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第45話 練兵場にて(その1) ー娘、父を罵るー

(前話からの続き)

 

 

 

首都レワヅワから練兵場まで約50kmの距離を2時間半で到着した。(第44話)

 

 

 

僕からすれば、約50kmの距離を2時間半も掛かったのは不満なのだが、、、

 

それでも、ドーラの分隊メンバは一様に驚いていた。

 

 

 

ドーラは、唖然として、こう言った。

 

「まあ、車だから、早く着くとは思っていたが、、、

 

 ここまでとは。。。」

 

 

 

僕は戸惑いながら問うた。

 

「あの、、、これまで、練兵場まで、どれくらい時間が掛ったんですか?」

 

 

 

フレッド副長が苦笑いを浮かべて、代りに答えた。

 

「馬車や騎乗して、首都レワヅワと練兵場までは丸一日の距離ですね。。。

 

 その4分の1の時間で着いたのは驚きです。。。」

 

 

 

ジャクソン少尉も苦笑いを浮かべて続いた。

 

「でも、僕とルイスとケントとケイシーは騎乗できないから、、、

 

 馬車を確保できなければ、徒歩で移動しないといけないから、、、

  

 装備を背負って50kmも移動するのは大変で、、、

  

 2日掛ったこともあります。。。」

 

 

 

ルイス少尉、ケント准尉、ケイシー上等兵は苦笑いを浮かべて、うなずいた。

 

 

 

ドーラはため息をつき、ジャクソン少尉、ルイス少尉、ケント准尉、ケイシー上等兵を横目でちらりと見て、苦笑いを浮かべて語った。

 

「だから、、、

 ドーラ分隊は騎兵連隊隷下のくせに、移動が遅すぎると、、、

 何度も騎兵連隊の上層部から小言を言われた。。。」

 

 

 

エイミー少尉は笑顔で語る。

 

「でも、これでこの分隊は、

 王国軍において随一の展開力を手にしましたね。。。」

 

 

 

ドーラをはじめ、分隊メンバは一応にうなずいた。

 

 

 

 

 

ただ、第44話で述べたとおり、2時間半、安全を確保するため、警護を一人で行ったケイシー上等兵の表情には疲労が見えた。

 

早急な改善が必要だった。

 

 

 

え? どうして早急な改善が必要かだって?

 

実は、アルバート教育次官が来月から2か月ごとに、5日間連続で1年間の天文台の計測時間を確保してくれたんだ。(第42話)

 

 

 

で、、、この天文台は、クラレンス君によると、首都レワヅワから約200km離れた、人里離れた小高い山の頂上にあるそうなんだ。。。

 

つまり、練兵場までの距離の4倍の距離にあるから、とてもケイシー上等兵一人の警護じゃ無理ってわけ。。。

 

 

 

ちなみに、クラレンス君によると、天文台への移動は大変らしい。。。

 

「馬車でも急行便を頼んだとしても、麓の町に2日かかりますね。。。

 

 ま、僕らに急行便を頼むお金はないので、普通の馬車での移動です。

  

 普通の馬車なら麓の町まで4日かかります。。。

  

 麓の町から天文台のある小高い山の頂上まで、さらに馬車で半日です。。。

  

 つまり、4泊5日の旅になります。。」

 

 

 

それを聞いたドーラは困った表情でつぶやいた。

 

「馬車だと、修司殿の計測5日間を含めて、往復15日間となるな。。。」

 

 

 

僕はドーラに尋ねた。

 

「何か問題でも?」

 

 

 

ドーラは困った表情で答えた。

 

「我は問題ないが、

 分隊メンバを、演習でもない限り、連続15日間の勤務はまずい。。。

  

 特別な許可が必要だ。」

 

 

 

僕はクラレンス君に尋ねた。

 

「天文台には警護とかはないの?」

 

 

 

するとクラレンス君が答えた。

 

「天文台について否定的な人々もいて、

 ときどき抗議活動に来ます。

  

 また、約200年前の戦争の折、

 オウゴウヌ大学キャンパス内だけでなく、

 多くの国内の天文台が破壊された歴史があります。

 (第43話)

  

