1話 チュートリアル
ここは、とあるゲームの大会の会場。今、大会の決勝が始まろうとしていた。
「これより、対戦型格闘ゲーム『ライジングバトル』の決勝大会を開始します」
ウォーーーーーーーーー
8000人が入っている大型のスタジアムは主催者の決勝開始の合図による観客の歓声で包まれていた。
ちなみにこの対戦型格闘ゲーム『ライジングバトル』略して『ライバト』は、総プレイヤーが1億人以上の超人気ゲームで30体のキャラクターから1体を選び、1体1で戦う格闘ゲームだ。そしてこの大会は、約1億の頂点を決める世界大会である。
「では、選手の入場です」
まずステージに上がって来たのは前回の大会の覇者でスペイン人のアレハンドロだ。2m近い巨体で、両腕にはメロンを乗せているのではと思うほどの筋肉がある。
「前大会の覇者ーーーーー。アレハンドローーーーーーーー」
ワァーーーーーーーーーーー
アレハンドロへの歓声が湧き上がる中もう一人の少年がステージに上がる。
この男は藍沢 翔駒。15歳で母方がスペイン人のためダークネット色の髪に青い目をしている。また、この少年の別名は、
「最強のゲーマーーーーーーーー。藍沢 翔駒ーーーーーーーーー」
そう、この少年、翔駒の別名は『最強のゲーマー』である。別名自体は小学生レベルのネーミングセンスだが実力は本物でこの大会以外でも音ゲーやFPSゲーム、レースゲームなどあらゆるジャンルのゲームの大会で優勝をしており、翔駒が優勝出来るのは翔駒と戦わないでいいからと言わせるほどである。
会場はヒリヒリとした緊張感に包まれた。
「それでは両選手握手をお願いします」
二人の選手は握手をした。
『俺を簡単に倒せると思ってるその自信絶望に変えてやるよ、クソガキ』
アレハンドロはスペイン語で翔駒を挑発した。
『言われなくても速攻潰してやんよ、筋肉だるま』
という挑発のやり合いをし、二人はいすに座り対戦を開始した。
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「優勝は藍沢 翔駒ーーーーーーーーーーー」
表彰台の1番上ではカメラのフラッシュとスポットライトが眩しいのか半目の翔駒が立っていた。
決勝ではアレハンドロの抵抗も虚しく宣言通り速攻で倒していた。そんなアレハンドロはというと2位の位置で目に涙を滲ませていた。
そして、表彰式は終わり、会見へと移った。
「今回の大会でも優勝ということですが次の目標はなんでしょうか」
カシャカシャとカメラの音が鳴り響く
「俺はプロゲーマーを引退します」
「へ?」
1人の記者が馬鹿みたいな声を出すと他の記者も声を出した。
「この波に乗っている時期に辞めるとはどういうことですか」
「考え直してはくれませんか」
「そうです今からでも考え直してはもらえないでしょうか」
記者たちはカメラで撮っているのも忘れて翔駒に考え直すように説得している。
「私は意見を変えるつもりはないので。それでは失礼します」
翔駒は記者の意見も無視して控え室へと戻った。
この会見はゲーム界だけではなくネットニュースにも取り上げられ、最強のゲーマーがトレンド1位までにもなった。
『お前すごいことになってるが大丈夫か?』
「大丈夫じゃねぇよ。俺は静かに辞めたかったのにこんな大事になりやがって」
『まぁ人の噂も75日、すぐに忘れるだろ』
「そうかもなぁ」
控え室では翔駒と幼稚園の頃からの幼馴染の大久間 茂と通話をしていた。
「そういやそろそろ受験だが大丈夫なのか?」
『いやそれが少しやばくてな……。いいよな色んなeスポーツの高校から推薦も来てるもんなぁ。』
「あ、その推薦全部蹴ったぞ」
『は?』
その一言で部屋はシーンとなったが茂が口を開いた。
『全部蹴ったって……………どうしてそんなことしたんだ?』
「いやもうプロゲーマーはやめようと思って…………」
『マジか…………』
そして、話はどこの高校に行くのかという話になり、プロゲーマーの話はではなくなった。
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そして、時は流れて4月になった。
俺はここ『鎌倉水蓮高校』の生徒になった。これから入学式である。
「なぁこの高校こんなデカかったっけ?」
この高校はとにかくデカい。学園の中には食堂や校庭などがあるのはもちろんだが校庭が3ヶ所、体育館が4ヶ所、カフェやテニスコートまである。また、この高校は偏差値も75と高く校則も緩いため私服登校やピアスなども認められている。
「まぁ、ここ偏差値的にも入るのムズイしいいんじゃないか」
「そういうことにしておくか」
と、翔駒と茂は話ながら石作りの門をくぐっていた。
バタン
1人の女の子がマンガのようなこけ方で地面に頭から倒れていた。
「大丈夫か?」
「あ、はい大丈夫、です」
そう言って起き上がった少女の頭から血が流れていた。
「いや大丈夫じゃないでしょ。はいっ」
「あ、ありがとうございます」
翔駒は少女に絆創膏を渡した。
「しっかり水で流してから貼りな」
「は、はい」
そう言って少女は深く頭を下げて水道へと走っていった。
「お前いつのまにそんなモテ男に………」
「いや普通に接しただけだろ」
「いいや違うね。あの人も好意を少しでも持ったと思うぜ」
「まぁそんなことは置いといて体育館行くぞ」
「あ!逃げたな。赤くなりやがって」
「うっせぇ」
そして、俺と茂は体育館に向かった。
(あの人可愛いかったな)
長い茶色い髪に小動物のような見た目で守りたいと思ってしまう雰囲気だったりと俺のどタイプであった。
(好きだ……)
そして、俺の片思いによる乙女ゲームが始まるのであった。