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風まかせ

グリーンふるさとラインは御岩神社へ続く本山の道との交差点にだけ信号がある。

全線にほとんど信号のない道なので時間が合わせやすい利点がある。ソロツーで走っていると時計を見るのも何となく面倒なので、いつも通りに走るだけで、だいたいの時間読めるのがよい。


この辺りから視界の両脇が鬱蒼とした木々に変わり、空気の中にも植物の匂いを感じるようになる。まだ緑には早いが枯れた葉からも山の香りがする。


しばらく進むと、一旦、グリーンふるさとラインと県道が重なる。一時停止の交差点を右折した後、県道を走って左へと入る。大きなクランクのような道筋だ。


ここからが、グリーンふるさとラインの後半戦だ。



まだ春の日差しには届かない弱い太陽だが、この時期の日差しはとてもありがたみがある。風の中を走っていると日向が、とてもうれしい。

「寒いなら乗らなきゃいいのに」と人は言うが、それがライダーという生き物なのだからしょうがない。


木々の中を走っていると日向と日陰が繰り返し現れる。キラキラ光る日向が見えると少しホッとする。


木々の隙間から漏れる光には天使が見える気がする。車から見える木漏れ日とバイクで見る木漏れ日は全く違う。少し寒い空気の流れの中に光りが一体化している。


突然、日陰に入ると感覚が狂う時がある。一瞬、ヘルメットの中を氷が通過するような感覚だ。バイクを揺らさないように平然と過ごすのだが、ほんの一瞬だけ視界が極端に狭くなった感じがする。


完全に冬ならば道路脇の雪や路面を横切る水の流れが凍っていないか、路面に多くの気を配らなければならないが、早春のこの時期はその緊張感が少しだけ緩む。


荒れた路面が少しづつ増えて行く。ここからが小山ダムに向かうグリーンふるさとラインの最後の区間に入る。


バイクが段差に当たるとハンドルからガツンと衝撃を受ける。こんなときは縁石くらいの高さから飛び降りた時と同じ体の使い方をする。膝のクッションを生かして体全体を柔らかくフワッと受ける感じだ。オフロードでもない限り、シッティングのまま少しお尻を持ち上げるだけで受止められる。


直接聞かれたことはないが一般の人から見ると「なんでバイクに乗る人はバイクの上で立ち上がるの?」と思うらしい。答えの一つは「段差を吸収するのに体を使うから」なのだが、おそらくこの疑問は普通の道での話が前提でその場合は「お尻が痛いから」なのだが、俺には答える機会が巡ってきていない。


更に木々が多くなり、ますます日陰が増える。時期的に少し暖かくなってはいるが、澄んだ空気は凛として刺さってくる。ヘルメットの中の頬から鼻の下に冷たさを感じる。


小山ダムは下から直接見あげる形で目に飛び込んでくる。

一般的にダムの下は川なので、そこには道がないのが普通だ。ダム湖の周囲の道からダムを見下ろすのが一般的なダムの景色だと思うのだが、小山ダムは正面からダムを見上げるので迫力がすごい。「進撃の巨人」を連想させる。


小山ダムの横を上って駐車場に入る。このダムは少し高いせいか水面が遠い。水面にいる水鳥が遠間に見えるが何の鳥かまでは判別がつかなかった。ダム湖の対面の木々はまだ葉がなく少し寂しい。春も近いがもう少しと言ったところだ。


一人で走っているとグローブやヘルメットを取るのが面倒でつい休憩を取らずに走り続けてしまう。一時間に一回は休憩を取るべきなことはわかっているが、走り続ける苦行は苦行と感じない質なので、ついつい休憩を忘れてしまうのだ。


ここは目的地で折り返し地点なのでトイレ休憩を取る。


折り返して、グリーンふるさとラインの復路に入る。帰りは風まかせで帰ろう。



今日の夕日には、すこし力強さを感じた。そろそろ春が近づいている気配がする。



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