第47話 練兵場にて(その3) ードーラが失ったものー
(前話からの続き)
エイミー少尉、ローレンス曹長、ベリンダ上等兵がオフロード教習を受けている間(第46話)、ドローンと無線機の操作練習をドーラの分隊メンバと行った。
あ、クラレンス君には太陽のスペクトル解析を行うため、機材の設定をお願いした。
また、夜間には近くの恒星のスペクトル解析を行うつもりだ。
そのあたりの設定もしないといけない。
話をドローンと無線機に戻すと、両方ともドーラの分隊メンバには好評だった。
特に、無線機はドーラに大好評だった。
彼女曰く、
「これまで念話でメンバに連絡していたけど、
念話って、ある種の魔法だから、、、
魔法器官を失って(第9話)、念話ができなくなっちゃったから、、、
これは助かる!
メンバへの連絡手段がなくなって困っていたところだったんだ。。。」
と、大喜びだった。
フレッド副長はあきれた表情で答えた。
「実際、分隊長(=ドーラ)の念話ってすごくって、、、
10キロ先まで届きましたもんね。。。」
ジャクソン少尉もあきれた表情で答えた。
「公休中に、首都レワヅワで買い物してたら、
いきなり念話で非常招集されたこともあったっけ。。。」
ルイス少尉はそれを思い出したのか、苦笑いを浮かべて、「ははは。。。」と笑った。
ケント准尉もあきれた表情で答えた。
「ジャクソン少尉も僕も魔法兵科にいたから、
魔力には自信があったけど、
分隊長(=ドーラ)の念話が10キロ先まで飛んできてのは、
驚きましたよ。。。
『王家の魔力ってこんなにすごいんだ~。。。』
って思いました。。。」
僕は恐る恐る問うた。
「すみません、無線機を土産で持ち込んだら、
『念話があるから必要性が分からない』
(第21話)
ってことで、突っ返されたんですが、
なぜこんなに高評価なのか分からないんですが。。。
もう一つ、ドーラさんの念話が10キロも飛んだのは、
そんなにすごいことなんですか?」
ヒュー少尉が苦笑いを浮かべて答えた。
「念話魔法ができる人は多いのですが、
それでも全員ができるわけではないのですよ。。。
かくいう、僕も念話魔法ができません。。。」
ジャクソン少尉はうなずきながら答えた。
「4人のうち1人くらいは、念話魔法ができないかな。。。
ま、僕の父(=ウオーレン魔法兵連隊長)も、できないけど。。。」
ドーラが苦笑いを浮かべて、ジャクソン少尉を窘めた。
「ジャクソン、あれは仕方がないだろ?」
え? ジャクソン少尉は父親であるウオーレン魔法兵連隊長は「魔法兵ではない」と言った。
(第30話)
そして、念話魔法もできないと言った。
加えて、ドーラは「仕方がない」と言ったのは、どういうことなんだろ?
ジャクソン少尉はドーラの言葉に苦笑いを浮かべると、僕に語り掛けた。
「話を戻すと、念話魔法が使える人でも、念話が届く距離はバラバラなんです。
通常は数百メートル、どんなに遠く飛ばせる人でも1~2kmって所です。
僕は魔法兵科出身で比較的遠くに念話を飛ばせますが、
それでも1km半がせいぜいですね。」
同じ魔法兵科出身のケント准尉もうなずき、語り掛けた。
「僕も念話が届く距離は1kmが限界です。」
ケイシー上等兵は苦笑いを浮かべ、「私はせいぜい200mです。」と言った。
僕は恐る恐る問うた。
「じゃ、ドーラさんが念話を10kmも飛ばしたというのは?」
フレッド副長は苦笑いを浮かべて答えた。
「分隊長(=ドーラ)には失礼ですが、もう『バケモノ』でしたね。。。」
ドーラ以外の分隊メンバは苦笑いを浮かべながら、「ははは。。。」と笑った。
オウゴウヌ王家は一般の人の10倍以上の魔力の持ち主なのだ。
そう、王家の庭で執事が言っていた。
『通常では一度に数人しかヒール魔法を掛けることができないが、
オウゴウヌ王家は一度に数百人にヒールを掛けることができる。』
(第32話)
この話は本当だったのだ。。。
ドーラはトンデモナイ魔力の持ち主だったのだ。。。
そして、、、
『僕を日本から連れてくるためだけに』、、、
ドーラはその『貴重な力を失った』のだ。。。
(第9話)
僕は申し訳なく、、、ドーラを見つめた。。。
僕の視線に気づいたのか、僕に作り笑いを浮かべると、僕に問うた。
「修司殿、それで、この無線機とやらは、、、
どこまでの距離まで連絡可能になるのだ?」
僕は答えた。
「首都レワヅワのような街中だと1kmですが、
練兵場のような開けた場所だと数kmくらい届くそうです。」
するとジャクソン少尉は笑顔で語った。
「そりゃ、助かる!」
