第49話 練兵場にて(その5) ードーラ分隊メンバの魔法ー
(前話からの続き)
練兵場に来た初日の正午、通信機やドローンの操作訓練を休憩し、昼食を取った。
天幕を設営し、天幕の下で昼食を取った。
あ、太陽のスペクトル解析を行っていたクラレンス君や、オフロードバイクの運転教習を受けていたエイミー少尉、ローレンス曹長、ベリンダ上等兵も加わり、ドーラさん分隊メンバ全員で昼食を取った。
で、、、その昼食は兵糧食だった。。。
だが、しかし、、、はっきり言って、、、あまりおいしいものではなかった。。。
ちなみに、夕食は練兵場の官舎の食堂で取った。。。
まあ、多少ましなレベルだった。。。
更にちなみに、、、平日の夕食は王城の官舎の食堂で取るのだが、ここはソコソコだ。
フレッド副長曰く、
「王城の官舎の食堂は、
王城常駐要員向けの食堂で軍人だけが使うわけじゃありません。
(第29話)
ですから、練兵場の官舎の食堂より質が良いんです。」
とのことだ。
エイミー少尉は苦笑いを浮かべて語る。
「近衛師団は1万の兵がいるけど、王城勤務者は約2500名しかいないの。。。
(第45話)
王城勤務になると食事がマシになるのがうれしいわね。。。」
他の分隊メンバも苦笑いをしてうなずいた。
ただ、そうは言っても、兵糧食に慣れていない僕とクラレンス君は、兵糧食はなるべく避けたいのが本音だ。
練兵場の昼食だけは何か工夫が必要だった。
一方、食事の際中、僕は気になったことを問うた。
「ところで、飛行魔法を扱える人は激レアとのことですが、、、
(第48話)
分隊メンバの中ではいないのですか?」
そう、『激レア』っていったいどれくらいの割合なのか、気になっていたんだ。。。
すると、分隊メンバは戸惑った様子で、一斉にルイス少尉に顔を向けた。
分隊メンバの視線に気づいたルイス少尉は慌てて答えた。
「私は飛行魔法を授かっているけど、『授かっているだけ』よ!
とても、『使い物にならない』の!」
僕は戸惑い、「へ?」とつぶやいた。
ルイス少尉は僕の戸惑いをスルーして、話を続けた。
「私だけじゃなく、せっかく魔法を授かっても、
その『授かった魔法が使い物にならない人は少なくない』の!」
ルイス少尉はさらに話を続けた。
「魔法兵に憧れる人は多いの!(第32話)
でも、授かった魔法が使い物にならなかったり、
授かった魔法に殺傷能力がなくって、
魔法兵科以外に廻される人がほとんどなの!
私の魔法も使い物にならないから、歩兵科に廻されたの!」
確かに、王城の庭で執事が小さいころ魔法兵に憧れたが、授かった魔法には殺傷能力がなく、あきらめたと言っていた。。。
(第32話)
そういう人がほとんどなのかもしれない。。。
分隊メンバ10人のうち、飛行魔法を授かっているのは、ルイス少尉ただ一人だった。。。
しかも、その授かった飛行魔法の多くが使い物にならないとなると、、、
確かに飛行魔法を扱える人は激レアなのだろう。。。
僕は他の分隊メンバに恐る恐る問うた。
「皆さんも同じなのですか?」
フレッド副長は苦笑いを浮かべて答えた。
「私も魔法兵には憧れたのですが、、、
私が授かった魔法は、2m以内の物体を500mの範囲であれば、
瞬間転移できる魔法なのです。。。」
僕は驚いた。
「え? それってすごい魔法だと思うのですが。。。」
そんなこと、元の世界じゃ、技術的に不可能だよ。うん。。。
フレッド副長は苦笑いを浮かべたまま、うなずき、話を続けた。
「でも、殺傷能力がないので、工兵や兵站向けの魔法ってことで、
後方支援兵科に廻されました。。。」
ヒュー少尉も苦笑いを浮かべて答えた。
「僕は水の魔法が得意なんですが、、、
巨大生物を殺傷するだけの威力がなくって、、、
歩兵科に廻されました。。。」
ジャクソン少尉はドヤ顔で答えた。
