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上空から街並みを観ようと窓から下に視線を移したが、視界には何も映らなかった。というより、あっと言う間に到着したようだ。
車は下降している様子も全くないまま、白い建物の前に静かに停まっていた。
「さあ、行きましょう」
妖精が門の前に立つと、扉が勝手に開いていった。
「へえ、自動ドアか。人間界と同じなんだな」
俺は感動するというよりも半ば小馬鹿にするような気持ちになってきた。
もしも、此処に住めと言われても、今と全く同じ生活が出来そうで何ら違和感が無かったからだ。
門の中は意外と広そうではなかった。ただ、建物だけがミスマッチ感バリバリで、どうして白くて丸いものがてっぺんに乗っているのか、それが可笑しかった。どこからどう見ても、まるでアラビアンナイトの建造物そのものだったからだ。
中に入るためには頭にターバンを巻かないといけないとか、そんなルールがあるのかも知れない。
そんな事を考えながら、俺は妖精の後について中に入っていった。
「あのさ、黙って入ってもいいの?門のところでもそうだったけど、誰にも何も断って入ってないよね?」
「大丈夫ですよ。妖精主様は此処のことは全部見えてられますから」
「じゃあ、ここでこうやって話してる内容とかも聞こえてるとか?」
俺は笑いながら言ったが、妖精が「そうですよ」と答えたので、今後ここでは小馬鹿にするような事は言いまいと強く決心した。