第3話 留学準備開始
父・普一と、母・エリーゼと、祖父・賢治は、僕がオウゴウヌ王国に行く1年前から、準備を始めた。
『留学生活の準備』と称して。。。
留学1年前、家族全員の家族会議で、祖父・賢治はこう切り出した。
「修司の留学の土産に何をもたらせたら良いかのう?」
父・普一は天井を見上げ、こう答えた。
「うーん、、、
1時間以内で持ち運びができなきゃいけないし、、、
あまり大きなものは通らないし。。。」
なんか訳の分からんことを言いだしたぞ。。。この父親は。。。
母・エリーゼも顔を横に傾け、思案顔でつぶやいた。
「オウゴウヌ王国で必要なものを考えないと。。。」
祖父・賢治は父・普一を見つめ、語り掛けた。
「ワシら(=賢治、普一)、オウゴウヌ王国へ行って、色々報酬をもらっとる。。。
それを一部でも返さなくちゃいかんと思うんだ。。。」
父・普一は両手を組んで、祖父・賢治に語る。
「そうなんですよ。。。
でも、同時にほら!
修司に調べてもらいたいことがあるじゃないですか。。。」
祖父・賢治は僕に語り掛けた。
「修司、1年後、お前にはオウゴウヌ王国に行ってもらうが、
3つほど、調べてほしいことがある。
その内、2つは、物理学とは関係ないが、何を持って行ったらいいか、
お前も考えてもらえないか?」
僕は戸惑いながら答えた。
「調べてほしいことって?」
父・普一は僕に語り掛けた。
「お祖母さん(=マーガレット)の死因について、一つ仮説があるんだ。。。
その仮説を検証するために、2つ調べてほしいんだ。。。」
祖父・賢治は続く。
「お父さん(=普一)と、ワシ(=賢治)の記憶じゃ、
オウゴウヌ王国にはその仮説を検証する計測機器はない。
何を持って行ったら良い?」
僕は戸惑いながら答えた。
「僕の専門分野じゃないけど、、、それだと、、、」
僕は必要な精密計測機器を答えた。
父・普一もうなずき、「僕もそう思う。。。」とつぶやいた。
そして、父・普一は祖父・賢治に顔を向け、語り掛けた。
「やっぱり、それらをオウゴウヌ王国に持ち込む必要がありますね。。。」
祖父・賢治もうなずいた。
「そうじゃな。。。」
父・普一は母・エリーゼに向けて、話した。
「よし!
オウゴウヌ王国に持ち込み可能なサイズの制約の上で、
最高性能の精密計測機器を土産としよう!」
僕は慌てて制止した。
「えー!? かなり高額なはずですよ?」
母・エリーゼは微笑み返した。
「大丈夫、その分の経費はもらうから。。。」
妹・倫子は思わず問うた。
「『経費をもらう』って何!?」
父・普一は苦笑いを浮かべて答えた。
「適当に株とか金融商品を買えば、
その株や金融商品は値上がりして、税金や手数料を差っ引いても、
精密計測機器の価格相当の収入が入るから。。。」
弟・幸一も問うた。
「父さん(=普一)と母さん(=エリーゼ)、
なんとなく買った株とか土地とかが値上がりした時も、
宝くじとか馬券が当たった時とか、
『報酬』と言っていたけど、そう言うこと?」
祖父・賢治も苦笑いを浮かべて答えた。
「いや、あれとは別に、和泉家がオウゴウヌ王国のために使ったお金は、
別途『補填される』のさ。。。」
思わず僕と弟と妹は頭を抱えた。
そして僕はつぶやいた。
「頭おかしくなりそう。。。」
弟と妹はうなずいた。
「「うん。。。」」
実際、精密計測機器を購入した1週間後、適当に父は株を購入した。
そしたら、その株は爆上がりして、1か月後、株を売却した。
結果として、税金や手数料を差し引いても、精密計測機器の購入代金を十分上回る収入があったんだ。
そう、これが『頭がおかしくなる体験』の始まりだった。。。
実はオウゴウヌ王国への留学は、『頭がおかしくなる』ことの連続だったんだ。。。。
あ、父・普一と祖父・賢治から調べてほしいことは3つなんだけど、そのうち、2つは具体的に何を調べるのかはっきりしていた。
