシー上等兵がヒールとポーションで緊急治療を施し、ドーラがルイス少尉を乗せて、病院に連れていくためだ。

 

 

 

 

 

でも、やっぱり、一番怖い思いをしたのは、ルイス少尉だったと思う。

 

20mの高さから何度もダイブするのは怖いだろうに、涙を浮かべながら、それでもめげずに頑張っていた。

 

 

 

たぶん、彼女は、ずっと、授かった飛行魔法で空を飛びたかったのだ。。。

 

それを察したドーラをはじめ、分隊メンバは苦笑いを浮かべて、ルイス少尉の訓練に付き合っていた。

 

 

 

僕もルイス少尉の降下訓練の動画をスマホで録画し、降下後、彼女にそれを見せた。

 

ルイス少尉は動画を見ながら、手探りで改善点を模索していた。

 

先ほども言ったように、このオウゴウヌ王国ではパラシュートを用いて降下した経験者はいない。

 

 

 

それでもルイス少尉をはじめ、手探りで訓練方法を模索していた。

 

特に、ルイス少尉は熱心だった。

 

 

 

 

 

そんなルイス少尉の頑張りの結果、降下中は両手両足を広げ、降下時の姿勢が安定してきた。

 

わずかだが、降下速度が下がった気もする。。。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなときだった。

 

マットに降下したルイス少尉は、起き上がると笑顔でドーラに話しかけた。

 

「分隊長(=ドーラ)、そろそろ高度を20m以上に上げたいのですが。。。」

 

 

 

騎乗していたドーラは苦笑いを浮かべ、ルイス少尉に答えた。

 

「残念だが、ルイス、それは待て。

 

 ローレンスの手助けがいる。

  

 ローレンスのロードバイクの運転教習が終わるまで待て。」

 

 

 

ドーラは続けてルイス少尉に語り掛けた。

 

「ロードバイクの基本訓練は今日1日で終える予定だ。

 

 明日は午前中はロードバイクの訓練はなく、

 午後からの予定だ。

  

 ローレンスの手助けが可能な明日の午前に、

 高度20m以上の降下訓練を行う。」

 

 

 

だが、ルイス少尉は不服そうだ。

 

「分隊長(=ドーラ)、ローレンス曹長の風の魔法による降下速度低減は、

 自分の魔法でも代用可能だと思います。」

 

 

 

そう、高度20m以上はローレンス曹長の風の魔法で、落下中のルイス少尉に風を吹き付けることで降下速度を緩め、マットへの落下時の速度を少しでも抑えるつもりだった。

 

確かにルイス少尉の言うように、彼女自身の魔法で下向きに彼女のジェットエンジン魔法を放ち、落下時の速度を緩めることは、理論上は可能だ。

 

 

 

ドーラは困った表情で僕を見た。

 

 

 

僕はため息をつき、ドーラに語り掛けた。

 

「たぶん、『うまくいかない』と思いますが、、、

 

 それでも、ルイスさんが実際に試してみて、

 納得させる必要があると思います。。。

  

 高度は20mのまま、ルイスさんの魔法で降下速度低減が可能か、

 試してみるべきかと。。。」

 

 

 

ドーラもため息をつくと、しぶしぶ同意した。

 

「ルイス、高度は20mのまま、やってみろ。」

 

 

 

 

 

で、、、

 

高度20mのまま、、、

 

ルイス少尉の魔法で降下速度低減を試みたんだけど、、

 

やっぱり、うまくいかなかった。。。

 

 

 

と言うのもね、、、

 

ダイブしながら、右手から、彼女のジェットエンジンかロケットエンジンの魔法を出力すると、、、

 

右手の位置や向きがちょっとでもずれると、降下中の姿勢が乱れて、制御不能になるんだ。。。

 

結果としてきりもみ状態になって、マットに落下してしまうんだ。。。

 

 

 

それどころか、魔法の力加減を間違って、マットから外れた位置に落下しそうになって、フレッド副長が慌てて自身の魔法を使て、ルイス少尉をマットの上に瞬間移動させたこともあったんだ。。。

 

 

 

 

 

実はこれは予想されていたことだった。

 

この世界の魔法は右手から出力される。(第32話)

 

 

 

ルイス少尉の魔法で降下速度を低減するには、右手を正確に彼女の肉体の重心にもっていき、かつ正確に右の手のひらを真下に向けなくてはならない。

 

少しでも右手の位置や向きがずれれば、降下中の姿勢が乱れ、最終的にはきりもみ状態に陥る。

 

 

 

これだけでも簡単じゃないのに、右手が出力されるジェットエンジンかロケットエンジンのような魔法の出力調整だって必要なのだ。。。

 

 

 

それを、降下による、たった2秒の間で行う必要があるのだ。。。

 

 

 

ルイス少尉が「なんども練習しても、ゆっくり降りることさえできなかった」と語っていたが(第49話)、それには理由があるのだ。

 

彼女の魔法を右手一つから繰り出す限り、空中での制御は容易ではないのだ。

 

 

 

 

 

それでもルイス少尉はめげずに何度も練習した。

 

だが、どうしても、きりもみ状態になり、制御不能となった。

 

 

 

そんなルイス少尉を苦笑いを浮かべて、分隊メンバは見つめていた。

 

 

 

夕方になり、再びマット上にきりもみ状態で落下したルイス少尉に、ドーラは優しく語りかけた。

 

「ルイス、やはりローレンスの手助けがないと難しいようだ。

 

 今日のところはあきらめたらどうだ?

  

 もう夕方だし。。。」

 

 

 

ルイス少尉はマットの上でうずくまり、黙ってうなずいた。

 

 

 

(次話に続く)


今話で第50話になってしまいました。


この物語は主人公の修司の1年間の留学生活の物語です。


でも、留学生活を始めて、まだ2週間程度で、第50話に達してしまいました。。。


1年間の留学生活の物語を書き切った時、それはいったい、何話になるのでしょうか?


作者の私でさえ、全く予想がつきません。


(あきれた笑い)ははは。。。



皆様、本作品を今後とも応援ください。


本作品を読んでくださる皆様には御礼申し上げます。



次話は2026/3/28 0時に更新予定です。

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