第34話 この国の貴族について(その1) ー貴族制度成立経緯ー
ドーラが運転教習合宿(第30話)に行って5日後、無事、帰ってきた。
ここから僕の留学生活が本格化するのだが、、、
正確に言うと、本格化するのは、その数日後だった。。。。
ドーラが帰ってきた夜、僕は宮殿の僕の部屋にいた。
宰相秘書と外相秘書と財務相秘書と軍事相秘書と王室秘書のパソコンセミナー(第33話)を終え、その日の日記を執務室の机に置いたノートパソコンに打ち込んでいた。
ドアからノックの音がすると、ドーラが白い軍服を着たまま、微笑み、僕の部屋に入ってきた。
僕は微笑み、椅子に座ったまま、ドーラに声をかけた。
「ドーラさん、お帰りなさい。
どうでした? 5日間の運転教習合宿は?」
ドーラは執務室のソファーに座り、苦笑いを浮かべ、答えた。
「いや~、、、大変だった。。。
早朝から深夜まで詰め込みでな。。。」
僕はノートパソコンを畳むと、立ち上がり、ドーラの座ったソファーと対面するソファーにまで歩き、座った。
ドーラは僕に笑顔で語った。
「現在、我を含め、分隊メンバは官舎で待機任務中だ。
特別に許可を得て、今ここに来た。
ま、明日から、正確には明日、午前0時から2日間の公休に入るのでな。。。
数時間早いが、我だけ、先に公休に入った。」
僕は戸惑い、「はあ」と答えた。
ドーラは笑顔で僕に語った。
「さきほど、我宛に手紙があり、手紙を読むと、
政府と王立オウゴウヌ大学との調整が終わったそうだ。」
僕は笑顔で「え! それじゃあ。。。」とつぶやいた。
ドーラは笑顔のまま、僕に語り掛けた。
「ああ、我が分隊の公休明けは3日後だが、
その3日後から、修司殿は大学に通うことになった。」
やった! これで、この留学生活が本格化する!
だが、ドーラは苦笑いを浮かべ、僕に語り掛けた。
「さて、我が修司殿の部屋に来たのは、
もう一つ伝えなくてはならないことがあるからだ。。。」
僕は再び戸惑い、「え?」とつぶやいた。
ドーラは苦笑いを浮かべたまま、話を進めた。
「明日から2日間、我には第一王女として公務がある。
そこで明日の夜、月に一度の上位貴族との晩餐会があるのだ。。。」
僕は戸惑いながら、再び「はあ?」とつぶやいた。
ドーラは僕の戸惑いをスルーして話を進めた。
「で、修司殿にも、その晩餐会に参加してほしいのだ。
我の許婿として修司殿を上位貴族に紹介せねばならぬ。」
いやー、、、困ったね。。。
テーブルマナーとか、ドレスコードとか、どうしたら良いの。。。
途方に暮れたよ。。。まったく。。。
翌朝、朝食の後だった。
ああ、久しぶりに朝食には、アン女王、レオ近衛師団長、ドーラ、シャーロット第二王女、オリビア第三王女と一緒に食事したよ。
朝食を除いて、この5日間、昼食と夕食は僕一人で食事していたから。。。(第33話)
でも、レオ近衛師団長って、とっても陽気だね。
食事の最中、妻のアン女王や、娘3人(=ドーラ、シャーロット第二王女、オリビア第三王女)に話しかけ、時に彼女達を笑わせる。
そして、僕にも語り掛けてくれる。彼の性格のおかげで、割と早く、王家になじむことができた。
さて、その朝食後、ドアにノックの音がすると、執事が僕の部屋に入ってきた。
執事は微笑み、僕に語り掛けた。
「本日はいくつか用事があり、修司様の部屋にお邪魔しました。
まず一つ目の用事から、、、
先日、採寸した衣服(第23話)が出来上がりましたので、持ってまいりました。」
そう言うと、執事はドアを開けた。
すると、彼の後輩である執事数名が僕の部屋に入り、出来上がった新しい衣服数点を、礼服や背広やシャツやネクタイをクローゼットにかけた。
クローゼットに掛けられた衣服を見て、触ってみた。
もちろん、オウゴウヌ王国王室御用達の店から取り寄せたものだ。
この国では最高級なのだろう。
僕は実際のところ、服の良し悪しがわかるわけではない。
そんな僕でも良いものだってわかる。
クローゼットに衣服を掛けると、執事の後輩達は退室した。
そして、残った執事は微笑み、クローゼットに掛けられた、黒い礼服を指さした。
「修司様、本日の晩餐会はこれを着てくださいませ。」
どうも、晩餐会は黒い礼服を着るのがマナーらしい。
僕は黙ってうなずいた。
執事は僕に顔を向けると、微笑み語った。
「もう一つの用は、晩餐会のテーブルマナーについてです。
でも、これは後回しにしましょう。」
執事は右手をソファーに向け、僕にソファーに座るように促した。
僕はソファーに座り、執事は対面のソファーに座った。
そして執事は微笑み語り掛けた。
「最大の用は、今回の晩餐会に招かれる貴族について、
簡単に説明したいと思います。」