 よって、再度の破壊活動を恐れて、

 天文台の敷地内は、地元の警察が24時間警戒しています。」

 

 

 

僕はドーラに顔を向けて語った。

 

「僕が天文台にいる限りは、安全は確保できます。

 

 その間、ドーラさんの分隊には休暇を与えてはいかがでしょう?」

 

 

 

フレッド副長はうなずき、ドーラに語り掛けた。

 

「それがよろしいかと思います。

 

 修司殿が計測されている5日間は、

 分隊メンバには順次分散して、2日間の公休を与えましょう。」

 

 

 

ドーラはしかめっ面になり、フレッド副長に問うた。

 

「残りの3日間はどうする?」

 

 

 

フレッド副長は苦笑いを浮かべ、両手を広げ答えた。

 

「地元の警察に対して、警戒活動のお手伝いをするしかないかと。。。

 

 5日間、近衛兵が何もせず、天文台の敷地あるいは周囲でボーとしているのは、

 地元の警察の反発を招きかねませんし。。。

  

 あ、、、それから、、、

 事前に、近衛師団司令部から地元警察に警戒活動のお手伝いをしたい旨を

 伝えておいた方がよろしいかと。。。」

 

 

 

ドーラはため息をつき、黙ってうなずいた。

 

 

 

 

 

気を取り直して、僕はクラレンス君に問うた。

 

「天文台までは道は舗装されているの?」

 

 

 

クラレンス君は頷き答えた。

 

「ええ、、、首都レワヅワから麓の町まで舗装されています。

 

 また、麓の町から天文台までも舗装されています。」

 

 

 

僕は興奮してクラレンス君に問うた。

 

「じゃ、、、首都レワヅワから天文台まで、車で移動可能?」

 

 

 

クラレンス君は黙ってうなずいた。

 

 

 

僕はドーラとフレッド副長に話しかけた。

 

「じゃあ、車で天文台まで行きましょう。

 

 練兵場まで約50kmを2時間半でしたから、

 天文台まで約200kmなら10時間で着きます。

  

 ま、途中で休憩することと、

 麓の町から天文台までは山道であることを考慮しても、

 朝日が昇る前に首都レワヅワを出発すれば、

 日暮れちょっと過ぎには天文台に到着します。

  

 それなら、往復でも7日間ですから、分隊メンバのシフト調整も楽ですよね?」

 

 

 

ドーラはあきれて答えた。

 

「理屈の上ではそうなんだが。。。

 

 だが、警護をどうする?

  

 スクーター1台では、ケイシー1人では10時間はとても無理だぞ。。。」

 

 

 

フレッド副長は真剣な表情でドーラに語った。

 

「分隊長(=ドーラ)のおっしゃる通りですが、、、

 

 それでもこの分隊の展開力を活かし、

 車を使って、1日で到達する術を考えるべきだと思います。。。」

 

 

 

僕とドーラとフレッド副長は腕を組んで「うーん」とつぶやいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなとき、大きな声が響いた。

 

「あれ!? ドーラ分隊はもう練兵場に着いたのか!?

 

 いつものごとく、早くても夕方か、

 酷ければ明日の夕方までかかると思ったのに。。。」

  

  

  

声の方向に振り向くと、そこにはダグ騎兵連隊長が立っていた。

 

 

 

僕とドーラとフレッド副長の脇に立っていた、ダグ騎兵連隊長の長女であるエイミー少尉は、あきれてダグ騎兵連隊長に語り掛けた。

 

「父さん(=ダグ騎兵連隊長)、、、

 また、さぼってきたの?」

 

 

 

ダグ騎兵連隊長はエイミー少尉をキッと睨み、答えた。

 

「エイミー少尉、『軍では私を騎兵連隊長と呼べ』と言ったはずだ。

 

 それから、『さぼってきた』とは何だ?

