第42話 始動(その2) ーこの世界の足枷ー
(前話からのつづき)
そう言うと、バチャール学長はルーク医学部教授、パスカル農学部教授、カドワダドル理学部教授に語り掛けた。
「いいか、修司殿の正体がバレないよう、接し方には注意するんだ。」
ルーク医学部教授、パスカル農学部教授、カドワダドル理学部教授は黙ってうなずいた。
アルバート次官は僕に顔を向け、僕に話しかけた。
「さて、修司殿、
私の方から、この国の科学政策の現状について説明したいと存じます。」
僕は戸惑い、「え?」とつぶやいた。
アルバート次官は僕の戸惑いをスルーして、話を続けた。
「科学政策を進める上で、この国には3つの課題があります。」
そう言うと、アルバート次官は右人差し指を立て、話を続けた。
「まず、我が国、オウゴウヌ王国は大陸諸国と戦争状態にあります。
(第27話)
よって、国防に力を注がざるを得ず、そもそも余力がありません。
それでも、なんとか、
産業発展や社会インフラの整備を細々と行っている状態です。
そんな状態なので、科学政策にそもそも予算を掛けられません。」
僕は思わずうなずいた。そりゃ、しょうがないだろう。
アルバート次官は僕のうなずきを見ると、更に右中指を立て、つまり右指を2本立て、話を続けた。
「次に、日本を始め、異世界の科学は『魔法を使わない学問』です。
でも、魔法を駆使することで特権的地位を得ている上位貴族層にとって、
異世界の科学の発展は、自らの地位を脅かしかねないものです。」
(第36話)
僕はうなずいた。これは執事から聞かされたことだったから。。。
アルバート次官は、更に右薬指を立て、つまり右指を3本立て、話を続けた。
「加えて、異世界の科学をガエリア教皇国が異端視しています。
(第27話)
貴族だけでなく、平民層でも熱心な信徒がいて、
異世界の科学を追求する研究者や学生を攻撃しているのです。
この大学でもそんな立て看板が立ってますし。。。」
(第41話)
僕は思わず、ため息をついた。
この世界で科学を研究したり、学ぶのは大変なのだ。。。
アルバート次官は悲しげな表情で顔を横に振ると、僕に語り掛けた。
「この三つのことで、上位貴族達は科学予算を削るよう、
毎年、元老院で圧力を加えている状態なのですよ。。。」
ドーラも少し悲しげな表情で僕に語り掛けた。
「実学の工学・農学・医学・薬学は母上(=アン女王)も、
上位貴族達を説得しやすいのだが、、、
基礎の理学は難しい。。。
よって、我が国の基礎分野の研究環境は、
日本よりだいぶ劣るやもしれぬ。。。」
僕は再びため息をついた。
日本でも基礎分野は予算はなかなか厳しい。
でも、オウゴウヌ王国は、もっと厳しいのだ。。。
カドワダドル理学部教授は苦笑いを浮かべ、僕に語り掛けた。
「修司殿、これでも、我が国の理学分野は、
アシエシア大陸諸国と比べてマシなのですよ。」
僕は戸惑い、「え?」とつぶやいた。
バチャール学長も苦笑いを浮かべ、僕に語り掛けた。
「ガエリヤ教皇が異世界の知識や技術を禁じているので、
アシエシア大陸諸国には理数系の専攻がある大学はないのです。。。
こうして、理数系の学部があるのは、
アシエシア大陸諸国の中で、オウゴウヌ王国の大学だけなのです。。。」
僕は天井を見上げ、ため息をついた。
そして思った。
『大変な所へ来ちゃったな~』
って。。。
ルーク医学部教授は苦笑いを浮かべ、僕に語り掛けた。
「でも、修司殿が持ち込んだ計測機器のおかげで、
医学分野は私とヒラリーで行います。
任せてください。」
ルーク医学部教授はすまし顔で語る。
「片っ端から、血液中のある成分の濃度を調べるだけです。
ま、ちゃんとデータは整理します。
そして、ある成分が不足していたり、過剰になっているときの症状は、
普一殿の手紙に記載されてましたので、特に注意して、整理します。」
僕はルーク医学部教授に黙ってうなずいた。
ついで、ルーク医学部教授は、パスカル農学部教授に顔を向け、話しかけた。
「オウゴウヌ王国での食物のある成分の濃度については、
パスカル先生、よろしくお願いします。」
パスカル農学部教授は黙ってうなずいた。
僕はパスカル農学部教授に語り掛けた。
「パスカル先生、よろしくお願いします。
父・普一も、僕も、日本の食物と比べ、
ある成分の濃度はオウゴウヌ王国の食物はかなり低いと予想しています。
その予想通りなのか、確認いただきたいのです。
そのための計測機器は準備しており、これから先生の研究室に運び込みます。」
パスカル農学部教授は微笑み答えた。
「心得た。」
ルーク医学部教授は僕とパスカル農学部教授に語り掛けた。
「どうでしょう。
医学分野と農学分野については、1ヶ月に1度、
途中経過を合同報告会を開くと言うことにしませんか?