確かに貴族についての基礎知識はないと、どんなミスを犯すかわからない。
僕はうなずいた。
僕のうなずきを確認すると、執事は貴族の成り立ちから説明を始めた。
「以前お話ししたとおり、
神話によれば、2000年ほど前、巨大生物に対抗するため、
人類は創造神ガエリア様から魔法を授かりました。
(第26話)
そして、変換される魔法も、魔法の出力も個人でバラバラです。
(第32話)
つまり、実際のところ、、、
巨大生物に対抗できる魔法を駆使できる人は少ないのです。。。」
一度、執事は平民レベルでは大きな魔法は駆使できないと言っていた。(第32話)
たぶん、多くの人は、巨大生物に対抗できる魔法を駆使できないのだろう。
僕は黙ってうなずいた。
執事は少し悲しげな表情になると、顔を横に振り、話を続けた。
「ですから、巨大生物が出現すると、
その対抗できる魔法を駆使できる人に頼むしかないのですよ。。。
でも、その人は、巨大生物との戦闘の結果、
ケガをしたり、最悪、命を失ったりします。
しかも、そんな魔法は出力の大きなものが必要ですから、
魔法器官を痛めやすく、やっぱり、最悪、命を失ったりします。(第32話)」
そう、巨大生物に対抗できる魔法を駆使できる人は大変だ。
命がけで、巨大生物と戦わなければならない。
しかも、、、巨体生物に対抗できる魔法を駆使すること自体、、、命がけなのだ。
執事は苦笑いを浮かべ、話を続けた。
「でも、多くの人は、巨大生物に対抗できる魔法を駆使できません。
一方、巨大生物に対抗できる魔法を駆使できる人は、
戦いの中で多くのけが人や、ときには死者を出しました。
そして、魔法そのものの危険性からも、死者を出すこともあります。
そんな巨大生物に対抗できる魔法を駆使できる人の献身の姿を見て、
多くの人は、巨大生物に対抗できる魔法を駆使できる人を尊敬しました。
結果的に、巨大生物に対抗できる魔法を駆使できる人は、
人々の信頼と支持を集めてゆきました。
これが、貴族の出発点です。
そして、これはわが国だけでなく、
アシエシア大陸諸国、共通のようです。。。」
まあ、それもそうだろう。
僕は日本から来たから、魔法を駆使できない。
そんな中で巨大生物に襲われたら、対抗できる魔法を駆使できる人に頼らざるを得ない。
一方で、対抗できる魔法を駆使できる人が、傷つきながらも、必死に戦う姿を見たら、、、
僕でも『済まない』と思う気持ちと、そんな対抗できる魔法を駆使して、必死に戦う人を尊敬するだろう。。。
執事はすまし顔になり、話を続けた。
「この前話したように、貴族でも全ての魔法を駆使できません。
そして人々の駆使できる魔法はバラバラです。
(第32話)
そこで、貴族を中心に、人々は自分のできる魔法を持ち寄り、
地域に社会を形成し始めました。。。
(第32話)
これが、貴族領の始まりです。。。」
執事はため息をつき、話を続けた。
「しかし、、、貴族領が発展するにつれて、、、
隣接する貴族領の住民同士の利害相反が起きることがあり、、、
貴族領同士の争いも生じることもありました。。。」
僕は一瞬、「え?」とつぶやいたが、すぐに飲み込んだ。
そりゃ、人々が住んでいれば、ときに争いになることだってあるだろう。。。
執事は僕から視線を逸らすと、話を続けた。
「貴族領同士の争いになり、多くの場合、
より強大な魔法を持つ貴族が、別の貴族を従えるようになりました。。。
これが貴族の格式に繋がりました。
現在、わが国の貴族は、公爵・伯爵・子爵・男爵・准男爵と階層がございます。
一般に、上位貴族になればなるほど、強大な魔法を有しています。。。」
執事は僕に視線を戻すと、話を続けた。
「貴族同士の争いと、合従連衡を経て、
最終的に、アシエシア大陸の南にある山脈を北の国境線として、
オウゴウヌ王家が貴族達の盟主として統一、オウゴウヌ王国が成立しました。
これが約1500年前のことです。」
僕は慌てて問うた。
「ちょっと待ってください。
たしか、ガエリヤ教の教皇が統べる国、
『ガエリア教皇国』も同じ約1500年前に成立したと聞きましたが。。。」
(第27話)
執事は苦笑いを浮かべ、うなずき、答えた。
「ええ、その通り。
ま、アシエシア大陸諸国は、我が国を始め、
ほとんど同時期に成立しています。」
執事は表情を戻すと、僕に語り掛けた。
「先ほど申しあげたように、
わが国には、上から公爵・伯爵・子爵・男爵・准男爵の貴族がいます。
そして、今回、晩餐会に招かれているのは、
上位貴族の公爵と伯爵の、当主とその妻と後継者です。
ま、後継者はほとんどが長男で、
男子に恵まれなかった家は長女ですが。。。」
(次話に続く)
次話は2026/3/14 12時に更新予定です。




