第30話 ドーラ分隊
(前話からの続き)
10分ほどすると、ドーラが9人の部下を連れて、僕の部屋に入ってきた。
ああ、オウゴウヌ王国軍において分隊とは10名の規模だ。
つまり、僕がオウゴウヌ王国にいる間、ドーラを含む10名が僕を警護することになる。
ドーラは一人の青年を指さした。年齢は23歳くらいだろうか。
髪はシルバー短髪、瞳は黒く、肌は白く、四角い顔をしていた。
体形は痩せ型で、身長は180cmくらいだろうか。
「まずは副長から紹介しよう。
彼はフレッド・ビーモンド少尉だ。
修司殿が日本から来る直前に、
後方支援兵科から我が隊に異動してきた。」
フレッド少尉は僕に小さく会釈した。
ああ、オウゴウヌ王国軍には、大きく分けて4つの兵種がある。
1つには歩兵科で、オウゴウヌ王国軍の約45%を占め、最も多い。
次に多いのが魔法兵科で、オウゴウヌ王国軍の約30%を占める。
なお、ウオーレン魔法兵連隊長は、近衛師団において魔法兵のトップにいる。
残りは騎兵科が約10%と後方支援兵科が約15%だ。
ダグ騎兵連隊長は近衛師団において騎兵のトップで、同様にヒラリー後方支援連隊長は近衛師団において後方支援兵のトップである。
次にドーラは別の青年を指した。
年齢はフレッド少尉と同じ、23歳くらいだろうか。
髪は黒く短髪、瞳も黒く、肌は白く、丸顔をしていた。
体形は筋肉質で、身長は175cmくらいだろうか。
「彼は、ヒュー・グラフトン少尉。
歩兵科出身で、やっぱり修司殿が日本から来られる直前に、
我が分隊に異動してきた。」
ヒュー少尉は「よろしく」と僕に頭を下げた。
次にドーラは別の青年を指した。彼も年齢は23歳くらいだろうか。
髪はブロンド短髪、瞳は青く、釣り鐘型の顔だった。
すこしポッチャリな体形で、身長は170cm位だろうか。
だが、、、誰かに似ている。。。誰だろう?
「彼はジャクソン・ウッドハウス少尉。
魔法兵科出身で、彼も修司殿が日本から来られる直前に、
我が分隊に異動してきた。」
え? 『ウッドハウス』? それって確か。。。
僕の表情からドーラは察したのだろう。
ドーラは苦笑いを浮かべて、言葉を続けた。
「修司殿、もうわかったと思うが、
彼はウオーレン・ウッドハウス魔法兵連隊長閣下の長男だ。」
そうか! ジャクソン少尉はウオーレン魔法兵連隊長に似ているんだ!
さすがに親子だ! よく似ている!
だが、ジャクソン少尉は複雑な表情を浮かべ、口を開いた。
「いえ、、、父は厳密な意味で魔法兵ではないから。。。」
すると、ドーラは苦笑いを浮かべ、ジャクソン少尉を窘めた。
「ジャクソン、そんなこと言うんじゃない。」
ジャクソン少尉は無言でうなずいた。
え? 『ウオーレン魔法兵連隊長が魔法兵じゃない』ってどういうこと?
そんな僕の戸惑いをスルーして、ドーラは別の青年を指した。
年齢は20歳くらいだろうか。
髪は黒く短髪、瞳は黒く、丸型の顔だった。
すこしポッチャリな体形で、身長は160cm位だろうか。
「彼はケント・フリートウッド准尉。
魔法兵科出身で、彼も修司殿が日本から来られる直前に、
我が分隊に異動してきた。」
ケント准尉は「よろしく」と僕に頭を下げた。
ドーラは笑顔で僕に語り掛けた。
「さて、ここからは女性陣を紹介しよう。
階級から言うと、順番が違うが、我が隊の一番の古株を紹介したいと思う。」
そう言うと、一人の女性を指した。年齢は35歳前後だろうか。
シルバーショートヘアで、釣り鐘型の顔で、色は白く、瞳の色は黒だった。
痩せ型で身長は170cm位だろうか。
「彼女はローレンス・ボット曹長。
ずっと騎兵科にいて、私が一番信頼している部下だ。」
ローレンス曹長は恥ずかしそうに僕に頭を下げた。
次にドーラは一人の女性を指した。
黒髪ショートヘアで眼鏡をかけた丸顔、少しポッチャリした体形、身長は170cm位で、年齢は23歳くらいだろうか。
彼女も誰か似ている。。。誰に似ているのだろうか?
「彼女はルイス・イング少尉。
歩兵科にいて、我が隊に異動してきた。」
え? 『イング』? それって、、、
ドーラは苦笑いを浮かべて、話しかけた。
「もうわかったと思うが、彼女はクラリス・イング参謀総長閣下の長女だ。」
ああ! クラリス参謀総長に似ているんだ!
すると、ルイス少尉はしかめっ面を浮かべ、ドーラに語り掛けた。
「分隊長! やめてください!
