第29話 オウゴウヌ王国での僕の部屋(その2)
王城の庭にある『光アーチ』から(第28話)、僕とドーラは宮殿に戻った。
その日の夕食、つまり2日目の夕食、僕はドーラ、シャーロット第二王女、オリビア第三王女と食した。
あ、ドーラは軍服を脱ぎ、スーツ姿だった。
2日目の朝、アン女王が言ったように、アン女王とレオ近衛師団長は多忙らしく(第24話)、二人と一緒に夕食をとることはできなかった。
夕食を終えると、ドーラとシャーロット第二王女とオリビア第三王女と僕は、それぞれ自室に戻った。
自室に戻り、10分が経ったくらいだろうか、ドアにノックの音がすると、ドーラが入ってきた。
ドーラは笑顔で僕に語り掛けた。
「はい、これが修司殿の許可証だ。
これ王室プライベート区域以外にも行くことができる。」
だが、ドーラは僕を見つめ、語り掛けた。
「ただし!
一般人立ち入り可区域、および王城の外には一人で行くな!
修司殿の安全確保のためだ。
いいな?」
僕は黙ってうなずいた。
そりゃ、僕に対する誘拐・拉致や暗殺の危険があるなら(第27話)、怖くて一人で外出できないよ~!
ドーラは続けて僕に語り掛けた。
「ところで、夕食前に言ったように、
今夜12時から、つまり明日午前0時から、我は軍で待機任務に入る。」
(第28話)
僕は黙ってうなずいた。
ドーラは僕がうなずくのを見ると、話を続けた。
「夜12時までに我は常駐要員住居区域に行き、軍の施設に滞在せねばならぬ。
次の公休に入るまで、宮殿に戻れぬ。
そこでだ。。。
常駐要員住居区域で修司に紹介したい者達がいる。
夜11時に、我は常駐要員住居区域に移動するつもりだが、
一緒に来てくれないか?」
僕は戸惑いながら、うなずいた。
その後、風呂に入り、髭を剃った。
執務室のパソコンを開き、この日の日記を書いた。
そして夜10時45分頃、背広を着て、部屋の外に出た。
すでに、ドーラは白い軍服を着て、廊下で待っていた。
ドーラは無言でついてくるよう促し、僕とドーラは常駐要員住居区域へ歩いて行った。
王城には、執事や給仕係のように王家の面倒を見る人々や、王城の警備をする人々に対する、常駐要員とその家族も住んでいる。
そんな人々は官舎に住んでいて、その官舎のエリアが常駐要員住居区域という訳だ。
宮殿のある王室プライベート区域と常駐要員住居区域の間には、守衛所が設けられ、行き来には許可証の呈示が必要だ。
僕に許可証が与えられたので、これからは自由に出入りが可能となった。
さて、常駐要員住居区域に入ると、木造建ての官舎が立ち並び、その中で2階建ての官舎の中にドーラは入っていった。
もちろん、僕も2階建ての官舎に入った。
ドーラは官舎の階段を上り、2階奥の部屋の鍵を開け、部屋に入っていった。
僕もその部屋に入った。
ドーラは僕がその部屋に入ったのを見ると、部屋の鍵を僕に手渡し、語った。
「ここが修司殿のもう一つの部屋だ。
隣の部屋には我がいて、我が修司殿を守る。
我が、軍の勤務をしている間は、ここが修司殿の部屋だ。
ま、明日から5日間ほど、我は王城におらぬから、
修司殿を守ることはできぬゆえ、
修司殿がここに暮らすのは一週間後となるが。。。」
その部屋は、小さなベッド一つ、小さな机に椅子、シャワー、トイレのこじんまりとした部屋で、ワンルームマンションより狭い。
でも、これでも官舎の単身者用の部屋としては、一番広くて、良い部屋なのだそうだ。
僕は戸惑ったが、そんな僕の戸惑いをスルーして、ドーラは話を続けた。
「執事より聞いたが、
修司殿がこのオウゴウヌ王国で、誘拐・拉致されたり、
暗殺される可能性があると聞かされたんだって?」
(第27話)
僕は黙ってうなずいた。
ドーラは苦笑いを浮かべて、僕に語り掛けた。
