特異点
「神よ…何故...?」
中世の世界の俺は青い光に包まれて消えた。
神と呼ばれた少年は、こちらを向くと、姿を消した。
「うわっ」
音がした方を見ると、未来の世界の俺が斬られて光に包まれて消えた。
「貴様ぁ!」
マリスさんが銃を構えた。
「君たちは邪魔だ元の世界に帰りなよ」
そいつは指を鳴らした。未来の世界の人々はたちまち消えてしまった。
そいつはまた、消えた。
「危ない!」
彼女が俺を横に押し倒した。その意図はすぐに理解した。彼女が動かさなければそこにいたであろう場所に奴は剣を振っていた。
「ご、ごめん。助かった。」
「ボーっとしないで。」
「ごめん」
「へえ、避けられたか...でもそうか君も。」
「あなたは何者なの?」
「...いいよ少し話をしよう。」
そういうと彼は玉座に座った。
「君達は自分たちが行った場所は3つだけだと思っているのかな?簡単に言えば、未来、現在、そしてここ中世だけだと思っている?違う、君たちはもう一つ行っているんだよ。」
「...まさか!私の...世界?」
「そう、君達は少しだけだけどあの世界、世界を転移できる者の生まれる世界に行った。」
「じゃあ、あなたは」
「そう、僕はあの世界で生まれた、朝日孝一。でも、ずっと忘れられていた…
僕たちのような世界を渡れる人間にとっては過去、現在、未来という時間の流れは意味を持たない。あるのは存在のみ。故に自死は意味を持たず、僕たちは永遠に存在し続ける。だが、幾度も自身を消滅させようとすると、あることに気づく。それは僕たちには自身を消滅させる機能が備わっているという事だ。」
「そんな…もしかして君も知ってたの?」
「い、いや知らないわ」
「そして、消滅させると多かれ少なかれ時空の歪みが発生するようだ。そして、お前たちが未来の世界にいる時も幾らかの歪みが発生した。もう、僕たちの種族は僕たち二人だけだ。だが、僕は消えたくても消えられない。なぜなら、4人に分かれてしまったから。僕の全てを消せなかったら、僕の存在はいくらでも生まれてしまうだろう。」
「だったら、お前たちの世界の歪みを直せばいいじゃないか。」
「無理だ。何故なら僕の世界の歪みは僕の世界が存在していることなのだから。」
「何?」
「俺たちの世界は本来ならあの天変地異で消滅するはずだったのさ。もう、歪みを治すことはできない。つまりこのパラドックスから世界を解放するには僕がお前たちを無理矢理一つの時空に閉じ込め、お前たちが一つの時空にいることにする。そうすれば世界は次第に一つとなる!出来ないと思うだろう?出来るさこの剣ならば、僕が長い時をかけて力を注ぎ込んだのだからな!」
「少し、少し待ってお願い...」
「もう、待てはしない...」
そう言って彼は俺の方に走り剣を振る。
「くっ」
防御が間に合わない、このままじゃ斬られる。
「もう、手段は選んでいられない、のね...」
俺は、青い光に包まれて消えた。
「これで、終わりだ。」
少年は自分の胸に剣を突き刺した。
「これで俺たちは一時的に一つになる。」
世界が一つに近づいていく。
「これが、世界が一つになった混沌で無秩序な本来ならば存在しない現象。
特異点」