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第44話 練兵場へ(その2) ー問題山積ー

(前話からの続き)

 

 

 

ヒラリー後方支援連隊長の個室を辞した僕とドーラは、分隊メンバと共に、王立オウゴウヌ大学へ向かった。

 

オウゴウヌ大学に着くと、僕はカドワダドル教授の個室を訪れた。

 

僕は練兵場の入場許可証を見せ、カドワダドル教授に笑顔で語った。

 

「近衛兵の好意で、練兵場での天体観測を許可を得ました。

 

 こうして僕とクラレンス君の1年間限定の入場許可証をもらってきました。

  

 明日から、練兵場で天体観測したいのですが、よろしいでしょうか?」

 

 

 

カドワダドル教授は驚いた表情で入場許可証を見ると、あきれた表情で僕に語った。

 

「(ため息)は~。。。仕方がない。。。

 

 クラレンス君には、

   

  『修司殿は王室が招いた留学生で、

   警護の近衛兵の好意で練兵場で天体観測の許可を得たから、

   同行するように』

  

 と私が伝えておく。。。」

 

 

 

そう言うと、カドワダドル教授は個室を出ると、研究室に行き、研究室にいたクラレンス君に話しかけた。

 

クラレンス君はあっけにとられ、僕を見つめ、黙ってうなずいた。

 

 

 

研究室にいた、他の学生さん達も、あっけにとられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

練兵場での天体観測の許可は得たが、、、僕の研究活動の支障が解決したわけではなかった。。。

 

 

 

話はヒラリー後方支援連隊長の個室を出た後に戻る。

 

僕とドーラは他の分隊メンバとは軍の倉庫で待ち合わせ、明日以降、練兵場で天体観測することを伝えた。

 

 

 

 

 

すると、ローレンス曹長が懸念を述べた。

 

「練兵場はとても広大で、首都レワヅワの近郊にあります。。。

 

 でも、、、」

 

 

 

僕は戸惑い、「でも?」と問うた。

 

 

 

ローレンス曹長はため息をついて、答えた。

 

「練兵場は近郊にあると言っても、

 首都レワヅワから約50km離れた場所にあります。。。」

 

 

 

ローレンス曹長は続けて語った。

 

「それほどの距離ですと、、、馬は駆歩(かけあし)で移動できません。。。

 

 常歩(なみあし)で何とか移動できる距離です。。。」

 

 

 

ああ、駆歩(かけあし)は20~30km/hの速度だ。

 

でも、馬が駆歩(かけあし)を維持できるのは、30分ほどだ。

 

ちなみに馬はもっと速く走ることができるが、その速度を維持できる時間はもっと短い。

 

 

 

王城と大学の行き来は僕の乗った車の前後を馬の警備がついている。(第41話)

 

王城と大学までの距離は10km弱なため、馬は駆歩(かけあし)を維持できる。

 

日本で車の運転に慣れた僕としては、馬の駆歩(かけあし)の20~30km/hでさえ、遅いと感じる。

 

ただ、王城と大学は約30分の距離なので、我慢できる。

 

 

 

 

 

一方、練兵場までは約50kmの距離がある。

 

自動車本来の能力からすれば1時間ほどで到達できる。

 

 

 

一方、常歩(なみあし)は5~6km/hの速度だ。

 

馬では10時間程度かかる。

 

 

 

車で5~6km/hの速度で10時間も走るのは、、、

 

日本で車の運転に慣れた僕としては、結構ツライものがある。。。

 

 

 

 

 

すると、エイミー少尉がローレンス曹長に語り掛けた。

 

「となると、、、

 

 練兵場の行き来については、、、

  

 『馬の警護はなし』にせざるを得ないわ。。。」

 

 

 

ローレンス曹長は戸惑い、「え?」とつぶやいた。

 

 

 

エイミー少尉は苦笑いを浮かべ、ドーラに語り掛けた。

 

「だって、練兵場には電気が通っていませんから、

 修司殿の土産の発電機を練兵場に持ち込む必要があります。

  