「私は雷の魔法が得意で、巨大生物を殺傷するだけの十分な威力もあったので、
希望通り、魔法兵科に配属されましたね。。。」
ケント准尉もドヤ顔で答えた。
「僕も火の魔法が得意で、十分な殺傷能力があると軍が認めて、
希望通り魔法兵科に配属されました!」
ローレンス曹長は、ドヤ顔のジャクソン少尉とケント准尉を横目でじろりと睨み、ため息をついて答えた。
「私は風の魔法が得意なんだけど、
巨大生物を吹き飛ばすほどの威力はなくって、、、
殺傷能力がないって軍の上層部が判断して、
騎兵科に廻されました。。。」
ドーラは微笑み、語り掛けた。
「ローレンス、そう言うな。。。
君が騎兵科に配属されたおかげで、私は大変助かっているんだから。。。」
すると、ローレンス曹長は微笑み、うなずいた。
エイミー少尉は苦笑いを浮かべて答えた。
「私の魔法は身体強化なの。。。
魔法を発動すると5分間だけ、私の身体能力が50%Upするの。。。」
え? 自分自身の身体能力が上がるって、そんな魔法もあるの?
僕の戸惑いをスルーして、エイミー少尉は両方の手のひらを空に向け、何度も顔を横に振り、話を続けた。
「でもね~。。。直接戦闘向きで魔法兵には向かないのよ。。。」
僕はさらに戸惑った。そんな戸惑いの表情を浮かべた僕に、ドーラは優しく語りかけた。
「魔法兵ってのは、距離を置いた間接攻撃が主体なんだ。
身体強化魔法が扱える兵は、直接戦闘を行う歩兵科か騎兵科に配属される。」
エイミー少尉はうなずき、話を続けた。
「だから、私は騎兵科を希望したの。
そして希望通り、騎兵科に配属されたの。。。」
そうか、ドーラの言うとおり、エイミー少尉は父親であるダグ騎兵連隊長を尊敬しているのだ。
だから、父親の後を追い、騎兵になったのだ。。。
(第46話)
ベリンダ上等兵は恥ずかしそうに答えた。
「私は冷却魔法が得意なんですけど、、、
ものすごく寒くなるだけで、モノを凍らすまでにはいかないんです。。。
だから殺傷するまでの能力はないってことで、騎兵科に廻されました。。。」
僕はふざけて小声でドーラに語り掛けた。
「残念ですね!
ベリンダさんの冷却魔法がモノを凍らせるまで強力だったら、、、
ヒラリー後方支援連隊長の言うように、
冷却魔法でアイスクリームを作れるのか試すことができたのに♪」
(第19話)
すると、ドーラは慌てて、それでも小声だったが、僕を罵った。
「バカ者! 母上(=アン女王)に叱られてしまうわ!」
ははは。。。
ケイシー上等兵も恥ずかしそうに答えた。
「私は手のひらに乗るものを、どんな形にでも圧力を加えて変形させる、
空気の魔法です。」
僕は驚いた。
「そりゃ、すごい!」
だがケイシー上等兵は苦笑いを浮かべ、両手を振ってこたえた。
「でも、殺傷能力がなく、使い道がないのです。。。」
ケイシー上等兵は苦笑いを浮かべたまま、話を続けた。
「でも、ヒールもできるので、衛生兵として後方支援兵科に廻されました。」
結局、魔法兵に憧れても、間接攻撃が不可能だったり、殺傷能力がなければ、配属されないのだ。。。
だが、僕には新たに気になることが生じた。
僕は恐る恐るルイス少尉に問うた。
「ルイスさん、
『せっかく授かった飛行魔法が使えない』
って、どういうことですか?」
そう、どう使えないのか気になったのだ。
ルイス少尉は困った表情でため息をついた。
そして彼女は黙って、二本のロープを持ってきて、二本の木にそれぞれ一本ずつ、固く結びつけた。
そしてそれぞれのロープを彼女自身の腹に固く結びつけた。
彼女は苦笑いを浮かべ、僕に語り掛けた。
「私から数メートル離れて、よく見ていて。」
僕は戸惑いながら、黙ってうなずき、彼女から数メートル離れた。
彼女は僕や分隊メンバが数メートル離れたのを見ると、正面に向けて右手をかざした。
すると、突然、僕に向かってとても強い風が吹いた!