  

 騎兵連隊隷下の第二騎兵大隊の訓練が、ここ練兵場で行われているから、

 その視察に来ただけだ。」

 

 

 

エイミー少尉はあきれた表情で返した。

 

「騎兵連隊長閣下、

 それを口実に書類作業から、また逃げてこられたのですか?」

 

 

 

ダグ騎兵連隊長は面倒くさそうに答えた。

 

「私の副官は優秀だから大丈夫だ。」

 

 

 

するとエイミー少尉は父親である、ダグ騎兵連隊長を罵った。

 

「騎兵連隊長閣下、

 そのたびにその副官から嫌味を言われる身にもなっていただきたい!」

 

 

 

 

 

ダグ騎兵連隊長の話を補足すると、実は近衛師団は兵員約1万の精鋭なんだけど、全兵員が首都レワヅワの王城に駐屯しているわけじゃない。

 

王城に駐屯しているのは、4分の1の約2500名なんだ。残りの約7500名は首都レワヅワ近郊に分散配備されている。


王城に駐屯している約2500名の内訳は、騎兵約500名、歩兵約1000名、魔法兵約1000名、後方支援兵約500名だ。

 

 

 

ところで、近衛師団約1万の兵員のうち、騎兵は連隊1個で約2000名が所属しており、騎兵連隊は4個大隊から構成される。

 

実は王城に駐屯しているのは、そのうちの1個大隊の約500名で、ドーラの分隊はその大隊隷下だ。

 

 

 

残りの3個大隊は、先述したように、首都レワヅワ近郊に分散配備されている。

第二騎兵大隊は首都レワヅワ近郊に配備されていた部隊と言うわけ。

 

そして、ダグ騎兵連隊長は、首都レワヅワ近郊に配備されていた第二騎兵大隊の訓練を視察しに、わざわざ練兵場に来ていたというわけ。。。

 

 

 

 

 

だが、これは娘であるエイミー少尉によると、『単なる口実』らしい。

 

彼女はときどき愚痴ってた。。。。

 

「父さん(=ダグ騎兵連隊長)は書類作業が苦手でね。。。

 

 時々、口実を見つけては、副官に書類作業を押し付けて、

 自分はどっかに行っちゃうの。。。

  

 そのたびに、副官から嫌味を言われる、

 こっちの身にもなれっつ~の。。。」

 

 

 

ははは。。。

 

エイミー少尉が父親(=ダグ騎兵連隊長)を嫌っている理由はこれか。。。

(第30話)

 

 

 

 

 

 

娘(=エイミー少尉)に見透かされたダグ騎兵連隊長は、多分ごまかしたかったのだろう。

 

彼は引きつった笑顔で、あわてて僕に語り掛けた。

 

「修司殿、ヒラリー(=後方支援連隊長)から手紙を受け取った。

 (第43話)

 

 晋一殿の土産で扱いに困ったものを、

 もう一度、適用方法を調査してくれるんだって?

  

 ヒラリーから手紙によると練兵場の倉庫に保管してあるっていうから、

 私が案内しよう。」

 

 

 

そう言うと、ダグ騎兵連隊長は右手を指し、歩き出した。

 

 

 

エイミー少尉の「ち! ごまかしやがった!」と言うつぶやきが聞こえたが、それをスルーして、僕はダグ騎兵連隊長の後をついて行った。

 

 

 

 

 

ダグ騎兵連隊長はある倉庫の前で足を止めると、倉庫の扉を開いた。

 

そして僕に笑顔で語りかけた。

 

「これが晋一殿からの土産で扱いに困っているものだ。」

 

 

 

僕は恐る恐る倉庫に入り、土産を見渡した。

 

そしてある物が目に飛び込んできた。

 

おもわず「ははは!」と笑ってしまった。

 

 

 

そうか!

 

父・晋一の土産を30年前に考えたのは、祖父・賢治や祖母・マーガレットだろう。

 

だって、父・普一も30年前は、僕と同様、オウゴウヌ王国の実情は知らなかったはずだ。

 

祖父・賢治と祖母・マーガレットが、30年前、父・普一にオウゴウヌ王国へ土産を持たせたはずだ。

 

 

 

そして、、、

 

祖父・賢治と祖母・マーガレットがこれを土産として思いつかない筈がなかった!

 

 

 

僕はなおも「ははは!」と笑いながら、ドーラに振り返り、語り掛けた。

 

「ドーラさん、これで車で天文台まで行けます!」

 

 

 

(次話に続く)


次話は2026/3/23 0時に更新予定です。


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