第23話 オウゴウヌ王国での僕の部屋(その1)
(第20話の続き)
ドーラは王室の食堂に右手を向け、笑顔で僕に語りかけた。
「さあ、修司殿の部屋を案内しよう。
こっちだ。
王室の食堂のある宮殿の1室だ。」
僕は戸惑いながら、「はい」と答えた。
僕とドーラは宮殿へと歩いて行った。
僕と宮殿に行くと、2階の部屋に通された。
ドーラは部屋のドアを開けると、笑顔で話しかけた。
「修司殿、オウゴウヌ王国におられる1年の間、
金曜日の夜から、日曜日の夕方までは、ここで過ごしてくれ。」
僕の部屋の隣はドーラの部屋で、近くにはシャーロット第二王女兼王太子の部屋や、オリビア第三王女の部屋もある。
ドーラと僕は部屋に入った。
ドーラは少し真剣な表情で僕に話しかけた。
「さて、歓迎晩餐会で母上が申されたように、
このオウゴウヌ王国にいる間は、修司殿は王族として扱われる。」
(第18話)
僕は黙ってうなずいた。
ドーラもうなずき、話を続けた。
「だが、王族として扱われると言うことは、
イコール、王族として振る舞わねばならぬ。」
僕は思わず、「え?」とつぶやいた。
そんなの無理だって!
だが、ドーラはそんな僕の戸惑いをスルーして話を続けた。
「宮殿は王室のプライベート区域であるが、
修司殿は王族として振る舞わねばならない。
いいか、修司殿。
この部屋から一歩でも外に出るときは、
王族として、少なくとも背広を着てほしい。
つまり、砕けた格好してリラックスして良いのは、この部屋だけだ。
窮屈かもしれんが、このオウゴウヌ王国にいる1年は我慢してほしい。」
そう言うと、ドーラは部屋の案内をしてくれた。
部屋と言っても、実際には複数の部屋がある。
寝室とクローゼットと執務室とトイレと風呂付だ。
それぞれが広い。一つ一つが十畳以上ある。
部屋に入るとすぐに執務室があり、その執務室には大きな机とオフィスチェアがある。
当然そのオフィスチェアは重役が座るような高級なものだ。
これとは別に面会用の長机と革張りソファも執務室には置いてあった。
執務室から寝室とトイレに入ることができる。
寝室のベットはダブルベットじゃないかと思うぐらい大きい。
あ、寝室からはトイレに行くことができる。
つまり、トイレには執務室からも寝室からも行くことができる。
寝室には洗面所とクローゼットに行くことができる。
洗面所は大きな鏡があり、風呂と繋がっている。
風呂もクローゼットも大きい。
各部屋の調度品はシンプルで、全体的には落ち着いた雰囲気の部屋となっている。
要するに、全体的に高級ホテルのスイートルームのようだ。
僕はビデオメッセージ放映に用いたパソコン類(第16話)を執務室に置いた。
このあたりの片付けや設置は明日以降に行うことにしよう。
だって、それより先にやるべきことがあるから。。。
僕はドーラに語り掛けた。
「ドーラさん、ワンボックスカーにおいてある荷物を引き取りたいんです。
着替えと祖母の遺骨箱が置いてあるんです。」
ドーラは黙ってうなずき、ワンボックスカーの置いてある、軍の倉庫まで付き添ってくれた。
ああ、王城はとても広い高台の上にあり、その高台をグルっと広くて深い堀に囲まれている。
高台には石垣と高い壁を設置し、他者の侵入を阻んでいる。
王城の北側に堀と王城を繋ぐ、鉄製の大きな跳ね橋があり、これが唯一の入口である。
王城は全部で4つの区域に区切られており、入口側の北の区域は一般人も立ち入り可となっている。
僕の部屋のある宮殿は王室プライベート区域で、王城の一番南にある。
一般人立ち入り可区域と王室プライベート区域の中間に、政府庁舎区域と常駐要員住居区域があり、政府庁舎区域が西側、常駐要員住居区域が東側にある。