私があんな母親の娘だなんて紹介しないでください!」
ドーラは苦笑いを浮かべたまま、ルイス少尉を窘めた。
「ルイス、、、そんなこと言うんじゃない。。。」
すると、ルイス少尉は黙ってうなずいた。
どうも、クラリス参謀総長とルイス少尉との間には何かがあるようだ。。。
次にドーラは一人の若い女性を指した。年齢は23歳くらいだろうか。
彼女は髪はシルバーでショートヘア。
瞳は黒く、顔は四角く、痩せ身で、身長は170cm位だ。
あれ? 彼女も誰かに似ている。。。
ドーラは語る。
「彼女はエイミー・ハミルトン少尉。
別の騎兵分隊に所属してきたが、
修司殿が日本から来る直前に異動してきた。
ああ、我が分隊は近衛師団・騎兵連隊の隷下にある。」
え? 『ハミルトン』? もしかして?
ドーラは苦笑いして語る。
「もう、察したと思うが、
彼女はダグ・ハミルトン騎士連隊長閣下の長女だ。」
すると、エイミー少尉は露骨に嫌な顔をして、ドーラに語った。
「ヤメテください、分隊長。
あれを父親とは言わないでください!
生理的にイヤなんです!」
ははは。。。 父親を嫌う娘の典型例って訳ね。。。
エイミー少尉をスルーして、ドーラは一人の若い女性を指した。
まだ幼顔が残っており、10代じゃないだろうか?
彼女は髪はブロンドでショートヘア。
瞳は青く、顔は釣り鐘型、痩せ身で、身長は175cm位だ。
「彼女はベリンダ・ディーコン上等兵。
16歳で軍に入隊して、ずっと騎兵科にいる。
ローレンス曹長の次に信頼している。」
ベリンダ上等兵は黙って僕に頭を下げた。
次にドーラは若い女性を指した。
彼女もベリンダ上等兵と同様で、まだ幼顔が残っており、10代と思われた。
髪はシルバーのショートヘアで見た目には細身で華奢だ。瞳は青くで、顔は面長で、身長は160cm位だ。
「彼女はケイシー・アクロイド上等兵。
彼女も16歳に入隊して、ずっと後方支援兵科にいたが、
修司殿が来る直前に、我が隊に衛生兵としてきた。」
ケイシー上等兵は緊張した面持ちで、僕に黙って頭を下げた。
こうして、ドーラさんの分隊メンバの紹介が終わった。
この時、僕は違和感を覚えた。
だって、分隊メンバは10名で、その内、尉官がドーラを含め7名いるんだ。
しかも、、、男性4名は全員尉官だ。
あまりにも編成が『いびつ過ぎる』と思ったんだ。
でも、この時はそれを問うのは憚られた。。。
分隊メンバの紹介を終えると、ドーラは苦笑いを浮かべ、分隊メンバ全員に語り掛けた。
「さて、、、分隊メンバ諸君。。。
我が分隊は午前0時から待機任務となり、
朝から当番勤務あるいは訓練勤務となる。
で、、、明日の朝から我が分隊は『訓練勤務』となった。。。」
分隊メンバ全員、『訓練勤務』と聞き、緊張の面持ちで、ドーラを見た。
ドーラは苦笑いを浮かべたまま、分隊メンバ全員に語り続けた。
「で、、、
その訓練勤務の内容なんだが、、、
近衛師団司令部から、
『ドーラ分隊は5日間の集中合宿で、
自動車の運転の教習を完了させよ。』
との指令が下った。
明日の朝一番に、
我が分隊は軍の自動車教習所に移動せねばならぬ。
各自、部屋に戻って、5日間の集中合宿の準備をせよ。」
それを聞いて、分隊メンバ全員が驚き、あきれ、「えー!?」との不平の声が漏れた。
特にルイス少尉は不平たらたらだ。
「分隊長(=ドーラ)、お言葉ですが、
通常、自動車の運転教習は合宿でも、最短で2週間、通常は1か月かかります。
それを、たった5日間で完了させよとのことですか?」
ドーラは憂鬱な表情で答えた。
「ああ、、、
『朝、昼、晩、寝る寸前まで、
(教習を)詰め込んで行ってやるから、
1週間で運転教習を完了させよ。』
との、近衛師団司令部のお達しだ。」
ルイス少尉はなおも食い下がる。
「エ~!? それは殺生な。。。」
すると、ドーラはルイス少尉を罵った。
「仕方なかろう!
我が分隊は騎兵連隊隷下なのに騎乗できない奴が多くて、
『せめて自動車運転技術を身につけて、
機動力を確保しろ』
との近衛師団司令部のお偉方からの命令だ!」
ドーラは勢いに乗って、分隊メンバを見渡し、罵った。
「特に、
ジャクソン! ケント! ルイス! ケイシー!
お前ら、騎乗できないだろ!