 となると、練兵場の行き来には軽トラが必須です。

  

 しかも、発電機だけでなく、

 望遠鏡等の計測機器だって運び込まなくちゃいけません。

  

 やっぱり、軽トラは必須です。

  

 修司殿のワンボックスカーと、軽トラ数台で練兵場に行く必要があります。

  

 軽トラを常歩(なみあし)並みの速度で走らせるのは、

 軽トラが何台もこの分隊に配備された意味が無くなります。

  

 この分隊はオウゴウヌ王国軍随一の展開力を有するのですから。。。」

 (第30話)

 

 

 

 

 

ドーラは腕を組み、空を見上げ、「うーん」とつぶやいた。

 

 

 

僕は恐る恐るドーラに問うた。

 

「オウゴウヌ王国には制限速度等の速度に関する規制はあるのですか?」

 

 

 

するとドーラの代わりにヒュー少尉が答えた。

 

「いえ、そういうものはありません。

 

 だから、高速で走ることは可能です。

  

 可能ですが、、、」

 

 

 

僕は戸惑いながら「ですが?」と問うた。

 

 

 

ドーラがため息をついて答えた。

 

「安全をどう確保するかが問題だな。。。

 

 修司殿の安全だけでなく、住民の安全も確保せねばならん。。。

 

 王城と大学の間は2頭の馬の警護で、

 修司殿と住民の安全を確保している。。。

  

 だが、練兵場に行くとなると、馬の警護はダメだ。。。」

 

 

 

そう、僕が大学に行くとき、フレッド副長とローレンス曹長が騎乗し、僕が運転するワンボックスカーを警護してくれる。(第41話)

 

それは僕に対する警護もあるが、住民との無用な事故を防ぐためでもある。

 

なにせ、オウゴウヌ王国にはまだ100台位しか自動車はない。

 

だから、道路に信号機ってないんだ。。。

 

 

 

いつも、フレッド副長かローレンス曹長が僕の運転するワンボックスカーの周囲を見張り、住民と車がぶつかりそうな時、間に入ってくれる。そうして、無用な事故を防いでくれている。

 

 

 

だが、練兵場に行くとなると、そうした事故を防ぐ手段はない。

 

 

 

 

 

ドーラは腕を組み、空を見上げ、つぶやいた。

 

「、、、となると、、、馬以外に小回りが利いて、

 自動車に追随可能な速度が出るもので、安全を確保しないといけないが、、、

  

 そうすると、、、」

 

 

 

僕はドーラに語り掛けた。

 

「ドーラさんの分隊に1台、スクーターが配備されましたよね?

 (第30話)


 それでどうでしょう?」

 

 

 

ドーラはあきれて答える。

 

「いつもは馬2頭で安全を確保しているのだぞ?

 

 スクーター1台で足りると思うか?」

 

 

 

僕はため息をついて答えた。

 

「そうですね。。。

 

 たぶん、足りないと思いますが、、、

  

 でも、試してみませんか?

  

 他に方法がありませんし。。。」

  

  

  

ドーラもため息をついて答えた。

 

「そうだな。。。他に方法がない。。。」

 

 

 

そしてドーラはケイシー上等兵に顔を向けて、語り掛けた。

 

「そう言うことで、ケイシー。

  

 スクーターの担当はお前になっている。

  

 明日、練兵場に向かうが、我ら一行の警護をスクーターに乗って行ってくれ。」

 

 

 

ケイシー上等兵は戸惑いながら、うなずいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝、クラレンス君を連れて、練兵場へ向かった。

 

実はクラレンス君の下宿まで迎えに行った。

 

数台の軽トラと1台のワンボックスカーで迎えに行ったら、まだ自動車が珍しいのか、多くの民衆が集まった。

 

クラレンス君は僕が運転するワンボックスカーの後部座席に乗ると、恥ずかしそうに運転席の僕に語った。

 

「今度からは、大学に迎えに来てください。

 

 (下宿の)近所の人が、『何事か?』と思いますので。。。」

 

 

 