一般人立ち入り可区域以外は許可証がないと入ることができない。
許可証にもいろいろレベルがあり、王室プライベート区域に入ることができる許可証が、最も高いレベルの許可証だ。
王族、内閣スタッフ、政府高官、高位の貴族、宮廷スタッフ以外には発行されない。
ここで、ワンボックスカーや10台以上の軽トラは軍の倉庫に置かれ、それは政府庁舎区域にあった。
一方で、それぞれの区域の境界には検問があり、それには許可証が必要で、まだ僕には許可証が発行されていなかった。
つまり、許可証がない僕が検問を通るには、政府高官あるいは王族の付き添いが必要だったって訳。
実際のところ、ワンボックスカーを『光のアーチ』から軍の倉庫に移動させたとき(第15話)、『光のアーチ』は王室プライベート区域にあり、検問を通らなきゃならなかった。
でも、レオ近衛師団長が助手席に座っていたので、顔パスで通してくれたって訳。。。
この時もドーラの顔パスで、検問を通してもらい、軍の倉庫にあるワンボックスカーに行き、着替えの入ったアタッシュケースと、祖母・マーガレットの遺骨箱をもって、宮殿に戻った。
本当はもっと荷物を持っていきたかったんだけど、、、この時は最低限必要なものだけにして、残りは許可証を得てからにあきらめた。
それに、、、アタッシュケースと遺骨箱の二つを同時に持てないから、、、アタッシュケースはドーラに引っ張ってもらい、僕が遺骨箱を持ったんだんけど。。。
当然、再度検問を通らなきゃならないので、ドーラに顔パスしてもらった。
部屋に戻ると、ドーラは微笑み、僕に語り掛けた。
「明日の朝、7時の朝食後、8時から納骨式を行うので、
朝食前には喪服を着ていてくれ。」
そう言うと、ドーラは片手を振り、「おやすみ」と言い、部屋から出て行った。
ドーラが部屋から出ていくと、僕は力が抜けたように、ハーと息を吐いた。
おもむろにタキシードを脱ぎ、クローゼットのハンガーにかけた。
そして、アタッシュケースから、喪服と背広を取り出し、クローゼットのハンガーにかけた。
ついでにYシャツもアタッシュケースから取り出し、ハンガーにかけた。
下着もアタッシュケースから取り出し、クローゼットの収納箱に入れた。
ビデオ放映で用いた(第16話)、プロジェクタとスピーカーもクローゼットに格納した。
あ、ノートパソコンは執務室の机の上に置いた。
執務室も電気が通っており、無事に動くことを確認した。
それにしても、、、
『あー、ネットやりてー、スマホやりてー。。。』
でも、このオウゴウヌ王国にはインターネットも、スマホもできない。。。
やっと一息つき、風呂に入った。
風呂場の蛇口をひねるとお湯が出てきた。
後で聞いたが、この国では贅沢なことらしい。
田舎に行くと、自分で薪を燃やしてお湯を焚く必要があるそうだ。
風呂に入り、体を洗い、パジャマに着替え、その夜は寝た。
この日は正午過ぎから忙しく(第5話)、和泉家と王城の庭の『光のトンネル』を何度も往復して走った。(第12話)
その疲れのせいか、ベットに入るとすぐに眠りについた。
翌朝、6時、廊下からハンドベルの音が鳴り響いた。
後で、ドーラに聞くと、ドーラは苦笑いを浮かべて教えてくれた。
「毎朝、6時になると、執事がハンドベルを鳴らしながら廊下を歩き、
我ら王族に起床を促すのだ。」
ベットから出て、髭を剃っていると、6時15分頃、ノックとともに黒い服を着た蝶ネクタイの執事が入室してきた。
執事は笑顔で問うた。
「修司様、日本から持ってきた衣服をチェックさせてもらえませんか?」