最後の1つは、
『父・普一の仮説が正しかったとして、どうしてそうなるのか、僕の専門分野から調べてほしい』とのことだった。
やっぱり、精密計測機器が必要でね、父と相談して、オウゴウヌ王国に持ち込み可能な物で最高性能なものを購入したよ。
それ以外にも、沢山の土産を購入した。
それを運ばなくちゃいけないので、併せて、10台以上の軽トラを購入し、1台の7人乗りワンボックスカーを購入した。
そう、オウゴウヌ王国に運ぶためだけに。。。
10台以上の軽トラと、1台の7人乗りワンボックスカーが必要なほど、大量の土産を購入した。
それだけじゃない。
軽トラの数台は改造したし、7人乗りワンボックスカーも改造したんだ。
それらの『経費』も、結局のところ、いろんな形を通じて、和泉家に支払われた。
適当に金融商品とか、不動産とか買えば、それが爆上がりするから。。。
万馬券が当たったこともあった。。。。
そのたびに、『頭がおかしくなりそう』だった。。。
それにしても、、、お金の心配は不要にしても、、、
この派手な買い物や、派手なお金の出入りは僕や弟や妹を不安にさせた。
不安になった僕は両親(=普一、エリーゼ)に話しかけた。
「ねえ、こんなに物買ったり、物売ったりして大丈夫?
役所から目を付けられない?」
さらに僕は両親に問うた。
「そもそも、オウゴウヌ王国って外国でしょ?
『外国に高額な精密機器を持っていく』と言うことは、
イコール、
『高額な精密機器を輸出する』ってことだから、
規制に引っかからない?」
父(=普一)は腕を組み、天井を見上げ、つぶやいた。
「そうか、僕(=普一)がオウゴウヌ王国に行ったのは30年前、
父さん(=賢治)がオウゴウヌ王国に行ったのは60年前だけど、
今は規制がいろいろ厳しくなっているしな。。。」
父(=普一)は僕を見つめて語り掛けた。
「堤先生、前橋先生、高畑先生のところに相談に行く。
修司、博士3年で多忙のなか、済まないが、同行してもらえないか。」
僕は戸惑いながら、うなずいた。
堤先生とは、堤健一代議士のことであり、主要閣僚や執行部を務めたこともある、ベテランではあるが、与党の重鎮である。
堤家は代々代議士を輩出しており、和泉家とは100年以上の付き合いがある。
というより、和泉家が西洋人の風貌のオウゴウヌ家から妻を娶っており、戦前や戦中は『敵性外国人じゃないのか?』と疑われ、ヒドイ偏見や迫害を受けた。
だが、それを当時の堤家の代議士が、役所や近所に掛け合い、和泉家を守ってくれたらしい。
だから、『堤家からの恩義を忘れるな』と和泉家は代々伝えられている。
だから、毎年、個人献金は欠かさないし、新年には堤家への挨拶も欠かさない。
堤健一代議士は、実は数十年前の選挙区の区割り変更で、和泉家のある選挙区の代議士ではなくなった。
それでも和泉家は堤家の恩義を忘れていないし、堤健一代議士も新年の挨拶には笑顔で応じてくれる。
しかも、とても親切な人で、祖母・マーガレットの葬儀には、与党の重鎮にもかかわらず、忙しいスケジュールをやりくりして、参列してくれた人である。
前橋先生とは、前橋進弁護士のことである。前橋家は代々法律家を輩出している。
やはり、和泉家とは100年以上の付き合いで、和泉家の顧問弁護士である。
堤家と同様に、和泉家に対する戦前と戦中の偏見や迫害から守ってくれたらしい。
顧問料を毎年払って、困りごとについて相談に乗ってもらっている。
高畑先生とは、高畑慎吾税理士のことである。
和泉家のバカツキのため、和泉家は副収入が多く、毎年の納税について、顧問料を払って相談に乗ってもらっている。
まずは堤健一代議士の事務所を訪ねた。当然、事前に面会の予約をしている。
多忙の身であるにもかかわらず、快く時間を割いてくれた。
