第22話 ヒラリー後方支援連隊長の個室にて ー父・普一の依頼内容ー
場所は、王城内の近衛師団司令部、ヒラリー後方支援連隊長の個室だった。
ああ、オウゴウヌ王国軍では、将官以上は個室が与えられる。
ヒラリー後方支援連隊長は少将なので、個室が与えられていたって訳。
ヒラリー後方支援連隊長の個室は、入口の外に秘書代わりの副官の机と椅子がある。
そして通路にソファーがあり、そのソファーにはヒラリー後方支援連隊長の面会予定の人が座る。
個室の中に入るには、入口のドアを開けるのだが、個室のドア側に面談用の二つのソファーとテーブルが設置されている。
入口手前側のソファーが来客用で、奥側のソファーがヒラリー後方支援連隊長用だ。
そして、個室の奥には窓があり、そこにヒラリー後方支援連隊長の事務机とオフィスチェアがあり、通常、ヒラリー後方支援連隊長は、窓を背に座り、デスクワークを行っている。
歓迎晩餐会(第16話~第20話)を終えると、夜9時を回っていたが、ヒラリー後方支援連隊長はルーク教授を連れ、彼女の個室に戻っていた。
あ、彼女の副官はすでに帰宅させていた。
ヒラリー後方支援連隊長とルーク教授は、面談用の2つのソファーに座り、父・普一からの手紙を読んでいた。(第17話)
手紙を読み始めて、30分ほど経つと、入り口のドアにノックが鳴った。
何事かと思い、ヒラリー後方支援連隊長がソファーから立ち上がり、入口のドアを開けると、そこにはクラリス参謀総長が立っていた。
ヒラリー後方支援連隊長は戸惑い、クラリス参謀総長に問うた。
「参謀総長閣下が夜遅く何事でありましょうか?」
すると、クラリス参謀総長は苦笑いを浮かべ、片手を振って、語り掛けた。
「今は、エリーゼ分隊元メンバとしてきたの。。。
副官も帰っているし、敬語は不要よ。。。
本音トークしようよ。。。
あんたぐらいしか、私の本音話せないのよ。。。
大将って、、、参謀総長って、、、孤独なのよ。。。」
そう言うと、クラリス参謀総長はヒラリー後方支援連隊長の個室に入り、ルーク教授と同じ、入口側のソファーに座った。
ヒラリー後方支援連隊長は戸惑いながら、奥側のソファーに座った。
クラリス参謀総長は微笑み、ヒラリー後方支援連隊長に問うた。
「で、普一殿の手紙の内容はなんだったの?
普一殿は、ヒラリーとルークに何を依頼してきたの?」
ヒラリー後方支援連隊長は戸惑いながら、クラリス参謀総長に向けて、右指を3本立てた。
「普一殿から調査依頼されたのは、大きく分けて3つよ。」
ヒラリー後方支援連隊長は右指1本立てた。
「1つ目は食品に関するものよ。
『オウゴウヌ王国の食品は、日本の食品に比較して、
【あるもの】が圧倒的に少ないのではないか?』
って、普一殿は仮説を立てているの。。。」
ヒラリー後方支援連隊長は右指2本立てた。
「2つ目は人体に関するものよ。
『オウゴウヌ王国の人間は、日本人と比較して、
血液中の【あるもの】が圧倒的に少ないのではないか?』
って、普一殿が仮説を立てているの。。。」
ヒラリー後方支援連隊長は右指3本立てた。
「3つ目は根源的なことよ。
さっきの2つの仮説が正しかった場合、
『どうしてこうなるのか?』を調べること。」
クラリス参謀総長は戸惑いながら問うた。
「3つともヒラリーとルークが調べるの?」
ヒラリー後方支援連隊長は何度も顔を横に振り答えた。
「いーえ、私とルークが頼まれたのは2つ目よ。
必要な機材は土産として持ち込んで、
使用方法は修司殿にレクチャー済みだって。。。」
クラリス参謀総長はなおも戸惑いながら問うた。
「じゃあ、残りの1つ目と3つ目は?」
ヒラリー後方支援連隊長はため息をついて答えた。
「1つ目は、
『女王陛下宛の手紙にもその旨記載し、王室から大学に調査依頼してほしい』
って。。。
やっぱり必要な機材は土産として持ち込んで、
使用方法は修司殿にレクチャー済みだって。。。」
ルーク教授が補足した。
「ま、1つ目は医学と言うより、農学に近いし。。