僕は戸惑いながら、クローゼットのハンガーにかけた、喪服、背広、Yシャツ、そして収納されている下着を見せた。
執事は喪服、背広、Yシャツ、靴を見て、触り、つぶやいた。
「なかなか良いものですな。。。」
実は、3月まで学生だったし、まだ27歳だし、背広なんて既製品でよかったんだけどね。。。
母、エリーゼが「どうせオウゴウヌ王国に着ていくのだから」って、背広も喪服もテーラーメイドなのだ。
しかも布地も良いものを、母、エリーゼが選定した。
3月に博士号を取得したが、それには何回か学会発表が必要だったし、学内の審査発表会でも、この背広を着て行った。
他の学生と比べて、僕の背広が際立っていたのは事実だ。
しかし、執事は苦笑いを浮かべ、僕に振り向き語った。
「でも、修司様は1年間、この国に滞在なさいます。
それを考慮すると、背広もYシャツも、いささか足りませんな。。。」
僕はため息をついてうなずいた。
だって、毎日、背広着て生活するなんて思わなかったから。。。
3月まで学生だったから、背広なんて、学会発表とか、審査発表会と言った、着る機会なんて限られていたし。。。
執事は微笑み、僕に語った。
「王国の方で、衣服を準備いたします。
失礼ですが、採寸させてください。」
と言うことで、執事は採寸を行った。衣服の準備に1週間ほどかかるとのことだった。
次に、執事は苦笑いを浮かべ、恐る恐る僕に言った。
「修司様、許可証を得るため、写真を撮らせてもらえませんか?
背広を着た上で。。。」
そう言うと、執事はデジカメを取り出した。
どうも、父・普一が30年前持ってきたものらしい。。。
僕はYシャツを着て、ネクタイを締め、背広を着た。ネクタイは執事が選んでくれた。
そして僕の上半身の写真を撮ると、僕の部屋を辞した。
許可証は夕方にはできるので、ドーラに渡すとのことだった。
僕は一旦、背広を脱ぎ、黒い喪服を着た。
当然、ネクタイも黒いものに締め替えた。
7時前、部屋を出ると、ドーラも廊下で黒い喪服を着て待っていた。
ドーラは僕を連れ、前日の夕方に晩餐会を行った王室の食堂(第16話~第19話)に行った。
すでに、アン女王、レオ近衛師団長、シャーロット王太子、オリビア王女は着席していた。
レオ近衛師団長だけは白い軍服を着ていたが、アン女王、レオ近衛師団長、シャーロット王太子、オリビア王女は黒い喪服を着ていた。
朝食はリゾットとサラダとカットフルーツとコーヒーだった。
オウゴウヌ王国は法事では肉類は避けるらしい。
だが、ドーラがリゾットを一口食すと、左手で口を隠し、驚きの表情で語った。
「何? このリゾット!?」
すると給仕係が微笑み語った。
「シェフによると、日本からの土産のお米だそうです。
サラダも、昨晩と同じく、日本からの野菜ですし、
カットフルーツも日本からの果物です。(第19話)
コーヒー豆も、日本からの土産です。」
ああ、、、米も高級ブランド米を100kg、土産として持ち込んでいた。
コーヒー豆も高級ブランドコーヒー豆を10袋、土産として持ち込んでいた。
アン女王は上機嫌で語る。
「ははは!
しばらく、うまいメシが堪能できそうじゃ。
修司殿、礼を言う。」
僕は慌てて返した。
「いえ、選んだのは、全て、母(=エリーゼ)です。
1年後、日本に帰った時、女王陛下が褒めていたと、母に伝えます。」
アン女王は上機嫌のまま返す。
「本当に、エリーゼ姉上は日本を楽しんでいるの~。。。
1年後、そなたが帰るときは、
余からもエリーゼ姉上に礼の手紙をしたためよう。」
僕は戸惑いながらうなずいた。
(次話に続く)
次話は2026/3/9 0時に更新予定です。