僕は恐る恐る問うた。
「え? ジャクソンさん、貴方は念話を1km半飛ばせるのなら、
無線機使わなくても、念話で十分じゃないんですか?」
ジャクソン少尉は笑顔で答えた。
「念話って、通話する距離を延ばせば延ばすほど、
魔力を使うんですよ。
僕の場合、通話距離を1km以上になると、
魔法器官に蓄えている魔力が直ぐに尽きてしまいます。」
そういうと、魔法器官のある右下腹部に手を添えた。
ケント准尉はうなずきながら、補足した。
「ええ、、、
魔力を使わずに、そこまでの距離で通話できるなら、
大助かりです。。。」
だが、ドーラは少し不満そうだ。
「もう少し通話距離を増やすことはできぬのか?」
僕は恐る恐る答えた。
「実は無線機は2種類持ってきていて、、、
今操作練習しているのは、個人が持ち運びできるものです。
これは50セット持ってきたから、メンバー全員に配布できます。
ただし、通話可能な距離は開けた場所でも数kmしか届きません。。。
あと一つは、10セット持ち込んでいて、、、
これは設備を整えれば数千kmまで届きますが、
とても個人が持ち運びできるものではありません。。。」
ヒュー少尉は驚き問うた。
「数千km? オウゴウヌ王国全土に届くと?」
僕はうなずき答えた。
「ええ、、、設備を整えれば、、、ですが。。。」
ヒュー少尉は興味深そうに問うた。
「設備を整えるとは?」
僕は戸惑い答えた。
「遠くまで飛ばすには、念話なら多くの魔力が必要なように、
無線機の場合は電力が必要です。
そして、大声で叫んでも遠くに行けば小さく聞こえるように、
無線機の場合は小さな変化をとらえる必要があります。
それには設備が必要なのです。。。」
実は僕はそれほど詳しいわけじゃない。
アンプとかアンテナとかも土産で持ち込んでいるが、よくわかっていない。。。
でも、もし、1年後、僕が日本に帰った後でも、無線機を使い続けてもらうには、、、
誰か、詳しい知識のある人がオウゴウヌ王国で必要だ。
ちょうど、オフロードバイクをダグ騎兵連隊長が使い続けたように。。。(第46話)
僕はふと、ドーラを見つめた。
ドーラは黙ってうなずいた。
僕は笑顔でヒュー少尉に話しかけた。
「ヒューさん、もし興味があるなら、一緒に勉強して、
数千kmの無線設備を作ってみませんか?」
ヒュー少尉は戸惑いの表情を浮かべた。
「え? 私は何の知識もありませんが。。。」
僕は笑顔のままで答えた。
「大丈夫、専門書も土産として持ち込んでいます。」
ドーラも笑顔で続いた。
「その専門書は王立オウゴウヌ大学に寄贈されている。
(第30話、第41話)
軍を通じて、ヒューにも閲覧できるよう、大学に取り計らう。
どうだ?」
ヒュー少尉は戸惑いながら、黙ってうなずいた。
ドーラは分隊メンバを見渡し、語り掛けた。
「ヒュー以外でも、大学図書館で書物が読みたい者がいれば、
名乗り出てくれ。
週の半分はここ練兵場に来るが、残りの半分は大学に行くんだ。
修司殿の警護の傍ら、
大学で書物を読んで、自らの知識を高めたらどうだ?」
ドーラは不意に苦笑いを浮かべ、両手を延ばし、分隊メンバに語り掛けた。
「実際、我が妹、シャーロットは2年前に大学を卒業したが、
在学中は近衛師団の1分隊が妹を警護した。
その分隊は妹・シャーロットと共に授業を聴講していたのだが、、、
分隊メンバの一人が聴講していた分野に興味を持って、
軍を休職し、大学に通っているからな。。。」
あ、オウゴウヌ王国軍には、国内留学制度があって、希望者は軍を休職して、大学に通学することができる。
そのときは奨学金も出るそうだ。
すると、早速、ケイシー上等兵が手を挙げた。
「分隊長(=ドーラ)、私もお願いします。」
分隊メンバの中で一番年下のケイシー上等兵に押され、他のメンバも手を挙げた。
ドーラは微笑み、分隊メンバに語り掛けた。
「よし! 分隊メンバ全員に大学図書館での閲覧を願い出よう。」
そういうと、ドーラはフレッド副長を見た。
フレッド副長は微笑み、黙ってうなずいた。
すると、ルイス少尉はニヤリと笑い、分隊メンバに語り掛けた。
「無線機は首都レワヅワでは1kmまでしか届かないわ♪
つまり、公休中は王城から1km圏外に出れば、
非常招集掛からないわ♪」
他の分隊メンバもニヤリと笑い、黙ってうなずいた。
ドーラは慌てて分隊メンバを罵った。
「お、お前ら~~~!!!」
(あきれた笑い)ははは。。。
あ、ドローンについては次話で。。。
(次話に続く)
次話は2026/3/25 0時に更新予定です。