僕は思わず、その風に押され、後ろに1mほど吹っ飛んだ!
危うく後ろに転ぶところを、僕の背中を抑える力を感じた。
振り向くと、フレッド副長とヒュー少尉が僕の背中を抑えていた。
フレッド副長は苦笑いを浮かべ、「大丈夫ですか?」と問うた。
僕も苦笑いを浮かべ、「大丈夫です。」と答えた。
僕は正面を向くと、ルイス少尉も後ろに吹っ飛ばされていた。
彼女は宙に浮かび、だが二本の木に固く結ばれたロープによって、それ以上、吹き飛ばされるのを防いでいた。
でも、ルイス少尉は腹に結び付けたロープが食い込むせいか、「うげ~!」と悲鳴をあげていたけど。。。
ドーラはルイス少尉に向かって叫んだ。
「ルイス! もうよい! 魔法を止めよ!」
ルイスは「うげ~!」と悲鳴をあげながら、うなずいた。
そして、魔法を止めたらしく、地面にぺたりと座った。
僕は唖然としながら、
「ロケットエンジンか、ジェットエンジンの魔法ってこと?」
とつぶやいた。
ルイス少尉は固く縛っていたロープを外すと、僕に近づき、苦笑いを浮かべ、右手を空に掲げ、掲げた右手を見ながら話した。
「この右手を下に向けて魔法を使うと、空を飛ぶことができるの。。。
でも、、、それだけなの。。。」
彼女は両掌を空に向け、少し悲しそうな表情で、僕に語り掛けた。
「何度も練習したの。。。
でも、魔法の力加減が難しいの。。。
同じ高度を維持できないだけでなく、、、
ゆっくり降りることもできないの。。。」
まあ、そりゃ、ジェットエンジンやロケットエンジンの垂直着陸やホバリングは、大変高度な制御技術が必要だと聞いたことがある。
ルイス少尉はコンピュータもない状態で、つまり勘だけでそんな高度な制御をしようと試みたのだ。
失敗し続けたのは無理もないだろう。。。
彼女は少し悲しそうな表情のまま、話を続けた。
「練習中、よく、大怪我をしたわ。。。
だから、母(=クラリス参謀総長)からも止められて、、、
『使えない魔法』として封印しているの。。。」
僕は指を顎に添えて考えた。
だって、
『こんなすごい魔法を活用しないなんてもったいない!』
と思ったから、、、
そして
『空を飛ぶ十分な推進装置があるのなら、それをカバーする方法はないか?』
と考えた。
カバーする方法は、すぐにいくつか思いついた。
僕はふと、練兵場の倉庫に保存してある父・晋一からの土産で、オウゴウヌ王国が扱いに困ったものを思い出した。
(第43話、第45話)
ま、そのうちの一つはオフロードバイクだったのだが(第46話)、他のものを思い出した。。。
そして、その他のものの中で、一つのものが、ルイス少尉の魔法に適用できるって気づいた。
僕はニヤリと笑った。
『ははー、あれが父・晋一からの土産にあったのは、これが理由か。。。』
僕は微笑み、ルイス少尉に語り掛けた。
「いえ、空に飛び立つことが可能なら、方法はいくつかありますよ?」
ルイス少尉は戸惑い「え?」とつぶやいた。
(次話に続く)
次話は2026/3/27 0時に更新予定です。




