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1-4「父とPC」

 父との思い出…とは少し違うが、幼い頃の遊びにもう1つ思い当たるものがあった。

 PCだ。

 父がSEであったためか、我が家にはいつもPCがあった。

 遊んでいたのはマインスイーパーとかソリティアとか…そういった類のもの。

 他にも色々ゲームサイトを見つけては遊ばせてくれた。

 今思えば、よくネットサイトを触らせてくれたものだ。

 セキュリティとか…大丈夫だったんだろうか。

 まあ、今となっては知る由もない。

 父ももう覚えていないだろう。


 PC関連で言えば、ゲーム用と勉強用のPCディスクを買ってくれていた。

 勉強用のディスクも、半分はゲームのようなものだった。

 僕はとても恵まれている。


 これはいつの記憶だか分からないのだが。

 夏休みのある日、僕たち家族は夏祭りに参加した。

 伯父と叔母も側にいた。

 夜にも拘らずそこは明るくて、集まった者達は皆笑顔でワイワイと盛り上がっていた。


 しばらく辺りをぶらついていると、突然父の携帯が響き出す。


「はい、もしもし」


 父が何だか、いつもは聞かない怖い声で電話に出た。

 今思えばこの時の声色は真剣だっただけで、実は普段家族と話すときの声色の方が優しかったために比較して怖いかのように聞こえてしまった…というオチだったのかもしれない。


「はい。…はい。…ああ、すみません。」


 突然父が笑う。


 そうしてしばらくして通話を切り上げると、にやにやしたまま僕たちに事の顛末を伝えてきた。

 どうやら、相手方に祭りの音が聞こえていて「〇〇さん、楽しそうですね…」と言われたとのことだ。

 母と叔母が声を上げて笑っていたが、僕は疑問に思っていた。

 父は「すみません」と言っていたが、何故謝る必要があるのだろう。

 父は夏季休暇を取っており、それを分かりつつも連絡してきたのは向こうではないか。


 そう思っていたが、社会人になった自身と置き換えてみると、休暇中の仕事仲間に通話をかけた挙句、「楽しそうですね」等と雑談が挟めるなんて、なかなか職場関係は良好なのではないだろうか。

 僕であれば自分のためにも相手のためにも、出来るだけスピーディーに、無駄話は排除して話を切り上げる。


 他には、家族でアイススケートをしに行った時のこと。

 僕は上手く滑ることが出来なかったので、父が後ろについていてくれた。

 時には支えてくれたり、時には背を押して意地悪してきたり。

 そして、父は怪我をした。

 僕が足を上げた際に、スケート靴のブレード()で父のすねを蹴り上げてしまっていたそうだ。

 いつもはそんな素振りを見せないはずなのに、この時は本当に痛そうで、顔を歪めてうずくまり、血が出ていて。

 僕は始め、何故そんな事態になっているのか理解が出来なかった。

 僕からは、父が突然叫び蹲ったようにしか見えなかったのだ。

「どうしたの?どうしたの?」とオロオロすることしか出来ない僕を見て、母が「あなたがパパを蹴ったのよ」と言う。


「蹴ってないよ!」

「蹴ったわ。私見てたもの。靴の刃の部分で足の肉がえぐれたのよ。」


 なんてグロテスクな。

 僕が父を。父の肉を抉ったなんて。

 全くそんなつもりはなかった。

 僕はただスケートをしていただけだ。

 それなのに。

 それ以降、滑るのが余計に怖くなった。

 アイススケートと言うとあの日のことが思い出されて、大変恐ろしい。

 一度、友人にわれて付き合ったことがあるが、出来るだけ友人、というか人とは離れているように細心の注意を払った。

 スケート自体は面白そうだと思うし、またやってみたい気もするが、一方で出来る限り遠慮したいという思いがくすぶる。

 やるなら"刃"が無い、ローラースケートだろうか。

 あれはあれで、アスファルトの上で転ぶと痛いんだよなぁ。


 家族繋がりの話をするなら、スキーは外せない。

 僕の家族は皆スキーが上手い。

 社会人になるまではほぼ毎年、家族でスキー旅行に行っていた。

 そして家族の中で一番スキーが上手いのが母。

 検定?資格?何かを持っているらしい。

 学生時代にも幾度となく友人とスキー旅行をして、社会人になってからも職場の友人と行っていたとか。

 そんな母であるから、父も付き合ってスキー旅行をすることが多かったらしい。

 しかし、スキーの場面を思い返すと、時折父が盛大に転んでいた…ということばかり頭に浮かぶのは何故か。

 おそらく、母が転んでいるところなど見たことが無いからだろう。


 家族で遊びに行った思い出はいくつか思い出せるのだが、"父との思い出"というとなかなか出て来ない。

 母や祖父母、従姉妹、叔父叔母たちとの思い出の方が浮かぶというのに。

 これでは少し残念ではないか、と常々思っていたからこそ、"二人で"遊びに行く機会を作りたいと思っていたのだが、なかなか乗り気になってもらえなかった。


 仕方がない。

 父との思い出についてはこの辺りにしておくか。

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