堤健一代議士の事務所には、父(=普一)と母(=エリーゼ)と僕が訪ねた。
父と僕は背広姿、母はスーツ姿で事務所を訪ねた。
事務所の受付に行くと、すぐに面会室に通してくれた。
面会室にはソファーが2つあり、その2つのソファーの間には長机が置かれていた。
父と母と僕が面会室のソファーに座っていると、背広姿で議員バッチをした堤健一代議士と、彼の息子で秘書の堤典弘氏が背広姿で面会室に入ってきた。
堤代議士は年齢は70歳越えで、白髪、細い目をして、痩せ型で身長170cm弱、年齢の割にエネルギッシュな印象を受ける。
典弘秘書は年齢は40歳前後で、黒髪、細い目をしてちょっとポッチャリ体形の身長170cm弱で、すこし神経質な印象を受けた。
堤代議士と典弘秘書が面会室に入室すると、父と母と僕は慌ててソファーから立ち、堤代議士に頭を下げた。
堤代議士は笑顔で両手で制した。
「まあまあ、そんなにかしこまらずに、座って座って!」
そして、堤代議士と彼の息子の秘書、父と母と僕は向かい合って座った。
堤代議士は笑顔で父に語り掛けた。
「正月でもないのに、変な時期に面会を申し入れてきたから、
『何だろう?』って思ったけど、、、
すぐに思い当たったよ。。。
普一君、君がオウゴウヌ王国に行って、まもなく30年が経つんだな。。。」
そして笑顔で母に語り掛けた。
「そして、エリーゼさん、
あなたが日本に来て、まもなく30年が経つんですね。。。」
母は笑顔で堤代議士に語り掛けた。
「あの時はお世話になりました。」
そして母は堤代議士に頭を下げた。
僕が怪訝な表情をしていると、父(=普一)が笑顔で語り掛けた。
「ほら、オウゴウヌ王国って地図にないだろ?(第2話)
その状態で、母さん、日本に来たもんだから、
母さん、『国籍不明の不法入国者』扱いになってな~。。。」
母は苦笑いを浮かべて僕に話しかけた。
「そう、1年くらい、施設に入れられたの。。。」
そして、堤代議士に顔を向けて、笑顔で語った。
「堤先生が各方面に働きかけて、やっと出してもらったの。。。」
堤代議士は片手を振りながら、笑顔で語る。
「いやいや、あの時は私だけでなく、弁護士の前橋先生と共に、
各方面に働きかけた。。。」
そして堤代議士は遠くを見るように語った。
「あの頃の私は、オヤジの地盤を引き継いだばかりの新人議員だった。。。
今となっては懐かしい。。。」
父は笑顔で僕に語り掛けた。
「和泉家は戦前や戦中だけでなく、
堤家にはいつもお世話になりっぱなしでな~。。。」
そして、父は神妙な面持ちになり、堤代議士に話しかけた。
「今回は息子、修司がオウゴウヌ王国へ行きます。
また面倒をおかけしますが、よろしくお願いします。」
そして父は堤代議士に頭を下げた。
慌てて、母も僕も堤代議士に頭を下げた。
堤代議士は笑顔で片手を振って、語り掛けた。
「ヤメテ! ヤメテ!
和泉家と堤家は100年を超える付き合いじゃないの?」
そう言うと、堤代議士は横に座っていた息子の秘書に語り掛けた。
「典弘、この件はお前に任せる。
手に負えないことがあったら、俺に相談しろ。」
そして、堤代議士は父に笑顔を向けると、語り掛けた。
「今後は息子、典弘が窓口になるから。
なんでも息子に相談して。」
息子の典弘さんは緊張の面持ちで、彼の名刺を渡してくれた。
そして、名刺の携帯電話番号を指さし、
「今後はこの番号に直接電話を掛けてください。」
と語った。
堤代議士は与党の重鎮として多忙の身なので、父と母と僕は事務所を後にした。
事務所の玄関まで堤代議士は笑顔で送ってくれた。
父と母と僕が事務所を出ると、堤代議士の息子、秘書の典弘は堤代議士に口を開いた。
「オヤジ(=堤代議士)、多忙の身で、
なんでオヤジの選挙区に住んでいない和泉家のために時間を割いたんだ?
