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パラドックス  作者:
1/11

出会い

この作品を見ようとしてくれてありがとうございます。

まだ、未熟なところもあると思いますが、楽しんでもらえると光栄です。それでは、ご覧ください。

この世界には絶対の理がある。

それは決して破られてはならない。

もし、それが破られることがあれば世界はどうなるのだろうか…

―――――――――――――――――――――――

俺は朝日孝一、去年大学を卒業し今まさに就活に努めている。仕事が見つかるまでバイトをしながらアパートの一室で暮らしている、が今日は何もすることがない、どうしようか?

別に何か思い浮かんだわけでもなく、ただ同じ場所にいてはいけないと思って外に出た。素晴らしく何の曇りもない空、その光景は自分の頭が空っぽなのを表してるように見えた。

交差点の手前、歩行者信号の近くに何か不思議な女性を見た、青い長髪に白いワンピースを着た人。その青く透き通った髪が綺麗で目がしばらく離せなかった。

そうして落ち着いた俺の心は、また彼女によって動かされることになる。彼女は赤信号の中を進んだのだ。

「おい、待て、戻れ!」

俺の警告に彼女は振り返る、背後から見た時は気づかなかったが彼女の目も青く透き通っていた。その目は全てを飲み込んでしまいそうで、俺の思考を一瞬停止させた、がそれも束の間、当然車が迫る、それもトラックだった。そんなものに衝突したら間違いなく命はない。気づけば俺は彼女の元に駆け、庇うように覆った。

「やめておけばいいのに…」刹那そんなことが浮かんだ、「こんなことをしたって…」

その先を考える暇もなくトラックはこちらへ走ってくる。半ば諦め目を閉じた。


そして次に目を開けた時、そこはさっきの交差点ではなかった。まるで中世ヨーロッパに来たような風景が目に入った。思考が追いついてきて今自分は一本の木が立っている丘から王国のような街と城を眺めているのだと理解した。

「これが、異世界転生なのか?」

思わずそう声が出た。

近くにあの人はいない…彼女は助かったのだろうか。

いや、まさかな。あの状況で俺が庇ったからって助かるようなものじゃない。もしかしたら彼女もここにきているかも。

ひとまずここにいてはしょうがない。助けてもらうためにあの街へ行こう。そうして俺は歩き出した。

歩いてる最中、不意に自分が死んだ事実やその時の情景を思い浮かべてしまった。胸に溜まるような重い不快感。少しだけ体の体温が下がったような気がした。

一体どうして異世界転生とは前世の記憶を引き継ぐのだろうか?

疑問というか憤りを感じた。

街に着くと何やら騒がしい様子だったので何かと聞き耳を立てると

「誰かが処刑されるらしい」

「誰?囚人?」

「さあ、だが変わった見た目の女らしい。」

その言葉を聞いてまさかと思った。

もしかしたらあの人かもしれない。だがすぐに鎧を着た兵士と思われる人たちが俺の腕を掴んだ。ここで俺がここの人とは違う格好をしているのだと気づいた。

「怪しい奴め、連行する!」

「ちょっと待ってくれ俺は、」

「話は後で聞く。まずは来い!」

そうして半ば強引に連れて行かれた。

俺が連れてこられたのは机と椅子が二つ置かれた個室だった。兵士が部屋を去ってから扉を開けてみても案の定鍵が閉まっている。ポッケのスマホを手に取るもこれまた圏外だ。

話を聞いてもらってもこの事を信じてはもらえないだろう。

そういえば例の彼女は処刑されるとか言ってたな。

俺もそうなるのか?はあ…俺は何回死ねばいいんだ。

いや、待てよ。そういえば兵士が部屋を去った後に何かを置くような音がした。

…もしかしたら脱出できるかもしれない。


兵士は再び部屋に入った。しかしそこには誰もいない。兵士は部屋の中を探すために扉から離れた。

その隙に孝一は扉の死角に隠れていた所から部屋の出口へ向かい外側から扉の横に置いてあった鍵で扉を閉め、兵士を閉じ込めた。


そうして俺は部屋を脱出した。やはり扉の横に鍵が置いてあった。また、この鍵はこの部屋だけでなく他にもたくさん鍵がついていた。もしかしたら彼女を助けられるかもしれない。

