最後の日
俺たちが見てきた世界、でももう少しで忘れてしまう、無かったことになる経験。
それでも、俺はここに記す。このまま消えてほしくはない。
ここまで書いてきたことは嘘みたいな本当の話。
これが最後の日、そしてこの日記も消える。
もしも、未来の世界のこと、そして世界を渡る力を持つ人たちの世界のことがなかったら、俺は中世の俺と同じことを思ったのだろう。
今でも、彼女に消えてほしくないと思っている。
それでも、きっと許されないのだろう。
そして、ついにその時が来た。
「もう、こんな時間か」
「お別れ、だね」
「ああ」
「ちなみに、日記なんて残しても無駄だから」
「分かってるさ、そんな事」
「...私だって、あなたとの記憶ずっと残しておきたかった...」
「...」
「ああ、泣かないようにしていたのに...ねぇ、私消えたくないよ...」
「俺だって、君を消したくない...」
目が滲んでいく...
「さようなら、朝日孝一。あなたのこと最後まで忘れない。絶対に」
俺たちは最後にお互いの存在を確かめるように抱きしめ合った。
これで、終わり...
...あれ、どうして泣いているんだっけ。
なんで、こんなにも胸に穴が空いたみたいになっているんだっけ。
どうして...こんなにも悲しいんだ