ははは。。。ゴメン、ゴメン。。。

 

 

 

 

 

さて、練兵場への道は、まあ街道なんだけど、自動車でも通りやすいように片側一車線の舗装道路だった。

 

ドーラに訊くと、主要道路は全て片側一車線の舗装道路なんだそうだ。

 

オウゴウヌ王国には国中でわずか100台位しか自動車はないが、それでも将来の自動車が普及した未来を考えて、先代女王のブリジッド陛下、そして現在の女王のアン陛下が主要道路を整備したらしい。

 

 

 

首都レワヅワを出て、郊外に出ると、街道にはほとんど人はいなかった。

 

だから、最速で40km/hくらいで走ったかな。

 

クラレンス君の下宿から、練兵場まで約2時間半かかった。

 

 

 

え? どうして練兵場まで約50kmで、最速40km/hで2時間半も掛かったかって?

 

まあ、、、、馬車が道の真ん中を走ってふさいでいたり、、、放牧されている家畜の群れが道路の上にいたりで、、、車を止めることが多かったから。。。

 

 

 

その都度、分隊メンバが手分けして、馬車を誘導して道を空けてもらったり、、、

家畜を道の外に連れ出したりしたんだけど。。。

 

 

 

 

 

やっぱり、スクーター1台で一行を警護したケイシー上等兵は大変だった。

 

郊外に出るとそうでもないんだけど、街道なんでね。。。

 

 

 

首都レワヅワとか、練兵場までの途中で町や村を通るから、そういった人通りのあるところは、住民と事故を起こさないように、周囲に気を配らなくちゃいけないから。。。

 

練兵場までの2時間半は緊張の連続で、、、練兵場に着いたときは、本当に疲れた表情だったよ。。。

 

 

 

申し訳ないことしたな。。。

 

 

 

 

 

あと、スクーターだと能力不足であることも分かった。

 

ほら! 家畜の群れが道路の上にいるときは、分隊メンバが何頭かを道の外に連れ出すんだけど、道の外に連れ出しても、すぐ戻ってきてしまうんだ。。。

 

だから、ある程度、道から離す必要があるんだけど、不整地を走る機能に限界のあるスクーターでは無理なんだ。

 

僕もドーラも分隊メンバも走り回って、家畜を道から引き離す必要があった。

 

 

 

まあ、日本から持ち込んだ軽トラもワンボックスカーも4WDだから、不整地を全く走れないわけじゃないけど、不整地を走ることを前提にした車じゃないし、、、そもそも精密機器とか燃料とか積んでいるし、、、特にワンボックスカーは小回りが利かない。。。

 

 

 

話を戻すと、スクーター並みに小回りが利いて、自動車に追随可能な速度が出て、なおかつ不整地走行可能なものが数台欲しいってことが判った。

 

でも、そのとき、僕は「しまった」と頭を抱えた。

 

 

 

だって、それを日本から持ってこなかったから。。。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも、首都レワヅワから練兵場への移動はそれなりに楽しかったよ。

 

だって、オウゴウヌ王国に来てからず~っと、王城の中にいるか、大学に通うかの毎日だったから。。。

 

首都レワヅワを出て、田園風景を見ながら、車を運転すると、なんだかホッとしたんだ。

 

助手席に座っていたドーラが微笑み僕に語り掛けた。

 

「修司殿、楽しそうじゃないか?」

 

 

 

僕も運転しながら、微笑み、答えた。

 

「ええ、なんだかホッとしました。

 

 慣れないオウゴウヌ王国での生活で、緊張していたんでしょうね。。。」

 

 

 

ドーラは「ははは」と笑った。

 

 

 

実際、道路にいた家畜の群れを道路の外に出すときに、ドーラ分隊メンバと一緒に走り回ったけど、あれは結構楽しかった。。。

 

ははは。。。

 

 

 

 

 

そんな運転をして、首都レワヅワを出て数キロの地点だったと思う。

 

道を走っていると、一人の老婆が重そうな荷物を背負い、道の端を一人トボトボと歩いていた。

 

