第12話 行ったり来たり
(前話の続き)
『ドーラ』と名乗る女性は、僕に顔を向け、問うた。
「こちらが1年間、我が国に来られる方ですか?」
母は笑顔でうなずき、答えた。
「そうだ。私の息子で、『修司』と言う。」
母は僕に顔を向けると、語り掛けた。
「修司、この『ドーラ』という女性は、お前にとって従妹にあたる。
そして、お前の許嫁だ。」
僕は戸惑いながら、『ドーラ』と名乗る女性に頭を下げた。
そして頭を上げると、『ドーラ』と名乗る女性に語り掛けた。
「はじめまして、『修司』と言います。」
すると、『ドーラ』と名乗る女性は笑顔になり、答えた。
「こちらこそ、はじめまして。
改めて、我は『ドーラ』と申します。
1年間、あなたのオウゴウヌ王国での生活の面倒を見るよう、
母上、アン女王より、申し付けられております。」
そう言うと、僕に頭を下げた。
さて、ここからは彼女をドーラと呼ばせてもらうことにしよう。
ドーラは右手を『光のアーチ』に向かって指し、僕に告げた。
「修司殿、さあ、オウゴウヌ王国へ参りましょう。
加護を受けられるのは私だけです。私の手を握ってください。」
すると、母エリーゼはニヤリと笑い、ドーラに語り掛けた。
「その前に、土産も持って行ってもらおうか。
折角準備したんだから~♪」
そう言うと、倉庫の前に並べた、10台以上の軽トラと、1台の7人乗りワンボックスカーを指さした。
ドーラは驚き、母エリーゼに問うた。
「ご存じの通り、加護魔法『光の保護膜』の持続時間は1時間です。
まさか、、、その1時間の間に、、、
『光のトンネル』を何回も往復して、これらすべてを運べと?」
さっきの手紙の受け渡し(第11話)で10分以上使っている。
土産は10台以上の軽トラと、1台の7人乗りワンボックスカーがあるから、
1台あたり4~5分で往復しないと1時間以内で完了しない。
母・エリーゼは笑って答えた。
「カカカ! これが最初の二人の共同作業だ!」
ドーラは困った顔で、母・エリーゼに語る。
「エリーゼ伯母上、
ご存じのように王城の庭にこんなに多くの車を置く場所はありません。
こんなに多くの土産をいちいち、
和泉家から王城の庭、そして王城の庭からどこかに移動させて、
それを往復しろと言うのですか?
1時間ではとても足りません!」
母・エリーゼは笑って答えた。
「カカカ!
修司とドーラの二人はまず、1台1台、王城の庭まで持って行け!
王城の庭から先はレオに移動させろ!」
ドーラは戸惑いながら、問うた。
「父上なら、この車を動かすことができると?」
母・エリーゼは大きく笑って答えた。
「カカカ!
そうか、そなた、アンとレオとの娘か?
私の推薦通りに王配を選んだのだな。。。」
母・エリーゼは続けて、ドーラに語った。
「そう、エリーゼ分隊のメンバなら動かせる!
王城の庭から、どこに、誰が移動させるかは、レオに任せよ!」
僕はドーラに「助手席に乗って」と話し、一つの軽トラに乗った。
そして、軽トラのエンジンを入れた。
運転席で右手でハンドルを持ち、左手は助手席との間においた。
ドーラは助手席に座り、僕の左手を握った。
すると、僕を含めて、軽トラ全体が『光の保護膜』に包まれた。
僕は軽トラを動かし、『光のアーチ』に入り、10mほどの『光のトンネル』を抜けた。
すると、芝生に囲まれた庭に出た。
その芝生の側には10名近い鎧を着た兵士が槍を持って立っていた。
そしてちょっと離れた位置に天幕があり、その天幕の下に6名の男女が座っていた。
だが、ドーラは慌てた様子で、軽トラから飛び降りると、僕に叫んだ。
「軽トラから降りて、『光のアーチ』の近くで待ってて!」
僕は言われたまま、軽トラのエンジンを止めて、軽トラから降り、『光のアーチ』の1m手前で待った。
あ、ドーラが僕の左から離した瞬間、僕は『光の保護膜』の外にいた。
ドーラは『光の保護膜』に包まれたまま、天幕まで走り、一人の白い軍服を着た中年男性に駆け寄り、叫んだ。
「これが10台以上あります!