「修司殿は1年間、王室プライベート区域にいるのが、一番安全だろう。。。
だが、、、そうもいかん。。。」
ドーラは苦笑いを浮かべたまま、話を続けた。
「なぜなら、、、修司殿は基礎分野の研究者だ。
その知識を我が国に活かしてもらうため、
1年間、王立オウゴウヌ大学に通ってもらうつもりだ。
現在、政府が大学と調整中だ。」
(第21話)
ドーラは目を閉じて、顔を横に振った。
ドーラは目を開くと、僕を見つめ、右人差し指を立て、語り掛けた。
「でも、大学は人の出入りが自由だ。
だから、誘拐・拉致・暗殺の危険がある。」
僕は思わずうなずいた。
ドーラは右人差し指と右中指を立て、語り続けた。
「大学だけじゃない、、、
研究の過程でオウゴウヌ王国中を回る必要だってあるかもしれない。。。
そんな修司殿を、オウゴウヌ王国は守らねばならぬ。。。」
ドーラは右手を下ろし、僕を見つめ、語りかけた。
「そこで、1年間、、、
つまり、修司殿がオウゴウヌ王国に滞在している間、、、
我が率いる近衛師団の分隊が、
修司殿を警護することになっている。。。」
僕は驚き、「え?」とつぶやいた。
ドーラは苦笑いを浮かべて、僕に話しかけた。
「土曜日と日曜日は王室のプライベート区域にいてくれないか?
と言うのも分隊は公休になっている。
でも月曜日から金曜日までは分隊と共に行動してくれないか?
修司殿を我が分隊が警護するために。。。」
僕は戸惑いながら、うなずき、問うた。
「もちろん、、、問題ありませんが、、、
もしかして、、、
父・普一に、母・エリーゼの元分隊メンバから手紙があったのは(第11話)、、、
30年前も同様に、
母・エリーゼの分隊が、父・普一を警護していたからですか?」
ドーラは黙ってうなずいた。
そういうことか、、、
母・エリーゼの元分隊メンバは、父・普一を1年間警護し、共に過ごしたはずだから、かなり親しい関係なのだ。。。
じゃあ、、、どうして、、、
父・普一が、元分隊メンバのヒラリー後方支援連隊長に頼みたいことがあるのだろう?
(第16話)
父・普一と、ヒラリー後方支援連隊長には、元分隊メンバとは異なる関係があるってこと?
僕は問うた。
「じゃあ、どうして、
父・普一は、ヒラリー後方支援連隊長に頼みごとをしたのですか?」
ドーラはため息をついて答えた。
「詳しいことはわからないのだが、、、
どうも30年前、ヒラリー後方支援連隊長は、
普一殿から日本の医療を直接学んだらしいのだ。。。
つまり、、、
普一殿とヒラリー後方支援連隊長は、
師匠と弟子の関係にあるらしい。。。」
僕は思わず、「そういうこと。。。」とつぶやいた。
僕は気を取り直し、次の質問をした。
「僕に宮殿以外に、この官舎にも部屋があるのは、
ドーラさんがいるからですか?」
ドーラはうなずき、答えた。
「それもある。
だが、このフロアには、我が分隊のメンバ全員の部屋があるのだ。
だから、公休日で分隊メンバが不在の時以外は、
すぐに修司殿を警護できるからだ。」
僕は唖然として黙ってうなずいた。
ドーラは微笑み、僕に語り掛けた。
「そこでだ。分隊メンバを紹介しようと思って、修司殿にここに来てもらった。
我と同じで、分隊メンバは明日午前0時に待機任務となり、
この官舎におらねばならぬ。
11時を過ぎたので、分隊メンバは全員部屋に帰っているだろうからな。。。
実は、分隊メンバ全員、我を含めて、明日の朝から5日間、
この王城を留守にする。
今夜を逃すと、分隊メンバの紹介が1週間後になってしまうのでな。。。」
そう言うと、ドーラは「ちょっと待っていてくれ」と言って、部屋を出て行った。
(次話に続く)
次話は2026/3/12 0時に更新予定です。