私の方からも、学長を介して、そちらの方の専門家に頼みます。」
ヒラリー後方支援連隊長は話を続けた。
「3つ目は、
『修司殿自身が行う』
って。。。
でも、
『一人じゃできないから、協力を王室から大学に依頼してほしい。』
って。。。
これについても、必要な機材は土産として持ち込んで、
使用方法は修司殿にレクチャー済みだって。。。」
ルーク教授が補足した。
「3つ目も医学ではないので。。。
本件も、私の方からも、学長を介して、そちらの方の専門家に頼みます。」
クラリス参謀総長は、もう訳が分からないようで、戸惑いながら問うた。
「ねえ、そもそも、どうして、そんな調査が必要なの?」
ヒラリー後方支援連隊長はため息をつき、視線を下に向け答えた。
「普一殿の手紙によれば、、、
普一殿の母君、つまり修司殿の祖母君の、
『マーガレット殿下の死因について、仮説があり、その仮説を検証したい。』
って。。。」
クラリス参謀総長は「え?」とつぶやいた。
ヒラリー後方支援連隊長は、クラリス参謀総長の戸惑いをスルーして、話を続けた。
「普一殿の手紙には続きがあり、
普一殿の父君、つまり修司殿の祖父君の、
賢治殿によれば、
『アナースターシア殿下も、
晩年、マーガレット殿下と同じ症状で死去した』
らしいわ。。。
あ、アナースターシア殿下は、
普一殿の祖母君、つまり修司殿の曾祖母君にあたるわ。。。」
ヒラリー後方支援連隊長は、視線をクラリス参謀総長に戻すと、話を進めた。
「普一殿は、
『【あるもの】は人体に必要だが、多くなりすぎると逆に毒になる』
と言っているの。。。
そして、
『血液に含まれる【あるもの】が毒になってしまう濃度が、
オウゴウヌ王国の人は、日本人と比べて、著しく低いのではないか?』
って、疑っているの。。。」
クラリス参謀総長は更に問うた。
「でも、、、どうして、、、
そんなことを普一殿が知る必要があるの?
しかも、ヒラリーやルークにまで頼む必要があるの?
加えて、そのための計測機器まで準備しているし。。。
だって、マーガレット殿下は亡くなってしまったのよ?
いまさら、その原因を知って何がしたいの?」
ヒラリー後方支援連隊長は、クラリス参謀総長を見つめ、真剣な表情で叫んだ。
「『【現在】、日本にいるオウゴウヌ王国の人』を守るためよ!
そして、『【将来】、日本に行くオウゴウヌ王国の人』を守るためよ!」
クラリス参謀総長は、ハッとした表情でつぶやいた。
「それって、、、つまり、、、」
ヒラリー後方支援連隊長は真剣な表情のままで叫んだ。
「そう、
『分隊長(=エリーゼ)とドーラ殿下を守るため』
よ!」
ヒラリー後方支援連隊長の個室には沈黙が流れた。
しばらくの沈黙のうち、クラリス参謀総長はうなずきながら問うた。
「『分隊長(=エリーゼ)とドーラ殿下を守るため』ってのは分かった。
でも、花火の際、
『硝石がほとんど採れなかった』
って、ヒラリーと私が言ったら、
『普一殿の仮説が正しいってこと?』(第20話)
って、修司殿はつぶやいたよね?
そのことと、硝石が採れなかったことと、関連があるわけ?」
ヒラリー後方支援連隊長は顔を横に振り答えた。
「わからないわ。。。
でも、修司殿は関連があると思っている。。。」
ヒラリー後方支援連隊長は苦笑いを浮かべ、ルーク教授に語り掛けた。
「分隊長(=エリーゼ)とドーラ殿下を守るため、
この件ついて、私は全面協力する。
ルーク、忙しいのはわかるけど、協力してもらえないかしら。」
ルーク教授も苦笑いを浮かべて答えた。
「もちろん、普一殿の依頼には、全面的に協力するよ。」
クラリス参謀総長も苦笑いを浮かべ、ヒラリー後方支援連隊長に語り掛けた。
「私は医学はわからないけど、それでも協力できることがあれば言って。。。
だって、分隊長(=エリーゼ)とドーラ殿下を守るためなんだから。。。」
ヒラリー後方支援連隊長は苦笑いを浮かべ、黙ってうなずいた。
次話は2026/3/8 12時に更新予定です。