 

 

僕達一行は彼女に気を付けて、車速を落とし、10km/h位で彼女の横を通り抜けた。

 

ドーラは僕に語り掛けた。

 

「修司殿、車を止めてくれるか?」

 

 

 

そして、ドーラは窓ガラスを開けると、左手を掲げ、分隊メンバが分乗している軽トラ数台を止めた。僕も車を止めた。

 

 

 

ドーラは車が止まったことを確認すると、車から降り、小走りで老婆のもとに行き、問うた。

 

「ご老人、そんなに荷物を背負って、どこに行かれるのか?」

 

 

 

老婆は申し訳なさそうに答えた。

 

「ビウへレー村まで。。。」

 

 

 

ドーラはあきれて老婆に語り掛けた。

 

「あと約10km先ではないか!

 

 失礼だが、ご老人の足では、あと3時間は掛るぞ!

  

 なぜ、馬車を利用しない?」

 

 

 

老婆はなおも申し訳なさそうに答えた。

 

「貧しいうえに、昨年、夫を亡くし、馬車を利用するお金がないのです。。。

 

 私達夫婦には子供がおらず、頼る相手もいません。。。」

 

 

 

するとドーラはため息をつき、老婆に笑顔で語りかけた。

 

「では、ご老人、車に乗らないか?

 

 我らは首都レワヅワから練兵場に向かう途中で、

 ビウへレー村は通過予定だ。

  

 ビウへレー村まで送ろう。」

 

 

 

そう言って、半ば強引に老婆から荷物を奪うと、老婆の手を引き、老婆と荷物をワンボックスカーの後部座席に乗せた。

 

あ、後部座席にはクラレンス君も座っており、そのクラレンス君の横に老婆が座った。

 

 

 

 

 

ドーラは助手席に飛び乗ると、窓ガラスを開け、左手を振り、分隊メンバが分乗している軽トラ数台に発車を促した。

 

そして、僕に語り掛けた。

 

「修司殿、車を進めてくれ。」

 

 

 

僕は何気なく、「わかりました。ドーラさん。」と答えた。

 

 

 

その僕の言葉を聞いた後部座席の老婆は、戸惑いながら問うた。

 

「ドーラ? もしかして、第一王女のドーラ殿下ですか?

 

 確か、現在は軍に所属しておられたはずですし。。。」

 

 

 

すると、ドーラは苦笑いを浮かべ、後部座席に振り返り、「そうだ。」と答えた。

 

 

 

 

 

老婆の横に座っていたクラレンス君が慌てて問うた。

 

「そういえば、カドワダドル教授が、

  『修司殿は王室が招いた留学生だから、

   近衛兵が警護してる』

 と言ってました。

  

 まさか王家直々に、つまりドーラ殿下が直々に、

 修司さんを警護していると?」

 

 

 

どうも、クラレンス君はドーラは、第一王女とたまたま同じ名前の軍人だと思っていたらしい。。。

 

ははは。。。

 

 

 

ドーラは笑って答えた。

 

「ははは。。。

 

 まあ、そういうことだ。」

 

 

 

 

 

老婆は慌てた様子でドーラに語った。

 

「どうか、私を車から降ろしてください!

 

 私は王家と同席できるような身分ではございません!」

 

 

 

すると、ドーラは微笑み、老婆に語った。

 

「よいのじゃ。。。

 

 もし、そなたを今降ろせば、我はずっとそなたを心配せねばならん。

  

 我のために村まで同乗してもらえまいか?」

 

 

 

老婆は戸惑いながら、黙ってうなずいた。

 

 

 

 

 

僕達一行は老婆を乗せて、ビウへレー村まで行き、そこで彼女を下した。


大体15分くらい、同乗していたと思う。

 

彼女は車から降りると、荷物を背負ったまま、再び車を走らせた僕達に、いつまでも、何度も、頭を下げていた。

 

ドーラは窓ガラスを開けると、彼女に無言で手を振っていた。 

 



(次話に続く)

次話は2026/3/22 0時に更新予定です。


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