聖騎士
「彼は神のお告げを聞く神官であり、あそこの兵士を総括する隊長でもある。つまりは聖騎士みたいなものね。」
「なるほどね、どうやってあの中に入っていくんだ?」
「まず、1階の入り口は表、裏とか色々あるけどどれも兵士が守っていてまともに入れるはずがないわ。」
「じゃあ、どうす...」
「そこで役に立つのが〜これ!」
「...」
「...」
「...あぁ、分かったなんだい?それは」
「これはね、あの未来の世界にあるワイヤー銃です。」
「なるほど」
「これで上から侵入することで、兵士の目に入らず中に潜入できるというわけ、いやー流石未来ね。」
彼女はもしかしたら実演販売の性があるのかもしれない。
神殿の兵士の目につかない外壁で彼女はワイヤー銃を上に放った。ワイヤー銃の先はレンガ造りの神殿に突き刺さり彼女を上へ運んだ。
「さぁ、あなたの番よ。」
彼女は上に着くとそう言って、俺に銃を投げた。
「分かった。」
先程の通り俺は上へ上がった。
「うん、それでいいわ。」
「これからどうする?」
「玉座まで潜入する。」
「彼はそこに?」
「おそらく、ね。中とはいえ大量に兵士を配置している訳ではないと思うけど、もしあったら...ね」
そう言って彼女は電気銃を俺に見せた。
「ああ、分かっているよ。」
俺たちは中に入っていった。。
しばらく中を進んでいると、既視感のある不気味さがあった。
「なあ、これはもしかして。」
「ええ、あの時と同じ様に誘われている。彼も私達との邂逅を望んでいるようね。」
「そうか...、でもこのままじゃ。」
「分かってる、そのために...」
「!」
奥から話し声がする。誰かいる。
「侵入者〜侵入者はそこかっ!」
「なんだこいつは?」
「ふっ、知りたいか?私はな、神官様の側近のバイル様だぁー!」
なんだか変な奴が来たな。
「私の能力は相手の記憶を読み取る能力だ!貴様の記憶を覗いてやる。」
「何っ?!」
「...」
「...」
「...」
「っ、なんか言えよお!」
「いや、なんか、こう、その...」
「なんだよ、言いたいことがあるなら言えよ!」
「なんもないなぁ、と」
「...」
「さ、さてお次はもう1人、お前だぁ!」
そいつは彼女の記憶を読んでいるようだ。彼女は不意に不敵な笑みを浮かべた。
「グハァ!」
あいつが鼻血を出して倒れた。
「甘いわね、数々の世界を渡ってきた私の記憶が普通の人と同じ情報量と思わないことね。」
…恐ろしいなぁ。
「彼は私たちが何か策を持ってないか彼に伝える役割だったようね。」
「1人とはまた、不用心だな。」
「どうかしら、この世界の人間は魔法が使える。さっきのもそれ。恐らく私たちを倒すことも出来たはず。やはり彼は私たちとの接触を望んでる。」
「そうか」
俺たちは何事もなく階段を下り、玉座に着いた。そこにはやはり彼がいた。
「来たか」
彼はそう言うと、手で何か合図をした。
すると兵士たちが現れ、俺たちを囲んだ。
「やはり、作戦通りって訳か。」
「そうだ、やはり神のお告げ通りのこのこと来てくれたな。」
「神?」
「そうだ、今お前たちが置かれている状況も全て神のお告げ通りの事だ。」
なんだ?こいつは俺たちとの接触を望んでいたんじゃ無いのか?
「もう、別の世界に逃げさせはしない。因果のままに、死ね。」
別の世界のことを何故こいつが知ってるんだ。
いや、それよりこの状況を打開しないと。
俺は奴に何発か電気銃を撃った。しかし奴には効かなかった。
「無駄だ、この状況からお前たちが生きる術はない。」
「そうかしら?」
彼女はそう言った。すると、周りの兵士の大半が倒れていく。
「遅れてしまったな。」
「マリスさん!?お前も...」
「当然、僕も来たよ。」
後ろには反乱軍の兵士が揃っている。
「どうして?」
「私が呼んだの。この世界に記憶を読み取る人がいるのは知ってたから、あなたには言わなかったけどね。
…さぁ、形勢逆転ね。」
「…なるほど、そうか、お前たちは…」
奴が強烈なオーラを放つ。周りの空気でさえ、震えている。
「この程度の戦力で私を倒せると思っている訳だ。あまりこの私を舐めるなよ!」
このままいけば戦闘が始まる。
しかし、始まらなかった。奴と俺たちとの間に青い光が、まるで俺たちが世界を渡るときに見えるような光が、現れたからだ。
その光から現れたのは、髪と目が青く白い装束を着ていた。そして右手に青く光る剣を持っていた。
俺は突然、嫌な予感がした。
「神よ、如何されたのですか?」
奴が神?
そいつは聖騎士の方を向いた。
「お前はもういい。」
そう言って青い剣で聖騎士を斬った。