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白日夢の実像

春の前の季節は眠いことが多いのだが、バイクに乗るのだけは飽きない。


360°ターンのコーナーを走るには、どんなラインがいいのか、いつも思う。上手く走れないのだ。

「360°ターンのコーナーなんてないだろう」って、よく言われるのだが筑波スカイラインには実在するのだ。

360°ターンのコーナーを試す為に表筑波スカイラインまで来た。


表筑波スカイラインも、なかなかの峠で昔は昼間から四輪の走り屋が集まっていたもんだが、最近はそうでもないらしい。道はすいている。


下から登って行く。


いつものように速度を殺さずにコーナーに侵入、いい感じで旋回を始める。

しかし、気づいたら左斜め前に白い皮つなぎが居た。一瞬「ぎょっ」としたが、相手はこちらを一瞥さえせず、お互いにそのままコーナーを終える。白い皮つなぎは回転を上げた様子もないのに、すでに車体2台分くらい先にいる。排気音すら聞こえないくらい静かだ。そこだけ距離感が狂っているような、不自然な感覚だった。

「そもそも2020年代の現在に上下皮つなぎなんて格好で峠を走るなんてバカな奴が存在するのか?そんなもの80年代でとっくに終わっているだろ」

でも早い。こんなバカが俺は大好きだ。尊敬の念すら抱く。

少し昔の血が騒いだ。追ってみる。

次のコーナーに向けて回転を上げるが、突っ込みで更に距離が開く。旋回中も差は詰まらない。立ち上がりで大きくアクセルを開ける。フロントが少し浮くが、差は広がる。

「同じ速度域にいない」そんな感覚だった。

2つもコーナーが終わる頃には、もうずっと先に進んでいた。排気ガスの匂いすらしない。

コーナーリングの突っ込み、旋回、立ち上がり、どれ一つも取っても勝てる所がない完敗だ。

最近使うことがなくなった言葉だが「ちぎられた」って言葉にぴったりだ。


よく見る事ができなかったが、あの特徴的なテールのマシンは「隼」だったと思う。


「隼で白い上下の皮つなぎって」

バイクは峠では使い切れないくらいの余裕のパワー、ライダーは本気100%の格好。

俺はヘルメットの中で笑い出してしまった。

あまりにちぐはぐな出立だったので幻だったんじゃないかとすら感じた。


「俺もまだまだだな」と改めて思った。もっと上手くならなくては。伸びしろはまだある。諦める事はない。


そのまま、筑波の峠を流してみる。前を行く車に追いつく。充分に車間距離を取りながら、ふと景色に目が行く。

走る人も変わり行く、周りの木々も変わっていく、でも木々の間から遠くに見える景色は、あの頃と変わらなかった。

「いつまで経っても変わらない、そんなものあるだろうか?」、頭の中でブルーハーツが流れていた。

俺はあの頃から相変わらずバイクに乗って、相変わらず変わっていく景色を眺めている。


夕日にはまだ早かった。少し遠回りをして帰ろう。








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