父上なら、エリーゼ分隊メンバなら、動かせると、
エリーゼ伯母上が仰っています!」
そう言うと、僕の待つ『光のアーチ』まで駆けだした。
その中年男性は、、、
まあ、後にドーラの父親でレオ・オウゴウヌ近衛師団長って知るんだけど、、、
彼は慌てて、天幕の近くにいた、白い軍服を着た一人の青年に向けて叫んだ。
「ダグとウオーレンとヒラリーとクラリスを呼んで来い!」
その白い軍服を着た青年は驚き、問うた。
「騎士連隊長閣下と、魔法兵連隊長閣下と、後方支援連隊長閣下と、
参謀総長閣下まで呼ぶのですか!?」
その中年男性(=レオ・オウゴウヌ近衛師団長)は「そうだ!」と叫んだ。
すると、白い軍服を着た青年は、慌ててどこかに走って行った。
次に、その中年男性(=レオ・オウゴウヌ近衛師団長)は、天幕に座っていた、若い女性に向かって叫んだ。
「オリビア! そなた自動車の運転ができるな? 手伝え!」
その若い女性、、、
まあ、後に、ドーラの4歳下の妹で、、、
オリビア・オウゴウヌ第三王女って知るんだけど、、、
彼女は慌てて問う。
「え!? わたくし、オートマしか運転できませんが?」
僕は天幕に向かって叫んだ。
「大丈夫、全てオートマです!」
続けて僕は、天幕に向かって叫んだ。
「車の中には、壊れやすいもの、衝撃に弱いものがあります。
運転には気を付けて!」
天幕の中年男性(=レオ・オウゴウヌ近衛師団長)は僕に向かって叫んだ。
「分った!」
そう言うと彼は、天幕から僕が乗ってきた軽トラに向かって、走り出した。
ドーラは天幕から『光のアーチ』から走って戻ると、彼女の右手で、僕の左手を握った。
すると、僕は再び、『光の保護膜』に包まれた。
そして、彼女は『光のアーチ』に向かって、左手で指さし、「行くぞ!」と叫んだ。
僕は無言でうなずき、ドーラと二人で『光のアーチ』に飛び込んでいった。
僕とドーラは手をつないで、『光のトンネル』を逆走し、和泉家に戻った。
和泉家では、父・普一と、弟、幸一が、軽トラやワンボックスカーを動かしていた。
父・普一は笑顔で語った。
「なるべくハンドル操作せず、そのまままっすぐ進めば、
王城の庭に出られるようにしといたから」
そこで、僕とドーラは別の軽トラに飛び乗った。
再び、ドーラに僕の左手を握ってもらいながら、右手でハンドルを持ち、その軽トラで再び『光のトンネル』を走り、王城の庭に出た。
王城の庭には、さっきの若い女性(=オリビア・オウゴウヌ第三王女)と、3人の中年男性と2人の中年女性が待っていた。
まあ、この3人の中年男性と2人の中年女性は、後に、
レオ・オウゴウヌ近衛師団長、
ダグ・ハミルトン騎兵連隊長、
ウオーレン・ウッドハウス魔法兵連隊長、
ヒラリー・エイリー後方支援連隊長、
クラリス・イング参謀総長
と知るのだが、、、
このときは、和泉家から王城の庭まで、大量に土産を運び入れるのに必死で、、、
オウゴウヌ王国の王女様や、軍の上層部に車を移動させていたなんて知らなくって、後で冷や汗が止まらなかったよ。。。
(ごまかし笑い)ははは。。。
話を元に戻そう、僕とドーラはその軽トラから飛び降りた。
彼らの一人、後にダグ・ハミルトン騎兵連隊長ってわかるのだが、、、彼が車に乗ると、その車をどこかに移動させた。
そして、僕とドーラは手をつないで、『光のトンネル』を再び逆走した。
そして、和泉家で、次の軽トラに飛び乗り、再び『光のトンネル』を走る。
王城の庭では、若い女性と、3人の中年男性と、2人の中年女性が待っていた。
要するに、
若い女性 :オリビア・オウゴウヌ第三王女
3人の中年男性:レオ・オウゴウヌ近衛師団長
ダグ・ハミルトン騎兵連隊長
ウオーレン・ウッドハウス魔法兵連隊長
2人の中年女性:ヒラリー・エイリー後方支援連隊長
クラリス・イング参謀総長
が待っていて、彼らの一人が軽トラをどこかに移動させる。。。
を、繰り返した。。。。
その間、祖父・賢治と、叔父(=和泉将司)と叔母(=久島智子)は、祖父の部屋に行くと、祖母マーガレットの遺骨の入った遺骨箱を持ってきた。
そして、7人乗りワンボックスカーの荷台に乗せた。
ああ、ワンボックスカーは最後にオウゴウヌ王国へ持って行った。
遺骨箱を荷台に乗せる際、祖父・賢治は、遺骨箱に向かって語り掛けた。
「マーガレット、先に行って待っててくれ。30年後、私も行くから。」
叔父(=和泉将司)は遺骨箱に向かって、手を合わせ、寂しそうに語り掛けた。
「母さん、さようなら。」
叔母(=久島智子)も遺骨箱に向かって、手を振り、寂しそうに語りかけた。
「母さん、永遠の別れだね。」
第11話で述べたように、和泉家の墓は日本にはない。
亡くなったら、このようにして、30年おきにオウゴウヌ王国へ遺骨を持っていくのだ。
僕とドーラは『光のトンネル』を何度も走って往復し、10台以上の軽トラを和泉家から王城の庭へ運び出した。
そして最後のワンボックスカーを和泉家から運び出す際、母・エリーゼは運転席にいた僕に、笑顔で語り掛けた。
「カカカ! ご苦労! 1時間以内に完了したな!」
そして、助手席の横に回り込むと、窓越しに、ドーラに紙切れを一つ手渡した。
「カカカ! 目録じゃ! アンに渡せ!」
ドーラは戸惑いながら、その紙切れを受け取った。
父・普一も、僕に笑顔で語り掛けた。
「修司! 1年間頑張ってこい!」
そして続けて言った。
「1つだけアドバイスしてやる!
