ズルい...
特異点に世界が近づいていき、それぞれの世界が融合していく。
空間は歪み、時間の流れは意味を持たず、世界はより混沌としていく。
目の前の景色はまるではっきりとせず、今見た景色が次の瞬間には違う景色となる。
しかし、これを起こした少年はあることに気づいた。
「未来、この中世の世界、そして僕の世界。朝日孝一僕たちの始まりの奴の世界は?」
少年は朝日孝一の世界をこの特異点で見つけられなかった。これでは自身の存在を消滅させられないことを焦っていた。世界を特異点になる時の安定性はない、つまりこの特異点の状態を長くは持たない。
そして、動揺している少年の手を誰かが掴んだ。
少年は後ろを振り返る。そこには彼が朝日孝一がいた。
「!バカな、お前は僕に斬られた筈だ!」
「私が直前に彼を別の世界に飛ばしたの。」
「何っ!?」
「あなたに斬られてた時も、私たちが世界を渡る時も同じ青い光を放つきっと騙されるって思った。」
「どうして?どうして僕の邪魔をするの!?世界を元に戻すにはこうするしかないのに...」
彼女は屈んで少年の頭を撫でた。
「な、なんだよ」
「あなたはまだ、子供なのね。それなのに子供のあなたにこんな重い使命を持たせてしまった。これは私の責任、ごめんなさい。」
「何言ってるんだよ、そんな事言ったって世界は」
彼女は少年の胸に刺さりっぱなしだった剣を抜き、刃の部分を持ち、少年に持ち手の部分を向けた。
「これを握って。」
「?」
「そうだから、これは私が頑張る番」
少年は言われた通り持ち手を握った。
そして、青い光が少しずつ強くなっていき、彼女の髪は徐々に白くなっていき、少年の髪は青さをなくしていった。
「何をしたの?」
「あなたの力を全て吸収した。この剣は力を送るための導線になってくれた。そして、あなたは世界を渡る力をなくした。朝日孝一が別れた時のように、あなたも帰る力を無くしたからこの中世の世界の人間となった。もうあなたを縛るものはない。」
「!」
少年は驚きから声を出せていないようだったが、次第に涙を流し始めた。
「あなたは、きっとずっと孤独に生きてきたのね。そして長い時間で考えたのがこれだった。あなたは可哀想な子供。長い間よく頑張ったね。」
「最後にこんなことを言われちゃ、消えたくなくなるじゃないか、全くあんたはいつだって、きっと最後までズルいままなんだろうな。」
彼女は微笑んで、少年を抱きしめた。
少年は少しずつ姿を消していく...
少年が俺の元に戻り、世界は徐々に元の姿を取り戻していく。
特異点の終わりだ。
そして元の世界に戻り俺たちは中世の世界にいる。
目の前には、聖騎士が蹲っている。きっともう力を残していないのだろう。
「分かっていた、きっと神なんかいない。だが、それでも私はまたお前を殺す!」
「彼女はあんたが殺したのか。」
「そうだ私がこの手で殺した。」
「どうして?」
「どうして?そんなの決まってる、お前は私たちが元に戻っただけで世界が元に戻るとでも?」
「?」
「そんな事はない、元に戻っても一度私たちが別れたあの時は消えない。彼女は、私たちを元に戻した後自身の存在を消滅させるつもりだ!」
「!...まさか、本当なの?」
彼女は申し訳なさそうに下を向いている。
「ええ、本当よ...」
俺は少しの間状況を飲み込まずにいた。
「僕は気づいていたよ...」
「お前」
「でも、僕たちに止める権利はない。彼女が過ちを正す選択をしたんだ。それを止める事は出来ない!」
聖騎士は黙ってしまった。しばらくして口を、開いた。
「...分かった。私は彼の元に戻ることにしよう。私も疲れてしまった。だが、私は自分のしたことが間違っているとは思わない。全ては朝日孝一の選択のままに。」
「僕も君の元に戻るよ、マリスさんには...前に最後の言葉を交わしたしね。もう、十分だよ。」
二人は俺の元に戻った。
俺たちの不思議な冒険はこれで終わり...
「さあ、帰りましょ...一応聞くけど。あなたまで私を殺そうとしないでしょうね?」
「いや、流石にしないよ。もう君に苦労をかけるわけにはいかないしね。」
「...彼の気持ちもわからなくはない、私が消滅したら私との記憶は全て消えてしまう。それが嫌って気持ちはあるんでしょうね。」
「...一日だけ待ってくれないか?」
「ええ、分かったわ」
俺は元の世界に戻り、いつも通りの自分の部屋にいる。違うのは彼女がいることだけ、それも今日で終わる。
最後の一日だ...