そりゃ、毎年、和泉家から個人献金はあるけど。。。」
堤代議士は息子の典弘に顔を向け、語りかけた。
「典弘、お前も知っているだろ?
政界では俺達、堤家は『幸運の一家』だって評判があることに。。。」
典弘は戸惑いながらうなずいた。「ああ。。。」
堤代議士もうなずきながら、話を進めた。
「その『幸運』は和泉家からもたらされたものなんだ。。。」
典弘は驚く。「え!?」
堤代議士は息子の驚きをスルーして話を進める。
「今でこそ、区割り変更で、俺の選挙区には和泉家は住んでいない。
でも、区割り変更前は、堤家の選挙区に和泉家は住んでいた。
だから、和泉家の評判は聞いていた。
その評判は『和泉家はバカツキとタタリの家』なんだ。」(第1話)
堤代議士は息子を見つめ、語り掛けた。
「和泉家を攻撃したり、貶める者にはタタリが落ちる。
でも、和泉家を擁護する者には、ツキがもたらされるのさ。」
典弘は首を横に振る。「まさか!?」
堤代議士も首を横に振り、話を進めた。
「戦前と戦中、和泉家はヒドイ偏見や迫害を受けた。
それを確かに当時の堤家の当主で代議士だった祖父が守った。
でも、その結果、莫大な報酬が堤家にもたらされた。。。
ま、株とか債券が爆上がりして、その収入がものすごくってな。。。
ほら、堤家は首都に大きな屋敷があり、そこを拠点にしているだろ?
あれ、その報酬の一部で購入した物らしいんだ。。。」
典弘は驚く。「マジかよ!」
堤代議士の話は続く。
「それだけじゃない。
戦後、祖父は公職追放の対象になりかけたらしい。。。
でも、祖父の公職追放を叫んでいた者達が全員、
タタラレたそうだ。。。
それで祖父は公職追放から逃れることができた。
それ以来、堤家は『和泉家を手放すな!』を引き継いでいるのさ。。。」
典弘はあきれ返る。「初めて聞いた。。。」
堤代議士は両掌を天井に向け、両手を伸ばし、苦笑いを浮かべて、話を進めた。
「ま、私も『和泉家のバカツキ』の恩恵をもらっているしね。。。」
典弘は再び驚く。「え!?」
堤代議士は両手を下ろすと、微笑み、典弘に語り掛けた。
「30年前、今回のように大量に物資をオウゴウヌ王国へ持ち込もうとしてな~。
そして、さっきの話のように、エリーゼさんが日本にやってきて、
国籍不明の不法入国者の扱いを受けて大変だった。
私は、弁護士の前畑先生や、税理士の高畑先生と共に、
いろんな方面に働きかけた。
すると、何気なく買った株とか、馬券が大当たりしてな~。。。
初当選したばかりの新人議員の私にはありがたかったぞ。。。
あの時の報酬は大きくって、おかげで政治資金に困ったことはない。。。」
堤代議士は話を続ける。
「まだ私も若かった時は、執行部の意向に逆らった挙句、
党の公認を外されたこともあったし。。。
与党のスキャンダルもいくつかあって、
逆風の選挙なんていっぱいあった。。。
でも、、、」
典弘が話を繋ぐ。
「なぜか、『刺客』とされた有力候補が選挙寸前で病気になり、
立候補を取りやめた。
結果としてオヤジは議席を守った。
だから、『堤家は幸運の一家』だって評判がある。
それは、オヤジはタタリだと?」
堤代議士は無言でうなずいた。
そして、堤代議士は笑顔で問うた。
「この件は、お前に任せた。
この意味は分かるか?」
典弘は神妙な面持ちで答える。
「俺にツキを移すってことか?
オヤジは次の選挙に出ないし。。。」
堤代議士は笑顔でうなずいた。
「わかっているじゃないか!
私は党の規約で年齢的に次の選挙には出られず、
政界を引退しなくちゃならない。
次の選挙はお前が出なくちゃならない。
お前が和泉家のために動けば、その報酬はお前に行く。
いいか、堤家を守るためにも、『和泉家を手ばすな!』」
典弘は黙ってうなずいた。
次話は2026/3/1 18時に更新予定です。