あまり考え過ぎるな!
頭おかしくなるぞ~♪」
僕は思わず突っ込んだ。
「とっくにおかしくなっているよ!
何? このトンネル!?
どうして、このトンネルが知らないところにつながっている訳!?」
父・普一は笑って返した。
「ハハハ! だから、あまり考え過ぎるな!」
父・普一は急に真剣な表情になると、あるサプリメントを一袋手渡した。
「それとこれを持っていけ。
お祖母さんの死因について、私の仮説が正しいなら、
これが必要になるはずだ。
留学期間の半分が経過したぐらいに。。。」
僕はそのサプリメントについて、父・普一に問いかけようとした時、助手席に座っていたドーラが僕に語り掛けた。
「修司殿、『光の保護膜』の持続時間が間もなく切れます。
急いでください。」
僕は仕方なく、ワンボックスカーを運転し、『光のトンネル』を抜け、王城の庭に出た。
ある1人の中年女性は、、、まあ、後にアン女王って知るんだけど、、、最初、王城の庭に設けられた天幕の下で座っていた。
最初、その天幕の下には6人の男女が座っていた。
途中、その6人の男女のうちの2人、すなわち、1人の中年男性(=レオ・オウゴウヌ近衛師団長)と、1人の若い女性(=オリビア・オウゴウヌ第三王女)が、土産を王城内のどこかに運ぶためにいなくなった。
その中年女性(=アン女王)は、残りの4名の中にいた。
その中年女性(=アン女王)は、顔は卵型、瞳は青でパッチリ目、肌は白、身長は170cm強の痩せ型だった。
貴族風の洋服を着て、頭に、象牙で作られ翡翠が埋め込まれた小さな王冠を被っていた。
そして、髪はブロンドで、高く結い上げている。ただし、白髪が混じっていた。
加えて、顔には深いしわが刻まれていた。
その王冠を被った中年女性(=アン女王)は、天幕の下の折り畳み椅子から立ち上がり、『光のアーチ』に向かって歩き出し、『光のアーチ』の脇に立った。
そして、僕とドーラが『光のトンネル』を何度も往復して、その都度、和泉家からの多くの土産が王城の庭に届き、どこかに運び出される様子を、あきれて眺めていた。
その王冠を被った中年女性(=アン女王)に、やはり天幕の下に座っていた年齢が同じくらいの中年女性、、、後にソフィア・デービスさんって知るんだけど、、、彼女が近づいてきた。
そして、あきれたように話しかけた。
「アン姉上、30年前もエリーゼ姉上と普一殿が息を切らせて、
沢山の土産を持ってきたのを思い出しましたわ。。。」
すると、王冠を被った中年女性(=アン女王)は、あきれてこう返した。
「ソフィア、あの時を思い出すの~。」
近づいてきた中年女性(=ソフィア・デービス)は、戸惑うようにこう返した。
「でも、アン姉上、今回は30年前の土産より多いような。。。」
王冠を被った中年女性(=アン女王)はため息をつき、こう返した。
「エリーゼ姉上らしいの~。。。ソフィア、そう思わんか?」
近づいてきた中年女性(=ソフィア・デービス)は、苦笑いを浮かべ、黙ってうなずいた。
その時、僕とドーラは最後のワンボックスカーを運転し、『光のトンネル』を抜け、王城の庭に出た。
助手席に乗っていたドーラは、ワンボックスカーを降りた。
何度も『光のトンネル』を走って往復したので、息を切らしていた。
そしてゼーゼー言いながら、『光の保護膜』に包まれたまま、その王冠を被った中年女性(=アン女王)に近づき、語り掛けた。
「母上。
今回、我が国に来られる男性をお連れしました。
名前は『修司殿』です。」
そして、母・エリーゼから受け取った紙切れを、その王冠を被った中年女性(=アン女王)に手渡した。
「これは目録だそうです。エリーゼ伯母上が母上に渡せと。」
その王冠を被った中年女性(=アン女王)は目録を一目見て、あきれてため息をついた。
だが、王冠を被った中年女性(=アン女王)は、ワンボックスカーから降りた僕に近づき、微笑んだ。
「よく来た。修司殿。
余がオウゴウヌ王国の女王、アンだ。
そなたの母上、エリーゼの妹にあたる。」
次話は2026/3/4 0時に更新予定です。