お前らは絶対5日間で自動車運転教習を完了させろ!」
ジャクソン少尉、ルイス少尉、ケント准尉、ケイシー上等兵は苦笑いを浮かべ、バツが悪そうに、「ははは。。。」とごまかし笑いをした。
ドーラは少し落ち着き、分隊メンバに語り掛けた。
「その代わり、自動車教習が完了すれば、
我が分隊には4台の軽トラと1台のスクーターが配備される。
そして、修司殿には1台の7人乗りワンボックスカーと、
1台の軽トラタンクローリーが管理下となる。
我が分隊は修司殿を護衛する関係で、
それらも分隊メンバが使用可となる。」
(第21話)
フレッド副長は戸惑いながら、ドーラに問うた。
「分隊長(=ドーラ)、、、
我が国の自動車生産は約10年前から始まりました。。。
でも、鉄不足により、自動車生産量は、
アルミニウムや強化プラスチックを活用しても、
年間10台余りです。
つまり、我が国には自動車は100台余りしかありません。。。
それなのに、なぜ、4台の軽トラと1台のスクーターが配備され、
さらに1台の7人乗りワンボックスカーと
1台の軽トラタンクローリーが、我が分隊で使用可能になるのですか?」
ドーラは苦笑いを浮かべ答えた。
「我が分隊は、ここにいる修司殿が我が国に滞在する1年間、
修司殿を警護する役割を仰せつかった。
修司殿は1年間、王立オウゴウヌ大学に通われる。
そして、過程上、国内中を移動することもある。
そのために、我が分隊には機動力が必要だからだ。」
ヒュー少尉も戸惑い問うた。
「それにしても、、、
4台の軽トラと1台のスクーターなんて、、、
加えて、1台の7人乗りワンボックスカーと
1台の軽トラタンクローリーなんて、、、
そんなに大量の車をどうやって入手したのですか。。。」
すると、ドーラは自嘲気味に笑って答えた。
「ははは。。。
ここにいる修司殿からの土産の一部だ。
(第12話)
軽トラ10台以上と、1台の7人乗りワンボックスカーが
土産として我が国にもたらされた。」
エイミー少尉は驚く。
「え~!?
我が国の1年の自動車の生産量とほぼ同じものが、
土産としてもたらされた~!?」
ドーラは苦笑いを浮かべて話しを続けた。
「実は、その車の荷台にも大量の土産があった。。。
実は、昨日、修司殿とその大量の土産を運んでな。。。
1時間ほど走り回ってな。。。
大変だった。。。
実は、父上(=レオ近衛師団長)、オリビア(=第三王女)にも
手伝ってもらったし、、、
それだけでなく、、、
ダグ・ハミルトン騎士連隊長閣下、
ウオーレン・ウッドハウス魔法兵連隊長閣下、
ヒラリー・エイリー後方支援連隊長閣下、
クラリス・イング参謀総長閣下
にも手伝ってもらった。。。
そりゃ、もう、大騒ぎだったぞ。。。」
(第12話)
僕も思わず、「ははは!」と笑った。。。。
あれは、本当、大変だった。。。
軍の上層部を親に持つ、ジャクソン少尉、ルイス少尉、エイミー少尉は一応に驚きの表情を浮かべた。
ジャクソン少尉は戸惑いながら、問うた。
「え!?
分隊長、、、修司殿って、いったい何者なんですか?」
ドーラは笑って、その質問を煙に巻いた。
「ははは! その答えはおいおいとしよう。」
ドーラは表情を元に戻すと、分隊メンバに話しかけた。
「話を戻すと、軍全体を見渡しても、
我が分隊は最も自動車が配備される隊となる。
展開力は我が分隊が、軍で一番となるだろう!
5日間の集中合宿で自動車運転教習を完了させるぞ!」
分隊メンバ全員、目を輝かせ、「ハ!」と答えた。
僕は戸惑いながら、ドーラに問うた。
「ドーラさん、、、
もしかして、、、
今日の午後、近衛師団司令部に呼ばれたのは、、、
(第28話)
この、、、自動車運転教習のことですか?」
ドーラは微笑み、うなずいた。
ドーラは僕に語り掛けた。
「修司殿、、、
政府がオウゴウヌ大学と調整が済むまで、
かつ、我が分隊の運転教習が済むまで、
修司殿は王城の外には出られない。
大学との調整も、安全教習も、5日間ほどかかる。。。
つまり、5日間は王城内でおとなしく過ごしてくれ。」
ドーラは続けてこう言った。
「明日以降はオリビア(=第三王女)に頼んである。
済まないが、今日のところは、宮殿の修司殿の部屋に戻ってくれるか?」
僕は仕方なく、一人で、宮殿の僕の部屋へ戻っていった。
でも、、、こんなことを考えていた。。。
『ドーラさんの分隊には尉官が多すぎる。。。
そして、騎兵連隊隷下なのに、騎乗できないメンバが多すぎる。。。
なにか変だ。。。
僕を警護する以外の目的があるのではないか?』
(第21話)
と。。。
次話は2026/3/12 12時に更新予定です。