場所は、修司殿の安全を考えて、王城のヒラリー殿の個室で行うと言うのは?」
僕は答えた。
「もちろん、問題ありません。」
パスカル農学部教授も答えた。
「そうしよう。」
こうして、医学分野と農学分野は、ルーク医学部教授、ヒラリー後方支援連隊長、パスカル農学部教授に任せることになった。
僕はカドワダドル理学部教授に話しかけた。
「理学分野に関しては、僕自身が大学に通って、
カドワダドル先生の研究室の学生さんと共に実施したいのですが、
よろしいでしょうか?
必要な計測機器は準備しています。」
カドワダドル教授は戸惑いながら僕に問うた。
「別に構わないが、どんな研究を行うつもりかね?」
僕は答えた。
「まずは太陽と近くの恒星のスペクトル解析、
そして重力定数の計測と、球状星団の観測です。」
カドワダドル教授は腕を組んで、天井を見上げ、答えた。
「うーん、、、このキャンパスには天文台がないんだ。。。
一部はこのキャンパスで可能だけど、、、
残りは王立天文台での観測が必要だな。。。
結構、大変だな。。。」
アルバート次官はカドワダドル教授に問うた。
「大変とは?」
カドワダドル教授は苦笑いを浮かべ答えた。
「王立天文台の望遠鏡は人気が高くってね。。。
予約がいっぱいなんだ。。。」
アルバート次官は僕に問うた。
「望遠鏡が必要な計測は、どれだけ必要でしょうか?」
僕は戸惑いながら答えた。
「とりあえず、少なくとも、
2か月間隔で連続5日間で1年間使いたいです。」
アルバート次官はため息をついて、僕に語り掛けた。
「はー、、、私が調整します。。。」
その後、アルバート次官は教育省に戻った。
あ、ベリンダ上等兵が、軽トラの荷物を下ろした後、アルバート次官を乗せて、教育省に連れて行った。
ベリンダ上等兵はアルバート次官を教育省に連れてゆくと、1時間くらいで大学に戻ってきた。
僕とドーラ分隊は、まず農学部のパスカル教授の研究室に、計測機器を持ち込んだ。
持ち込んだ物は以下のとおりである。
・食物のある成分を計測する機器、1台
・ノートパソコン、1台
・デスクトップパソコン、1台
・プリンタ、1台
・無線LANポート、1台
・NAS、1台
パソコン等はデータを解析するためのもので、メインはもちろん、『食物のある成分を計測する機器』である。
『食物のある成分を計測する機器』は精密機器で較正作業がいるので、ただ机の上に設置するだけで、まずはパソコンの接続を行った。
大体1時間くらいの作業であった。
次に、僕とドーラ分隊は理学部のカドワダドル教授の研究室に、計測機器を持ち込んだ。
持ち込んだ物は以下のとおりである。
・重力定数Gを計測する機器、1台
・太陽や恒星のスペクトル解析する機器、1台
・デスクトップパソコン、1台
・プリンタ、1台
・無線LANポート、1台
・NAS、1台
やっぱり、パソコン等はデータを解析するためのもので、メインはもちろん、『重力定数Gを計測する機器』と『太陽や恒星のスペクトル解析する機器』である。
『重力定数Gを計測する機器』は結構大きく、カドワダドル教授に相談し、急遽、理学部で使われていない部屋を用意してもらい、そこに設置した。
『太陽や恒星のスペクトル解析する機器』は望遠鏡に設置する必要があり、研究室の倉庫に置いた。
ということで、パソコンの接続がこの日はメインであった。
やっぱり、大体1時間くらいの作業であった。
日本で調整済だし(第4話)、王城である程度確認済だが(第31話)、農学部のパスカル教授の研究室に持ち込んだ『食物のある成分を計測する機器』も、理学部のカドワダドル教授の研究室に持ち込んだ『重力定数Gを計測する機器』も最終調整というか、較正が必要だ。
それは僕が両方の研究室に通いながら行うことになった。
そして、やっぱり、軍立病院や大学附属病院のように(第33話)、スタッフ全員がパソコンを初めて扱うため、1週間ほど、両研究室メンバに対するパソコンセミナーを行った。
つまり、計測機器の較正を行いながら、パソコンセミナーを行い、こうして、僕の留学生活が本格スタートした。
次話は2026/3/20 0時に更新予定です。