よく考えたら何でそんな事をと思ってしまいそうだが、その時の俺は、「してやった」という優越感でどうやら正常な判断ができていなさそうである。

俺が辿ってきた方向とは逆に少し進むと一つの牢があった。そこに彼女はいた。俺は牢の前に立っていくつか鍵を試して何度目かでドアが開いた。

「あんた、あの時信号無視していた人?」

「そう」

「まあいい、一緒に逃げよう」

そうして俺は手を差し出した。

彼女はその手を取った。

そうして彼女を連れながら、俺が連れてこられた道を遡って街に出た。

しかし、何かがおかしい、妙に閑散としている。

変な気持ち悪さがありながら、街を出るため逃げるように走った。

だが、これが罠だったと気づくのはあまり遅くはなかった。

兵士が俺たちの行先に先回りしていて気づけば囲まれていた。

「クソッ」

助かったと思ったら、また死の恐怖に心臓を掴まれる。最悪だ。

そう思っていると兵士が動き、道を譲るように動いた。

当然それは俺たちのためじゃない。奥から一人こっちに歩いてきた。そいつは白いマントを羽織っており、スーツのようなものを着ていて、他の兵士よりも位が高い事は一目瞭然だった。

そいつはまた、仮面をしていて顔がよく見えない。

「隊長、指示通り逃亡者を捕らえました。」

「ああ」

「いかがしますか。」

「少し待て、こいつらと話がしたい。」

「?、わかりました。」

そいつは俺の方に向かった。

「さあ、お前達逃亡者は死あるのみだ。最後に何か言いたい事は?」

「何で、こんな回りくどい事をするんだ!殺すなら二人とも処刑してしまえばよかっただろう?」

「フッ、流石の私にも罪のないものを処刑するほどの権限はないさ。」

「どういう事だ?」

「つまり、この女が処刑される、というのは私が流した嘘なのだよ。お前達を殺すためのな。」

「何?いや、だとしても俺がこの行動をとらない可能性だって充分あるだろう?」

「成程、もっともだ。しかし全ては因果だ、お前達はこうなる運命だ。」

「どういう…」

「問答は以上だ、死ね!」

そうして彼は俺の首元に向けて剣を振り下ろした。

俺は死を覚悟し反射的に目を瞑った。


しかし、次の瞬間淡く青い光が二人を包んだかと思えば、振り下ろした剣は虚空を斬り地面に突き刺さった。この出来事に兵士達はひどく動揺していたが、彼は冷静だった。

「さあ、撤退だ。お前達」

「いや、しかし」

「気にするな、彼らとはきっとまた出会う。なぜなら因果が繋がっているからな。」

「?、了解しました。」


「っは!」

俺は首に手を当てる。首は繋がってる。

生きているのか?また、死んで転生した?

だが、まもなく俺は自分のアパートの一室のベッドの中にいることに気づいた。

「どういうことだ?」

「そういうこと」

「っ!」

また、例の彼女がいる。

「どうして!?」

「まあまあ、少しは落ち着いて。お茶でもいかが?」

「じゃあもらお、じゃない!てか何で俺のお茶の場所を知ってるんだ!」

「私に知らないことはないわよ。例えば、あなたの名前が朝日孝一で、就活生で今はバイトをしていること。」

「何で…」

「そしてあなたはまだ一度も死んでいないこと。」

「!?」

「驚くでしょうね。だって普通に考えてトラックに轢かれ、また、首元を剣で切られて生きてるなんて思わないでしょうからね。」

俺はしばらく言葉を失っていた。

「というわけで落ち着くために、お茶でもいかが?」

「…あ、ああ。頼むよ。うん、」


しばらくしてお茶がきた。その時にはある程度落ち着いていた。だからこの質問をした。

「ところで、さっきの話はどういう事?」

「そうね、あなたは並行世界、つまりパラレルワールドって知ってるよね。」

「ああ、自分たちの世界以外にも色々世界があるみたいな。」

「そう、私はそれを自由に通ることができるの。」

「へぇ…えっ!?」

「まあ、驚くでしょうね。でも、これまでのことそれなしであなたに説明できる?」

「いや、転生したかも…」

「あなた、本気で言ってる?」

「いや、違います。」

「そう、分かってもらえて嬉しいわ。でも、あなたにはまだ、協力してもらわないといけない。私と一緒に来たちょうだい。」

「え?」

「…ごめんなさい、本当に申し訳ないと思ってる。でも、あなたは来ないといけない。」

少し沈黙したが。俺も何故か行かねばならない気がした。彼女を助けないと、そうどこか思ったのだろうか。もしかしたらこれがあいつの言っていた、「因果」なのかもしれない。

「…分かった。」

「ありがとう、覚悟は決まったみたいね。」

「ああ!」

「では、行きましょう。」

彼女は俺に手を差し出した。

俺はその手をとった。


こうして俺たちの不思議な旅は始まった。










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